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基礎科学」置き去りに 小柴さん、国立大法人化に懸念 
 .『岐阜新聞』2003年6月12日付 
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小柴氏の記事「基礎科学は『冷や飯』」の詳報です。末尾の一問一答をご覧下さい。


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『岐阜新聞』2003年6月12日付

 「基礎科学」置き去りに 小柴さん、国立大法人化に懸念
 一律の評価期間を批判

 国会で審議中の国立大法人化について、ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊・
東大名誉教授(76)が十一日までに共同通信のインタビューに応じ「法人化
されて独立採算となると、四、五年以内に産業への見返りがないような研究は
冷や飯を食わざるを得ない。理学部や文学部の仕事はどうなるのか」と強い懸
念を示した。

 小柴氏は「基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある。五、
六年の期間に利益を出すかどうかですべて処理されたら困る。一律に判定を下
すことは考えた方がいい。画一性は時に害を及ぼす」と強調。

 法人化した各大学が、文部科学相が示す期間六年の「中期目標」に沿って研
究・教育面などの「中期計画」を立てる仕組みに疑問を示した。

 以前から基礎科学の重要性を訴えてきた小柴氏は「二、三年後にもうけがぶ
ら下がっている研究ではないけれども、中には大きな見返りを出すものもある」
と指摘。

 「十九世紀に発見された電子が二十世紀後半にエレクトロニクスという大産
業に発展した。こういう例はいくらでもある。科学は対象の魅力や面白さで研
究するもの。役に立つ、立たないというスケールだけで処理されたら困る」と
話した。

 「見返りがないかもしれない基礎科学は国レベルで支えるしかない。景気に
関係なく、継続的にサポートすべきだ。人類共通の知的財産を増やすことにつ
ながる」とも。

 小柴氏は基礎科学分野を応援する財団設立に取り組んでおり「ぜひ応援して
ほしい」と訴えた。


国レベルの支援継続を 小柴さん一問一答

 小柴昌俊氏との一問一答は次の通り。

 ―国立大法人化はどんな影響があるか。

 「独立した法人になると、当然のこととして大学は採算を考えるようになる。
短期間で産業に見返りを出せないような研究は冷や飯を食わざるを得ないだろ
う。理学部や文学部の仕事はどうなるのか」

 ―基礎科学はどうか。

 「短期間で見返りが出るような研究なら企業が応援することもあるだろうが、
基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある。役に立つ、立た
ないだけですべて処理されたら困る」

 ―各大学を評価する期間は六年だが。

 「すべての大学の研究が五、六年の期間に利益のある結果を出すかどうかで
処理されたら困る。処理してはいけない分野もあることを認識してもらわない
と。一律に同じ時間で判定するという方法は考え直した方がいい。画一性はと
きに害を及ぼすことがある」

 ―文科相が大学の中期目標を決めるが。

 「科学というのは研究対象の面白さで取り組むもの。人類全体の科学知識に
貢献できるかで価値が判断される。役に立つか立たないかだけで判断されては
困る。アカデミックフリーダム(学問の自由)という言葉があるが、学者たちの
判断力やモラルを信頼しなければならない分野がある」

 ―以前から基礎科学の重要性を訴えてきたが。

 「二、三年先にもうけがぶら下っているような研究ではないが、時には大き
な見返りがあるものもある。十九世紀に発見された電子が二十世紀にエレクト
ロニクスという大変な大産業に発展した。こういう例はいくらでもある。基礎
科学は人類共通の知的財産を増やすことにもつながる。景気に関係なく継続的
に支えることが必要で、頼むところは国家レベルのサポートしかない」

 ―基礎科学を応援する財団の設立に取り組んでいるが。

 「国民的レベルで応援してもらいたい」