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独行法反対首都圏ネットワーク
 
       参議院文教科学委員会は徹底した審議の継続を
  ―参考人招致、連合審査、公聴会開催、国政調査権活用が必要である―


                                              2003年6月30日 
                                                     独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

 6月26日午前10時、16日ぶりに再開された参議院文教科学委員会は、遠山文科大臣の「お詫び」に始まり、さらに4回におよぶ「お詫び」と訂正が繰り返されるという異常な状況で終わった。しかし、政府・文科省は、野党委員から鋭く追及された国会無視の行政権濫用を、あくまで当然の準備作業と強弁している。そして、法案の問題点についての審議が始まったばかりにもかかわらず、3日にも採決の強行を企図している。

 参議院文教科学委員会は、「お詫び」と訂正で事を進めるのではなく、「本来の議会の任務である行政への抑止の役割をより重く担っている」(「参議院選挙制度改革に関する協議会報告書」2000年2月25日: 末尾資料参照)参議院の責務を自覚し、法案の本質的問題点の審議を継続し、「百年の計」にふさわしい議論をいっそう深化させる必要がある。国会が自らの責務を果たすために、
以下の提起に真摯に応えることを求める。

1.国大協旧執行部、学長等の参考人招致

 6月26日の委員会冒頭における遠山文科大臣の「お詫び」は、要するに「中期目標・中期計画に関する12月資料は、大学側(国立大学協会)の求めに応じて出したものである。しかも、文科省としては、12月資料に伴う作業は単なる「準備作業」と考えていたのに、大学が(あるいは学長以外が)大きな誤解をして、中期目標・中期計画作成作業を行ったのである」ということである。これは、各大学、各部局で実際に中期目標・中期計画の作成作業に携わって来た者からすると、黒を白と言いくるめるに等しい。今、国立大学の職場では、遠山大臣答弁に対して大きな怒りが渦巻いている。このまま「お詫び」を国会が受け入れるならば、事実に反する遠山大臣答弁を前提に、法案への態度を決定するという深刻な汚点を国会の歴史に残すことになろう。

 民主党理事が、6月10日に文教科学委員会の審議がストップした際に提起した関係者の参考人招致を急ぎ実現させ、遠山大臣答弁が事実に基づくものなのかどうかを解明する必要がある。関係者とは、国大協の長尾前会長下の旧執行部ならびに法人化特別委員会メンバー、さらに国大協理事あるいは特別委員となっていない国立大学長などである。

2.総務・厚生労働・財務各委員会との連合審査

 総務省が、審議会の評価をめぐって櫻井議員に対して「お詫び」したことに端的に現れているように、同省の審議会の実態については依然として不明確であり、文科、総務両省担当者間の齟齬も顕著となっている。また、公立大学の地方独立行政法人化問題もある。この問題を議論するためには、総務委員会との連合審査が必要である。

 労働安全衛生法に関して言えば、文科省が5月28日に国会に提出した報告書がきわめて不十分であることは、林議員の二度にわたる追及で既に明らかとなっている。さらに同報告書には、「適用法令変更手続きの円滑化」のため「届出等の手続きの簡素化」を厚生労働省と調整するとある。このように、国民の目の届かない場所で調整すれば、馴れ合いになる危険も発生しよう。これこそ厚生労働委員会との連合審査が必要な事項である。また、法人化後の定員外職員や臨時職員等の雇用に関わる問題についても連合審査が必要である。

 大学財政についていえば、運営費交付金を算出する仕組みが依然として明らかにされていない。法人化によって大学財政が破綻するのではないかとの懸念が拡がっているほど、事態は深刻である。また、法案は財務大臣との協議を義務づけている。財務委員会との連合審査は不可欠といえよう。

3.地方・中央公聴会

 国立大学法人法による法人化は、地方大学の切り捨てになるのではないか、という不安が地方で拡がっている。また、法人化が数百名規模の高級官僚の天下りをもたらす(『東京新聞』6月26日)ことへの批判、授業料の値上げを予想している学長が25%(『朝日新聞』6月29日)、あるいは半数(共同通信6月19日) という事実への不安が湧き起こっている。法案そのものに対する批判も、国民各層から繰り返し提出されている。参議院としては、法案の重大性に鑑み、地方、中央で公聴会を開催し、広く国民の意見を聴く場を用意すべきである。

4.国政調査権

 国会の重要な権限の一つに国政調査権がある。「百年に一度の大改革」というのなら、文教科学委員会として、国立大学に直接赴き、大学の現状について、とりわけ審議が集中している中期目標・中期計画の準備強要問題、労働安全衛生問題、さらには大学財政の問題等について、自ら調査すべきではないか。


 最後に指摘しておきたいことがある。26日の委員会で文科省は、「法案の審議や法の成立以前から法人化の準備をするのは行政の責任として当然であり、特に大幅な設置形態の変更で不安をもつ大学の要望に応えて準備を行っている」との論理で、法成立以前の予算執行や諸準備の強行を合理化した。これについては、これまでも我々が行政権の濫用であり、国会の立法権を侵害すると繰り返し主張してきたところである。

 国会審議の前提として、櫻井議員が26日の質疑後に同氏のウェブページに掲げた以下の内容を、1日の審議冒頭ではっきりと確認し、文部科学省設置法第4条第15項(末尾資料2)を根拠とした遠山文科大臣の答弁、すなわち、「国立大学法人化に向けて行政権限で各大学に準備させることは憲法に抵触していない」という発言を撤回させる必要がある。

 行政の本来の役割は、根拠法に基づく権限の範囲内で実務を執行することである。現在、国立大学法人法案の審議をしている最中であり、本来、中期目標・中期計画を作成させるという権限は文部科学省にはないのである。

 一方、内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること」等と憲法73条に規定されている。この事から考えれば、遠山大臣の行っている行為は憲法に抵触する可能性がある。

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【資料1】

参議院選挙制度改革に関する協議会報告書(2000年2月25日)

一部抜粋  http://www.eda-jp.com/dpj/000225-s.html

 1.この協議会の経緯

 参議院選挙制度改革に関する協議会(以下「協議会」という。)は、参議院選挙制度の改革について協議を行うため、平成11年6月16日、各会派代表者懇談会の下に設置された。

 2. 参議院の役割と在り方

 参議院は、議会制民主主義の原理である国民主権、権力分立及び議院内閣制の整合性ある実現と、多元的な国民の意思の反映のために創設された、もう一つの直接公選で選ばれた全国民の代表による議院という、民主主義における新しいタイプの議会制度である。旧来の抑制・均衡・補完という二院制の説明概念では、こうした民主的な役割は言いつくせないものがある。

 参議院の主な役割は、第一に、議院内閣制の弱点を補完して衆議院及び内閣に対するチェックアンドバランスを発揮すること、第二に、異なる制度、時期による選挙によって、国民の多元的な意思を、よりよく国会に反映することにある。

 そもそも両議院の国民代表としての存在意義には何ら違いはなく、いわゆる憲法上の衆議院の優越事項とは、議院内閣制に係る役割の差に由来するものにすぎず、役割の優劣を意味しない。むしろ参議院は、本来の議会の任務である行政への抑止の役割をより重く担っているとみるべきである。

 次に、あたかも国際的に一院制が時代の趨勢であるかのような誤解が多いが、二院制の採用は現代的な必要性に基づくものであり、現実に近年20近い国々が新たに二院制を導入したところである。民主主義の成熟した人口の多い諸国はもちろん、一元的な政治体制から脱した国々において、二院制は強く支持されている。特に、平成9年の上院議長会議(上院サミット)において明らかになっ
たように、参議院のような直接公選型の上院を設ける国々の増加も顕著であるが、これらは国民主権の最終的保障を図るため創設され、下院との関係で積極的で強い権能を有する点で共通している。我が国の二院制は、民主主義を強化するこうした新しい二院制の先駆的制度であるとみることができる。

【資料2】文部科学省設置法第4条第15項

 大学及び高等専門学校における教育の振興に関する企画及び立案並びに援助及び助言に関すること。