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独行法反対首都圏ネットワーク

田中鹿児島大学長:国大協臨時総会報告 [he-forum 3997] (転載)田中鹿児島大学長:国大協臨時総会報告
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http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/
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平成14年4月23日
  教職員
  学 生 各位

                           学長 田中 弘允

             国大協臨時総会の報告


1 標記の会合が、平成14年4月19日(10:00〜12:30)に開催されました。
 なお、各国立大学事務局長並びに報道機関も陪席しました。(これは今回初
 めて理事会で決定されたことです)。 

2 会議の目的は、「文部科学省「調査検討会議」最終報告を受けての国大協
 としての基本姿勢の表明と今後の取り組みについて」でありました。

3 協議では、長尾会長が、まず国立大学協会会長談話(案)(資料2)の承
 認を求めました。その骨子は「最終報告の法人像は、全体として見るとき、
 21世紀の国際的な競争環境下における国立大学の進むべき方向としておお
 むね同意できる。国立大学協会は、この最終報告の制度設計に沿って、法人
 化の準備に入ることとしたい」というものです。このような結論に達した理
 由として、会長は次の3点、即ち(1)国大協が調査検討会議などの審議に参
 加してきたこと、(2)課題は残されているが、全体の方向としておおむね同
 意できること、また自主性・自律性についても不可欠な要素を盛り込んでい
 ること、(3)21世紀の時代に向けたものであること、をあげました。そし
 て、不明確な点もあるが、それは大学側にとっての自由裁量と受け止めて欲
 しいこと、いたずらに教条的に反対したり為にする議論は避けて欲しいこと
 などを早口で述べました。この会長の話は配付資料2に基づいた説明ではな
 くはなはだわかりにくく、かつ要領を得ないものでありましたが、上記は私
 なりに整理したものであります。

  これを聞いた印象としては、会長は質問等はできるだけ簡単にすませ、談
 話(案)を強行してでも通したいということでした。これは後の討論で明ら
 かになります。

4 次いで審議に入りました。

  執行部以外の会員から数多くの質問、意見表明がありましたが、ほとんど
 全てのものは、最終報告に対する批判や懸念を表明したものでした。以下に
 私のメモに従い重要と思われる点を記します。

 1)  鹿児島大:・会長の「教条的に反対することなしに・・・」といった発
   言は適切でない。この問題は極めて重要な問題であり、本質的論議が必要
  だ。・会長のコメントでは、学問の自主自律についても不可欠の要素を盛
  り込んでいるのでこの最終報告を受け入れるといったことを述べたが、こ
  れには賛成できない。この報告に見られる独法的手法は、大学本来の使命
  である教育研究の自主性自律性を侵害し、大学の真の活性化に結びつくも
  のではない。と述べ引き続き、予め配布してあった意見表明文を読み上げ
  た。(配布資料、資料番号なし)

  会長:1つの意見として聞いておく。学問の自主自律の確保は、各大学の
  自己努力によって文部科学省と対決してやっていけるものである。

 2)○○大:国大協の運営方法に問題がある。総会を早急に開催すべきであっ
  た。

    会長:各種委員会等で検討してきたものだ。

 3)○○大:会長の回答が不明確だ。従来、旧帝大と地方国立大との間に差別
  があった。国大協の理事会中心主義は問題だ。構成員の意見をもっと聞く
  べきだ。社会に向けて国立大学が何をやっているかアピールが不足だ。

 4)○○大:問題点は数多く存在する。鹿大の意見のような不安もある。特に
  地方大学にとっては、運営費交付金の配分、人事制度、運営などデメリッ
  トが大きい。

 5)○○大:全学集会で出された意見を述べるが、これは為にする議論ではな
  い。競争原理の導入は教育研究といった知的作業には適さない。学問の自
  主自律についても問題だ。会長談話といった形でこのような重要な見解を
  出すべきではない。会則第8条、第13条に基づいてやるべきだ。

 6)○○大:法人格をもって競争により名実共によい大学をつくりたい。しか
  し、旧帝大、大都市の大学と地方大学の格差が問題だ。

 7)○○大:検討すべき点は数多く残されている。統合再編と重なっており検
  討する時間が欲しい。次の総会で決めるべきだ。「非公務員型」の問題や
  教特法の廃止に伴う自治の保証の問題などはどうなるのか。

    会長:私立大学への移行などのことがあった。

 8)鹿児島大:私の質問に対する回答は納得できない。制度的な問題であるの
  にこれを運営の問題にすりかえている。本質的問題について考えて欲しい。
  会長は民営化の問題が出たので容認の方向にしたという話をされたが、事
  実を明確にして欲しい。誰がいつどこでそういうことを述べたのか。また、
  極めて重要な事項であるので、本件は次の総会で審議をすべきだ。

    石副会長:国が設置者なので中期目標・評価を政府が行うのはやむを得な
  い。護送船団の時ではない。

 9)○○大:評価方法の確立には時間がかかる。地域社会の問題の重要性につ
  いてコメントした。

 10)○○大:私の意見は教条的でもなく、為にする議論でもない。知の拠点
  として大切なことだ。法人化のメリットはあるのか、地方国立大学は使命
  を全うできるのか、など全部で7項目について配付資料(資料番号なし)
  に基づいて意見表明を行った。

  会長からは明確な返事はなかった。

 11)○○大:改めて全体会議を開くべきだ。

 12)○○大:会長談話(案)についてはそうせざるを得ない。それは国立大
  学側が案を出すべきだったのにそれをしなかったためだ。地方と大都市圏
  とは大学間格差、地域格差は大きい。設置が予定されている国大協国立大
  学法人化特委の審議ではこの点を配慮して欲しい。

 13)○○大:鹿児島大の意見を支持する。「非公務員型」が急浮上してきたが、
  何故職員までも非公務員型にするのか納得できない。
  松尾副会長:連絡調整委に唐突に出てきた。産総研では公務員型であるな
  どと主張したが多数意見に押し切られた。

  会長:ジレンマの中にある。国立大として様々なことがあるが、文部科学
  省は法制化を急いでいる。不明確な点は国立大学法人化特別委員会で検討
  して申し入れるようにしてもらいたい。国が一方的に法制化する。ギリギ
  リの時期だ。決めて欲しい。

 14)鹿児島大:長尾会長は、この改革サイクルが教育研究に対して規制強化
  ではないと考えているのかどうか明確に答えて欲しい。パブリックコメン
  ト、マスコミ等も規制強化だと言っている。

  会長:絶句。返事せず。

   松尾副会長:いつも文部科学省が先手を取り、国大協は後手に回っていた。
  時間的には一杯一杯だ。

 15)○○大:示された大学像は、耐えられるものではないが新しいことをや
  るのはよいことだ。文部科学大臣の配慮義務があるので、走りつつ考えれ
  ばよいのではないか。

 16)○○大:ガス抜きでは駄目だ。国大協は何だ。

  石副会長:今まで総会で何回も審議した。特委でもそうだ。執行部として
  は決断して欲しい。マスコミの社説もpositiveだ。

 17)○○大:「法人化の準備に入ることとしたい」について承認を得てはどう
  か。

 18)○○大:利害が異なる国大協だが一枚岩であるべきだ。東大・京大に対
  する懸念もある。COEもさらっていくのではないか。

 挙手による採決が強行され、会長談話が採択された。採決に際し、鹿児島大
は反対した。

4 次いで、国立大学法人化特別委員会(仮称)設置要項(案)(資料3)、
 同委員会委員候補者(案)が審議され、原案どおり決定された。

5 国立大学協会の在り方検討特別委員会(仮称)設置要項(案)(資料4)、
 同委員会委員候補者(案)が同様に決定された。

 以上が臨時総会の報告です。


 次に、本総会の要約と感想を記します。

1 審議の要約

 (1)数多くの質問があった。ほとんどは「新しい国立大学法人像について」
  に反対、懸念、不安を示すものであった。

 (2)この最終報告案を支持する根拠は、下記のごとく極めて薄弱で、説得力
  に欠けていると言わざるを得ない。したがって、納得のいく明確な理由な
  しに承認を認められ、強行されたと感じた。

  ・ 改革サイクルが学問の自主自律を侵し、かつ規制強化であるということ
   については返事がなかった。

  ・「非公務員型」については一生懸命やったが駄目だったというにとどま
   った。

  ・民営化の問題もあったというが、確たる証言は得られなかった。

  ・文部科学省が法案作成を進めるので時間的に間に合わないのでこの総会
   で承認を求められたが、今までも独法化問題の審議の際には国大協執行
   部はよくこのような説明を用いてきた。しかし、これは口実に使われて
   いたように思われる。

  ・文部科学省に伝えて法制化に生かすと述べたがその効果には大きな疑問
   がある。

   (3)出された意見をまとめると次のとおりである。

  ・本制度の本質的問題について述べ、反対あるいは懸念を表明した。4大学

  ・地方大に対するdemeritが問題だ。2大学

  ・東京大・京都大が一人勝ち、旧帝大との差別が問題だ。2大学

  ・国大協とは一体何か?運営に問題あり。3大学。

   本臨時総会の後で、ある全国紙の記者もこの点を痛烈に批判していた。

  ・各大学で検討した上で定例総会で決めるべきだ。4大学

 (4)説得力のある明確な理由を示さないままで採決が行われた。

 国大協は、もはや全ての国立大学のためのものではなく、明らかに旧帝大
など大都市の歴史のある大学のものだと感じた。今後は別の組織が必要かも
しれない。

 独法化へ向けて準備することが国大協の方針となった。しかし、その理由は
明確でない。

2 本総会の感想並びに意見

 (1)国家百年の大計である教育の根幹に関わる設置形態の変更(独法制度の
  下での国立大学の法人化)であるにも関わらず、明確な根拠のないまま意
  志決定を敢行したことは、最高学府の代表者からなる国大協のあるべき姿
  からは程遠いものである。会長等執行部は大きな道義的責任を負うことに
  なるであろう。私も構成員の1人として遺憾である。

 (2)国大協のこの決定は、学問の自由への侵犯、学問の衰退、地方国立大学
  の切り捨てなど本制度の持つ重要な問題について行政改革当局や社会に向
  けて大学人としての意見を述べる機会を自ら放棄したことを意味している。
  わが国の学問の発展という使命を持つ1人の大学人として、また1学長と
  して残念である。

 (3)我々大学人は、常に世界や日本を見つめ、大学の果たすべき使命に従っ
  て教育、研究、社会貢献に努力すると共に、制度を含む大学のあるべき姿
  を求め続けるという重大な使命を持っている。

     「最終報告」に示された制度は、わが国の学問の発展や国力の増進に大
  きな阻害要因となることが懸念される。今後法制化や法律の審議の段階で、
  継続して大学の自主自律の確保などあるべき姿を求めて深く考え、発言し
  続けなければならない。永い期間にわたる努力が必要であることを胸に刻
  んでおかなければならない。

 (4)国立大学法人像は、独法制度という枠組を基礎にした大まかな大学像を
  示しているにすぎず具体的内容は今後の問題として残されている。本学に
  おいても現時点での法人像について本学に則した検討を冷静に進めなけれ
  ばならない。

   今後とも、本学の英知をもって最善を尽くし、本学の使命を果たすため
  に教職員並びに学生諸君が一体となって全力を尽くされんことを希望する。

 (5)国大協に設置された国立大学法人化特別委員会は、法人化へ向けた諸準
  備の課程における諸課題に対し、国大協の立場から調査検討し、機動的か
  つ適宜適切に対応するために設置された。しかし、その委員構成を見ると、
  歴史のある大都会に存在する大学によって占められており、地方国立大学
  の立場からの発言は限られたものにならざるを得ない。臨時総会で発言し
  た地方国立大学や小規模大学の学長の意見が充分反映されないことになれ
  ば、独法化が特定の大学の立場にかたよったものになることが懸念される。
  今後の国大協の運営のあり方に注目し、発言することが大切である。

   また、国立大学協会の在り方検討特別委員会の委員構成を見ても、上に
  述べた国立大学法人化特別委員会と同様のことが危惧される。

   今後、多様な国立大学の意見が充分配慮されるような組織構築が必要と
  なるものと思われる。

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国立大学協会臨時総会(平成14年4月19日)議事次第 (pdf, 14kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/giji.pdf

最終報告「新しい『国立大学法人』像について」の検討結果 (資料1)
(pdf, 195kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/shiryo1.pdf

「新しい『国立大学法人』像について」(最終報告)に関しての
国立大学協会会長談話(案)(資料2) (pdf, 146kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/shiryo2.pdf

国立大学法人化特別委員会(仮称)設置要項(案)(資料3) (pdf, 85kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/shiryo3.pdf

国立大学協会の在り方検討特別委員会(仮称)設置要項(案)(資料4)
(pdf, 63kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/shiryo4.pdf

「新しい『国立大学法人』像について」(最終報告)についての意見表明  
鹿児島大学長 (pdf, 66kB)
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/kagoshima.pdf

『新しい「国立大学法人像」について』(調査検討会議最終報告)への意見  
静岡大学 (pdf, 165kB) 
http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/0204report/shizuoka.pdf
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