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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学独法化問題週報90抄 [he-forum 3976]  国立大学独法化問題週報90抄
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  国 立 大 学 独 立 行 政 法 人 化 問 題 週 報
      Weekly Reports  No.90 2002.5.20 Ver 1.1
    http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-90.html
   総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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              目 次
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[90-0] 内容紹介
 [90-0-1] 解散せずに決められることなのだろうか
 [90-0-2] 憲法を目障りに思う存在
 [90-0-3] 有事法制と創造性
 [90-0-4] 公務員の「政治的活動」
 [90-0-5] 拡大し続ける文部科学省の権限
 [90-0-6] 私立大学からの疑義
 [90-0-7] 中教審答申への長谷川氏意見書
 [90-0-8] 『大学管理のプロパガンダ』
 [90-0-9] 国立大学法人は独立行政法人の別称であることが判明
[90-1] 国家公務員としての国立大学教職員の義務
[90-2] ◆大学人の最低限の「社会貢献」は大学存立の原理を守ること
[90-3] 日本輸血学会評議委員会決議
[90-4] 高等教育政策
 [90-4-1] 育英会廃止 有識者会議発足へ
 [90-4-2] 「「知の拠点」を目指した大学の施設マネジメント」
  [90-4-2-1]Yahoo!BBSより「文教施設部長の妄言」
 [90-4-3] 参議院文教科学委員会4月25日議事録より
  [90-4-3-1]有馬朗人議員(自民党・元文部大臣)
  [90-4-3-2]内藤議員(民主党)/なぜ独立行政法人化か?
  [90-4-3-3]鈴木議員(民主党)
  [90-4-3-4]林議員(日本共産党)/国立大学法人制度の詳細
  [90-4-3-5]西岡議員(自由党・元文部大臣)
[90-5] 大学改革に関連する意見
 [90-5-1] 長谷川浩司氏パブリックコメント
 [90-5-2] 毎日新聞編集部への竹田氏書簡より
 [90-5-3] 朝日新聞社説2002.5.16 「法科大学院―改革の理念を貫くには」
[90-6] 個人情報保護法案の行方
 [90-6-1] 個人情報保護法案拒否!共同アピールの会「個人情報保護基本法(案)」
  [90-6-1-1] 同会主催「5/26法案拒否!から国会拒否!へ」(解散を求める集会)
 [90-6-2] 桂 敬一「日本の個人情報保護法制化の動きに関する一考察」より
 [90-6-3] 三重県議会2002.5.17「政府提出の個人情報保護法案の撤回を求める決議」
 [90-6-4] 北海道新聞社説「個人情報法案 小手先修正では済まぬ」
[90-7] 有事法制を巡って
 [90-7-1] 共同通信世論調査2002/5/4
 [90-7-2] 「軍隊を持たない国コスタリカ いのちが一番大事と教えている国」
 [90-7-3] 有事法制に反対する地方自治体議員・共同アピール
 [90-7-4] 三重県議会2002.5.17「政府提出の有事法制関連法案の撤回を求める決議」
 [90-7-5] 市民と憲法研究者をむすぶ憲法問題Web
  [90-7-5-1] 清水雅彦「有事法制・改憲論を考える〜その分析と問題点〜」
 [90-7-6] 朝日02.5.6「イージス艦派遣、海幕が米軍に裏工作 対日要請を促す」
  [90-7-6-1] 朝日5.7米軍に裏工作報道は「事実に反する」 中谷防衛庁長官
 [90-7-7] 毎日5.17「同時多発テロ:事前に情報を得ていたと発表 米ブッシュ政権」
  [90-7-7-1] 「ブッシュは同時多発テロを事前に知っていた!
 [90-7-8] 【書評】有事法制を強行するための『戦争プロパガンダ10の法則』
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            ハンナ・アーレント 
 巨大な悪行は実は、小さないくつもの陳腐な悪事から成り立っている。          
      http://www.jcj.gr.jp/relay.html#20010828
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[90-0] 内容紹介など
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[90-0-1] 解散せずに決められることなのだろうか

 国会が終盤を迎え、解散して主権者の意思を問うてもおかしくない重大法案
が、主権者の合意もない[90-7-9]中で、政府が審議でまともに答弁もできない
状態のままで、可決されてしまうのではないか、と予想されている。主権者の
多くの運命を左右する問題の帰趨が、与野党の政治的駆け引きに委ねられてい
るとは・・・立法機関の暴走という「法システムの危機」を管理するシステム
を欠いた危ない国である。違憲な法律が国に危害を及ぼすことを防ぐために迅
速に無効にできる「違憲立法審査権」が憲法により司法に与えられているが、
「司法消極主義」を宣言し、司法が使命の遂行から逃避し続けて、はや50年
が経過している。

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[90-0-2] 憲法を目障りに思う存在

 日本国憲法は、世界のすべての人々の幸福に重大な関心を持つため、社会的
な勢力を持つ者・持ちたいと思う者や、日本の繁栄にしか関心がない者、等に
とっては非現実的に見える実に不愉快で許しがたい条項に満ち満ちている。特
に、日本を実質的に支配している行政機構にとって、憲法ほど邪魔でお荷物な
ものはないのではなかろうか[90-7-5-1]。しかし、50年前に違憲立法審査権
の「停止」に成功した後は、憲法を余り気に留めず立法が行えるようになり、
最近では、明らかに違憲な法律を通してもジャーナリズムもさして問題にせず、
ほとんどの人は気にも止めなくなり、万々歳、というところだろうか。

 そして今、憲法9条と明白に矛盾する法案を可決させようと熱意を持った人
達が国会に犇めいている。憲法99条により憲法の擁護を義務付けられている
人達にはそれは許されていないことを知っているのだろうか。夥しい人柱の上
に建てられた憲法をここまで足蹴にすることは恐れ多いことではないだろうか。

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[90-0-3] 有事法制と創造性

 自衛隊の存在と憲法9条とを整合的と思う者は居ないだろう。国の正面に嘘
を堂々と掲げ半世紀も経過すれば国の隅々まで嘘の精神が浸透することになら
ないだろうか。その嘘を明文化する「有事三法案」が今国会で審議されている。
多くの反対の声が上がっている[90-7]が、今週強行採決される可能性が高い。
現政権の正体が明らかになる時が刻々と近づいている。

 憲法9条を公理として国策を組み立てる、誇り高い困難な使命の遂行に必要
な忍耐・智慧・配慮・譲歩を厭い、ステレオタイプで時代遅れで傲慢で非現実
的な軍事的平和政策に退行していく様は、日本という国の創造性の衰退を目の
当たりにするようで、つらい。

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[90-0-4] 公務員の「政治的活動」

独立行政法人化阻止全国ネットワーク世話人会による声明[90-2]は、種々の取
組みを呼びかけている。独立行政法人化は憲法23条が保障する学問の自由を
種々の形で法的に弱体化させるもので、違憲度が極めて高い。国立大学教職員
がこれを看過することは、憲法の擁護を義務付けられている公務員としての義
務を怠ることになるという点を頭の片隅に置いておく必要があるのではないか
[90-1]。

 ところで、独立行政法人化反対を表明することは公務員に禁止されていると
思っている人が居るかも知れない。法的に公務員が禁止されている政治的活動
は(選挙活動や特定政党の支持以外では)「日本国憲法に定められた民主主義
政治の根本原則を変更しようとする意思」に基づく活動だけである[90-1]。こ
のことが法律ではなく、官が自由に定めることができる「人事院規則」の運用
方針でしか述べられていないのは驚くべきことである。この「運用方針」がな
ければ人事院規則は明白に憲法違反となるであろう[90-1-1]。

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[90-0-5] 拡大し続ける文部科学省の権限

文部科学省施設部が、国立大学法人化後に、国立大学全体の施設を一元的に管
理する方針をまとめた[90-4-2]。国立大学全体に対し隠然たる影響力を持って
きた施設部が、法人化後は国立大学全体の全施設を掌握することを宣言したと
言えるだろう。法人化後は、国立大学施設は、文部科学省が各大学各部局に貸
し出す形式になるので、施設部の権限は大きなものとなるだろう。それを象徴
するかのように、この4月、北大構内にレンガ作りの豪邸のような中央配電所
が完成した。一方では、医学部のように、雨漏りがし鉄骨の錆が目立つ校舎で
教員と学生の日常的な教育研究活動が行われているところもある。

 国立大学の建物はすべて施設部が設計するため、帯に短し襷に長しで、どの
部局にとっても使いづらいものになる[90-4-2-1]。第二次科学技術基本計画で
は国立大学施設整備費として5年で1兆6千億円を支出することが総合科学技
術会議で了承されているが、このような有様では、本当に教育研究を活性化す
るように税金が使われるのだろうかと、不安になる。法人化後に政府が大学に
対して持つ絶大な権限への歯止めは、文部科学省本省の職員の方々の善意と良
心だけであることが既に証明されていると言えるだろう。

 「法人化諸法案」を審議する年末あるいは来年の国会で「大学の自主性・自
律性を高めるための国立大学法人化だ」と誰かが説明しても信じる人は少ない
だろう。

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[90-0-6] 私立大学からの疑義

 「内なる大学改革ー理系大学人の発言」を昨年出版した竹田保正氏は、私立
大学に勤務されているが、国立大学の独立行政法人化に対し批判意見を展開さ
れている[90-5-2]。

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[90-0-7] 中教審答申への長谷川氏意見書

 東北大学の長谷川浩司氏が、中教審の中間報告「大学の質の保証に係る新た
なシステムの構築について」に対してパブリックコメントを送付している
[90-5-1]。いつもながら、簡潔に核心を衝く意見書である。「評価の際に計上
されやすいであろう学生の在籍数、特許取得数など、あらゆる種類の数値目標・
数値制限も、質を保つ上で大きなネックである。」も、大学院重点化した大学
の多くが痛感していることであろう。

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[90-0-8] 『大学管理のためのプロパガンダ』

『戦争プロパガンダ10の法則』という本がある[90-7-8] 。戦争を開始する
ときに国が使うプロパガンダを例示したものだ。最近の大学管理プロパガンダ
も取り上げると面白いかも知れない。「自主性・自律性を高める」と言いなが
ら独立行政法人化により徹底した大学管理体制を樹立する所は、不法に手枷足
枷をつけてた管理者が行動の自由までは干渉できなかったのに不満に思い、手
枷足枷は外すことを恩に着せ収容所に入れて管理するのと、似ていないでもな
い。

また「基礎研究が大事なことは余りに自明なことなので言及する必要も感じな
い」と言いつつ、基礎研究のための条件を確実に消去していく政策も同じ類い
の印象を受ける。

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[90-0-9] 国立大学法人は独立行政法人の別称であることが判明

4月25日の参議院文教委員会で、林議員の質問に答えて、工藤高等教育局長
が、国立大学法人(仮称)も、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の
評価を受けることを認めた[90-4-3-4]。ようやく、国立大学法人が、独立行政
法人の別称であることが明確になった。

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              抜 粋
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[90-1-1] 豊島耕一「国家公務員の政治活動の制限・禁止について」より
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/PoliticalActivities.html

「国家公務員法102条は,「人事院規則で定める政治的行為をしてはならな
い」として政治活動の禁止を述べ,それを受けて人事院規則はこと細かに禁止
事項を並べている.いわく,政治的団体の結成を企画したり援助してはならな
い(6項-5号),政治的団体への勧誘運動をしてはならない(6-6),集会など
で拡声器を使って政治的な意見を述べてはいけない(6-11),政治的な演劇を
演出してはならない(6-14)など十七項目にも及ぶ.しかもこの制限は勤務時
間外にも,また,常勤の職員だけでなく非常勤職員にまで適用されるのである.

 政府活動に携わる公務員が,その公平,公正さを保つために,政治活動にお
いて何らかの制限を受けるということはあり得るだろうが,このような,言論
の自由の原則を踏みにじるほどの規則は憲法に照らせば違法である.しかも政
府活動とは関係のない国立大学までも縛っている.しかし問題はそれだけでは
ない.国家公務員法102条は,「法の支配」という根本原則にすら反してい
るように思われるのである.それは,禁止する行為である「政治的行為」の定
義を法律ではなく「規則」に委ねていると言う点である.「規則」は立法府に
よることなく省庁などの官僚組織だけで決めることができる.このことは,何
を禁止するかを官僚組織に自由に決めさせるということで,「法の支配」とは
正反対の「人治」そのものである.

 同じような,実質的な事がらをより下位の規則で決めるというやり方は,人
事院規則とその「運用方針」の間でも見られる.たとえば,規則5項五号で
「政治の方向に影響を与える目的で特定の政策を主張し又はこれに反対するこ
と」は禁止の対象となるべき「政治的目的」を持つものとしている.しかしこ
の条項の「運用方針」では,「政治の方向に影響を与える目的」とは「日本国
憲法に定められた民主主義政治の根本原則を変更しようとする意思をいう」と
して,単に諸政策を議論し批判するのはこれに当たらないとしている.

 日常的語法では,人が何らかの政治的発言をするとき,それは何らかの意味
で「政治の方向に影響を与え」たいからだと考えるのは当然だろう.普通の人
がそのような気持ちで規則5項五号を見れば,政治的な事は何も言ってはいけ
ないのだと思ってしまうに違いない.さすがにこれではあんまりだと思ったの
か,「運用方針」で限定を加えているのである.しかしこの「限定」はまさに
人事院という役所の慈悲次第であり,そのような「運用」が常に行われるとい
う保障はないのである.これはまさに最近よく言われる「官主主義」の見本の
ようなものだ.いわば,このような法やその運用のありかたそのものが「日本
国憲法に定められた民主主義政治の根本原則を変更しようとする」ことそのも
のである.

 「運用方針」の最後の第五項では,「この規則は憲法第二十三条に規定する
学問の自由を拘束するような趣旨に解釈されてはならない」として学問の自由
への配慮を示しているが,このような「注意書き」が必要なこと自体,規則そ
のものにこの危険性があることの証拠である.・・・・」(1996.3.2)

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[90-4-2] 「「知の拠点」を目指した大学の施設マネジメント」

「今後の国立大学等の施設管理に関する調査研究協力者会議」報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/004/toushin/020501.htm
(報道発表)国立大学法人(仮称)における施設マネジメントの在り方につい
て−」について:文部科学省大臣官房文教施設部技術課 2002年5月10日
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/05/020505.htm

「第3章 法人化を踏まえた施設マネジメントの課題>1 施設マネジメント
を行うシステムの構築>1)施設マネジメントのシステムづくり 「また,国
立大学の法人化に伴い拡大する経営面の権限を活用して,全学的な視点に立っ
た意思決定システムを確立し,学部等の枠を越えた資源配分を実行することが
重要である。」

♯(札幌市営地下鉄南北線北12条駅から北大構内に入った所にレンガ作りの
豪華な建物が完成した。プレートに「中央配電所」とある通り中央配電所を建
て直したものだが、第二期科学技術基本計画にある国立大学施設整備費(「5
年間で1兆6千億円*」)の有効な使い方だろうか、と話題になっている。しか
し、「施設マネジメントシステム」というプレートに変るのかも知れない。)

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/04/010418.htm

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[90-4-2-1] Yahoo!BBS「文教施設部長の妄言」
No5220 2002.5.18 独立行政法人トピ cpoirewjp 氏
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=ED&action=m&board=1086166&
tid=9qna9bga4nfhna99tc0afka1bfm2bda1aa&sid=1086166&mid=5220

「・・・・現在、「重点化」された国立大学には、・・・・机上のプランが、
「個性的な施設」というふれこみで次々と措置されている。「共用スペースの
いたずらな増加」「ガラス張りの壁面や吹き抜けなどの必要以上の多用」など
があるばかり。そこに個性の名に値するものは見られない。

 画一的な流行が無反省に追い求められているというだけならまだよい。人間
の居場所が削り取られた結果、施設は使いにくいものとなり、使われなくなる。
メンテナンスにも膨大な費用がかかる……。文科省施設部の掲げるニューコン
セプトは、膨大な国費の無駄使いにほかならず、大学の知的生産性を低下させ
る役割すら果たしている。

独法化により、トップダウンの「経営」が強まれば、施設整備にはますます現
場の声が反映しにくくなる。そして、現行の施設整備の問題を何ら自覚しない
連中が施設担当役員として国立大学に乗り込んでくるのだろう。

独法化は、「効率化」や「予算の節減」すら達成することはできない。」

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[90-5] 大学改革に関連する意見
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[90-5-1] 長谷川浩司氏パブリックコメント
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kojihas/020518pc

「2002.5.18
文部科学省高等教育局高等教育企画課 企画審議会係 担当者様

中央教育審議会中間報告「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築につい
て」に対する意見を送付します。

        

・報告は全体に大学の自由競争を促進する方向をうたっているが、財政的裏付
けがない中の競争は質の低下をまねかずにはおかない。地方自治体の努力で初
等中等教育については少人数学級がようやく議論されはじめたが、大学の教育
環境の整備は今後はむしろ後退するのではないか。大学が最も過密な教育環境
になりうるし、その場合大学が期待にこたえる存在であることは困難であろう。
いわば小銭稼ぎのための学問の切り売りによって本質が損われる可能性も懸念
される。

・評価機関の評価がどれほどのものでありうるか疑問である。分野ごとのばら
つきを排することは不可能に思われ、各種の数値を基準とするお祭りにおわる
可能性が大きい。長期的には大学が経済の下僕と化すのではないか。たとえば
学術会議の下に大学のあり方を論ずる常設機関(ユニバーシティ・カウンシル)
を設け、大学に関する基本政策はここでの合意を原則とするなど、高等教育政
策に学問的視点が充分反映される道を強化すべきである。

たとえば理学部と工学部を一体化する際は届け出とするなどがうたわれている
が、無原則にこのような傾向が拡大した場合、日本における基礎科学は崩壊す
る虞すらあるだろう。

評価の際に計上されやすいであろう学生の在籍数、特許取得数など、あらゆる
種類の数値目標・数値制限も、質を保つ上で大きなネックである。


・大学の質の問題は大学だけの問題ではないはずであり、社会全体の問題をそ
のまま反映している面があることを無視できない。たとえば初等中等教育を含
む文科省の政策こそ、これを評価することが必要であろう。」

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[90-5-2] 毎日新聞編集部への竹田氏書簡より

♯(竹田氏のご好意で転載)

毎日新聞社編集部 論説担当部署 御中                 

2002年4月28日
 
前略

 下記の5件の論説*を併せて読んで、感じたことを書きます。

 今、国立大学に大きな困惑、動揺を与えている国立大学の組織変更、「独立
行政法人化」と、「国立大学7つをトップとする30大学の重点化ーいわゆる
遠山プラン」に関する貴紙の論説は、国立大学人はもとより、私のように私立
大学(理工系)におります教員にも、それなりに適切な主張、論説であると評
価されています。毎日新聞がこれらの論説を出されるについて、そうとうな努
力をされていることと察しています。

*  1.昨年7月29日の論説「遠山プランー大学の視点から練り直せ」    
  
   2.昨年9月29日の論説「国立大学法人化ーゴールではなく出発点だ」

   3.今年1月26日の論説「国立大学統合ー理念、目的を明確に示せ」

   4.今年3月28日の論説「国立大学ー理想の法人化目指す努力を」
  
   5.今年4月24日の論説「研究機関再編ー現場から声を上げないと」

 戦後、国立大学のみならず、公立、私立大学まで含めて、国の科学行政、高
等教育行政に高等教育をどのように構築するかの長期的展望もなく、貧困な研
究、教育条件があまり改善されることなく(巨大科学の陰で冷遇されてきた)、
日本経済の高度成長期以降、単線的な教育制度のせいもあって、極端に大衆化
したことによる負の”つけ”を支払わされている状態である。

 この反論は、私が昨年の今ごろ出版しました著書「内なる大学改革ー理系大
学人の発言」(学会出版センター刊)において、くわしく論じております。

 国立大学を「独立行政法人化」し国の行政機関に位置付けることは、学問の
自由、大学の自治を保障している憲法、教育基本法、学校教育法などの法律と
整合するのか?ーーーこのような設問がマスコミでとりあげられたり、学術会
議が公聴会を開いて、世論を喚起しなければならないはずなのですが、「学者
の国会」といわれた学術会議は、今や内閣府にお預けの身で、トップダウンの
「総合科学技術会議」により今後の存在、あり方を決められる。「まな板の
上の鯉」のようなもの、、、.

 国の将来の発展を左右する、高等教育機関である国立大学(財政は基本的に
国民の納税により負担されている)を、このように「行政機関」として扱い、”
間接的に”国家統制をしいている国は世界に例がない。

 戦前、戦中の大学にたいする国家統制、学問の自由、言論、思想の自由を抑
圧した暗い歴史を背負っている国なので、ことさらに注意が必要である。今は、
何よりも高等教育のグランドデザイン、これに接続する中等教育、さらに初等
教育のシリーズを再検討し、(財界人だけでなく、)広く国民に理解され、支
持される教育システムの未来展望を作り出さなければならない重要な時期であ
ると思う。

日本の学術、高等教育の行方に重大な影響を与える組織変更であるが、ほとん
ど国民にその問題の重大性が知られていない。毎日新聞がアンケート調査でも
したら、どうか?

 それと、なぜか、一般の新聞、テレビでも、国立大学人の反対運動、その言
論、主張が掲載されていない。わが国の大新聞は本当に公正なのか、政治的に
中立なのか?

 これでは、社会一般に、この問題の重要性が理解されないのも無理はない。

 「知らしむべからず、依らしむべし」なのか?あたかも、国立大学の「独立
行政法人化」は、国(文部科学省)と、行革本部、政権党の文教部会の既定方
針であるかのように印象づけられている。

 私は、学生時代から毎日新聞の読者であり、最近あの痛烈なウオルフレンの
本「人間を幸福にしない日本というシステム」を最初に貴社が出版されたこと
を知りました。

 今後の貴紙の論説、報道において、上記のような意見を多少とも参酌してい
ただければ、たいへん幸甚であります。
                                    
                                                           竹田 保正

追伸:いまマスコミが、こぞって反対のキャンペーンを展開しつつある、「個
人情報保護法案」のような、言論と報道の自由を侵す恐れのある反動立法と、
上記の国立大学を”間接的”に国家統制せんとする「独立行政法人化」は、そ
の反面において同じような政治的意図、ポリシーに沿っていると考えられない
でしょうか?」
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[90-6] 個人情報保護法案の行方
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[90-6-2] 桂 敬一「日本の個人情報保護法制化の動きに関する一考察」
(2000.3)より
http://www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r3-3-4/index.html

・・・・・
6.日本の情報公開制度・個人情報保護制度形成過程には「日本的歪み」とで
もいうべきねじ曲げが加えられていないか。

・・・・・
(5)政府が市民情報の「保護者」「調停者」になれるのか

 政府・個人情報保護検討部会の中間報告は、各種の情報領域について個別の
個人情報・プライバシー保護措置を、各個に定めていくが、最終的には政府が
責任をもってルール違反やそれを犯すものを規制し、保護されるべきものの権
利を守る、とする考え方を明らかにしている。そこに示されているのは、「保
護者」「調停者」としての役割を担う政府の姿である。だが、もう一度、個人
情報・プライバシー保護制度の最大の眼目は政府の情報保有・利用に置かれて
おり、それを対象に立案されるべきものであるとする原則に立ち返ってみれば、
規制を受けるべき政府が「調停者」「保護者」として出現することのおかしさ
は、火をみるより明らかであろう。それにもかかわらず、そうした政府の位置、
役割をあえて制度的につくり出そうとするのであれば、それは市民を甚だしく
愚弄するものであるというよりほかない。・・・・

・・・・・
7.個人情報保護の法制的発展は、どのような基本路線に添って進められるべ
きか。

情報公開・個人情報保護制度の確立と実践的普及は、政府に対する市民的自由
の拡大を飛躍的に増大させ、民主主義の徹底を新たな次元で促す重要なモメン
トとなる可能性がある。ところが、日本では、市民的自由の自覚が乏しい社会
的現実のなかで、両制度の生成・普及過程が政府・政治家によって逆に利用さ
れ、欧米とは反対に、両制度が結果的に、権威的政府の出現とその権力のいっ
そうの強大化を許す制度的根拠となされるおそれが生じている。・・・・」
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[90-6-4] 北海道新聞社説「個人情報法案 小手先修正では済まぬ」より
2002年5月16日付
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20020516&j=0032&k=200205163884

♯(読売修正案を強く批判)「・・・社会や行政の電子化が進めば進むほど個
人情報保護は重要な課題となる。その意味で新住民基本台帳法による個人の1
1ケタの番号化を8月に控え、本来なら、行政の持つ個人情報に市民の側から
アクセスする権利が「保護」の第一番にこなければならなかった。/一定数以
上の個人情報を扱う者すべてを規制対象にしたこの法案は、市民の自由な表現
活動を妨げる要素が強すぎる。特定の大新聞がよければ「青信号」を出せるよ
うな法案ではない。」
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[90-7] 有事法制を巡って
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[90-7-1] 共同通信世論調査2002/5/4
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20020504&j=0023&k=200205042762
「共同通信社が1、2の両日に行った全国電話世論調査によると、後半国会の
焦点のひとつである他国の侵攻に備えた初の有事関連法案について、法整備の
必要性に半数近くが理解を示す一方、今国会での成立に対しては慎重な答えが
上回るという「ねじれ現象」が生じていることが分かった。私権制限の在り方
など、法案内容への不安や疑問が背景にあるとみられ、連休明けから本格化す
る国会審議にも影響を与えそうだ。調査によると有事法制の整備について「必
要だ」が49・8%、「必要ではない」が38・3。しかし、今国会での成立の是
非については「成立させるべきだ」との答え(39・1%)が「成立させるべき
ではない」(47・2%)を大きく下回った。法整備の必要性に理解を示した人
の中でも22・0%が、今国会での成立には反対だった。」
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[90-7-8] 【書評】有事法制を強行するための『戦争プロパガンダ10の法則』
『戦争プロパガンダ10の法則』に基づいて(木村奈保子2002.5.16)より
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/notice/propaganda_de_guerre.htm
第一法則、われわれは戦争をしたくない。
第二法則、しかし敵側が一方的に戦争を望んだ。
第三法則、敵の指導者は悪魔のような人間だ。
第四法則、我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
第五法則、われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよ んでいる。
第六法則、敵は卑劣な兵器や戦略を用いている。
第七法則、われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。
第八法則、芸術家や知識人も正義の闘いを支持している。
第九法則、われわれの大義は神聖なものである。
第十法則、この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である。
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発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp
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