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☆国立大学独立行政法人化問題週報 目次と抜粋
 
.[he-forum 3910]  国立大学独法化問題週報89目次と抜粋
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国立大学独立行政法人化問題週報 目次と抜粋
Weekly Reports  No.89 2002.5.07 Ver 1.0

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-89.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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[89-0]国家無謬説の危険性
[89-1]国会文部科学委員会・文教科学委員会議事録より抜粋
 [89-1-1]衆議院文部科学委員会2002年4月5日における文部科学大臣発言
  [89-1-1-1]「ほとんどがこれは大学人でございます、大学人がみずから・・
  [89-1-1-2]「そして大学人の間での合意を得て、今回の調査検討会議の・・
 [89-1-2]大仁田厚議員
 [89-1-3]武山百合子議員
 [89-1-4]石井郁子議員:
 [89-1-5]山本香苗議員
 [89-1-6]林紀子議員
[89-2]大学の動き
 [89-2-1]4.19国大協臨時総会における議事運営の実態
  [89-2-1-2]国立大学協会会長談話2002.4.19(案)
 [89-2-2]宮崎大学評議会決議2002.5.2
 [89-2-3]「国立大学法人」に関する説明会(宮崎大学主催 2002.4.26)の概要
  [89-2-3-1]国立大学協会臨時総会前の宮崎大学学長説明会の概要
 [89-2-4]北海道大学教職員組合声明2002.4.25
 [89-2-5]山形大学憲章プロジェクトチーム 2002.4.19
 [89-2-6]弘前大学学長説明会の様子(抜粋)2002.4.25
 [89-2-7]千葉大教職組の学長宛質問状
[89-3]本の紹介
 [89-3-1]喜多村 和之「大学は生まれ変われるか―国際化する大学評価のなかで」
 [89-3-2]新藤宗幸著「技術官僚 ― その権力と病理」
 [89-3-3]佐々木毅他編公共哲学6「経済からみた公私問題」
[89-4]記事など
 [89-4-1][理系白書]第3部 文系の王国 毎日新聞2002.4.16
 [89-4-2]団藤保晴「いつまで手直し主義で逃げるのか」 (2002/04/25)
 [89-4-3]全教員に任期制導入/2003年開学の県立保健福祉大(神奈川新聞)
 [89-4-4]週間現代5月4日号より:麻生議員発言
  [89-4-4-1] 関連情報:Yahoo! JAPAN BBS コメント
 [89-4-5]喜多村和之「基準認定の意味と役割―米国の大学評価事業に参加して」
 [89-4-6]鋤柄 光明「調査団から見た大学評価―NEASC実地調査に参加して」
[89-5]個人情報保護法案関係
 [89-5-1]北海道新聞 評論シリーズ「メディア規制3法案を考える」
  [89-5-1-1]No5(4.30):青野 渉(札幌弁護士会)
  [89-5-1-2]No4(4/29):佐久間達哉(法務省人権擁護局調査救済課長)
  [89-5-1-3]No3(4/28):高井 潔司(北大大学院国際広報メディア研究科教授)
  [89-5-1-4]No2(4/27):岡村 勲(全国犯罪被害者の会代表幹事)
  [89-5-1-5]No1(4/26):鳥越俊太郎(キャスター)
 [89-5-2]阪上善秀自民党議員が個人情報保護法を批判し内閣委員が辞任
 [89-5-2]「個人情報保護法制に関する表現者の「マニフェスト」」
 [89-5-3]朝日新聞4/24 日本新聞協会、個人情報保護法案などに断固反対の声明
 [89-5-4]日本新聞協会の声明全文
[89-6]意見など
 [89-6-1]豊島耕一「政府が実施を急ぐ独立法人化ーー大学の“独立”は・・
 [89-6-2]渡邊信久「国立大学法人化による権力介入の可能性に不安」
 [89-6-3]週報読者からの便り
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[89-0] 国家無謬説の危険性

 今の日本では多くの人は「国」という巨大なシステムを素朴に信頼して生き
ていることに気づいていないように見える。それをいつも疑って生きることは
人にはできないし、その必要はないと思うが、それだけの信頼を得ている巨大
なシステムが暴走するときの災厄は大きいことを頭の片隅に置くことは必要で
はないか。暴走の可能性を秘めた巨大なシステムへの信頼は醒めた信頼でなけ
ればなるまい。

 半世紀前、このシステムが自らの意思を持ち大学を頭脳に取り込み軍隊を手
足としメディアを声帯とする巨神となってこの国に君臨した。

 この巨神が残したアジア一帯の廃墟と犠牲者の墓の前に立ち、巨大システム
の暴走をあらゆる手段で予防しようという決意を具体化したものが日本国憲法
であった、と考えたい。国という巨大システムが自らの意思を持ち頭脳と声帯
と手足を備えた巨神となって君臨することを防ぐ安全装置として、主権在民を、
学問の自由を、言論の自由を、軍備の放棄を、法システムの基盤に据えたので
はなかったか。

 巨神と化した国の恐ろしさへの実感が風化しつつある今、憲法に刻まれた安
全装置の存在理由を人々は理解しなくなってきたようだ。「なぜ、こんな時代
遅れの装置が必要なのか?主権在民を良いことに国民は利己的な主張するため
に政治家は堕落し、言論の自由を良いことにマスコミは言論の暴力を憚らない
し、武装せずに国を守るなどというのは無責任極まる楽観主義だし、学問の自
由を良いことに大学では無意味な研究が横行している」、こういった声が徐々
に広がり最近では大音量で語られるようになり、ついに、今の国会では、個人
情報保護法案・有事法制三法案が可決される可能性が出てきており、また、来
年の国会では、国立大学を巨大システムの頭脳に取り込む独立行政法人化も決
まる可能性も高まっている。

 心配なことは、これらの法改正を支持し推進する人達は「国」というシステ
ムが無謬であると考えている自らの楽観に気付いていないことだ。「政治家の
汚職」・「マスコミの暴走」・「大学の沈滞」・・・これらのキャッチフレー
ズで憲法を批判し弱体化させる政策を進める主張には、民主主義・メディア・
大学の果たしている役割について、木を見て森を見ない視野の狭さを感じる。
小悪を駆逐して大悪を招く例は多い。日本社会の人々が日々の創意と努力で解
決すべき諸問題を、巨大なシステムに頼って一気に解決しようとして安全装置
を解除することは、ITによる高度な神経系を持つ新種の巨神誕生へのゴーサ
インとなっていることを正視すべきではないか。        (発行者)

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[89-1]国会文部科学委員会・文教科学委員会議事録より抜粋
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[89-1-1]衆議院文部科学委員会2002年4月5日における文部科学大臣発言
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/02/405-shu-monbu-ishii.html#tym

「・・・・・この新しい「国立大学法人」像についてというレポートは、三月
二十六日に出されましたけれども、これは国立大学等の独立行政法人化に関す
る調査検討会議という会議体で十分に議論をされ、五十数回に及ぶ、専門家、
ほとんどがこれは大学人でございます、大学人がみずから自分たちの制度の将
来について真剣に議論をして到達した一つの結果が、今議論になっております
ような中期目標の定め方であり、中期計画の定め方であるわけでございます。
しかも、その中に尊重義務、配慮義務、それだけのことを明確にうたって、そ
して大学人の間での合意を得て、今回の調査検討会議のレポートが出たわけで
ございます。」

♯国会で、事実に反する発言をすること、あるいは、事実と異ることを思い込
ませかねない発言をすること、は許されることなのだろうか。
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[89-1-1-1]「ほとんどがこれは大学人でございます、大学人がみずから自分たち
の制度の将来について真剣に議論をして・・・」

♯「協力者」の大半が国立大学教員のように聞こえるがそうではない。調査検
討会議の協力者の設立時メンバーの内訳*1は(国立大学長16名)(国立大学副学
長3名)(国立大学部局長2名)(国立大学教員 9名)(共同利用機関長4名)(文部省
所轄機関 2名)(国立大学事務局長 3名)(公立大学長3名)(私立大学長 6名) (私
立大学教員3名)(学校法人等理事長4名)(財界人 4名)(マスコミ関係者4名) (そ
の他2名)。国立大学の教学関係者は30名で半数に満たない。しかも、その
中で専門委員と呼ばれる国立大学教員9名の多くは法学系教員で、しかも、数
年前から、改革しなければ民営化される、という類いの危機感を煽り*2、ある
いは、「飴と鞭のあるところで初めて独創的な研究が生まれる」と主張し*3、
国立大学運営者に文部科学省路線を説得してきた人達が含まれている

*1 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/tkk/meibo.html#shozokubunrui
*2 http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Alink_niigata990528.htm
*3 http://www.mnaito.com/diet_no154/univ_03.htm

cf:豊島耕一氏による批判:「「国家存亡の危機」,コップの中での再演」
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/uchida.html
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[89-1-1-2]「そして大学人の間での合意を得て、今回の調査検討会議のレポート
が出たわけでございます。」

最終報告とほぼ同じ内容の中間報告案に対する各協力者からの意見を集めた約
2万2千字の文書*1があるが、それを見れば、各委員会での議論が中間報告に
は十分反映されていないことが歴然としているーー肝心なものは無視されるか、
単にリップサービス的に報告に盛り込まれただけである。さらに、昨年9月の
中間報告以後の半年は、連絡調整委員会*2において、4委員会の座長を中心と
した協力者12名*2が文部科学省官僚に囲まれて会議が続けられただけである。
このメンバーの中の国立大学関係者6名(と国立大前学長2名)には国立大学
協会の中で強硬な独法化推進派が含まれており、また、経済財政諮問会議議員
で小泉内閣の一員と言ってもよい本間氏も含まれている。他の調査検討会議協
力者50数名は、連絡調整会議内容を月遅れでしか知らされず、最終報告直前
に短期間に意見を求められただけという。また、会議の外の「密室」で実質的
議論が進行した疑いが濃い。実際、会議の議事録*3では、唐突な提案に対し驚
きの発言もなく形だけの反論が発言されているだけである。なお、中間報告へ
のパブリックコメント130通余*4について検討された形跡は全くなく、文部
科学省が「国民の意見を聞いた」と言っても、誰をも納得させることはできな
いだろう。国会議員は「調査検討会議の報告が大学関係者の意見を反映したも
のである」という行政の主張を鵜呑みにすべきではない。三権分立の日本の政
治制度では、与党議員にもそのことが義務として求められる。

*1 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130730-1.htm
*2 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/heretic.html
*3 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/221-tkk.html
*4 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/doc/tkk-report.html#pcomments
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[89-2-2] ◆宮崎大学評議会声明 平成14年5月2日
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3899.htm


                        平成14年5月2日
                          宮 崎 大 学
      「新しい国立大学法人像」について


平成9年10月、宮崎大学評議会は「国立大学の独立行政法人化に反対する」
決議を行っている。平成14年4月19日、国立大学協会は臨時総会を開き、
国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議(以下、調査検討会議と
略称する)から示された「新しい国立大学法人像について」(最終報告)に
関し、「この最終報告の制度設計に沿って、法人化の準備に入ることにした
い」と決議し、会長談話の形で公表した。この事態に関連し、宮崎大学は下
記のように態度を表明する。
                記

1.「新しい国立大学法人像」は本学が平成9年に示した「設置形態の在り方
の見直しが制度化される仕組みは、大学の教育研究活動を阻害し、(中略)
学術研究水準の低下をきたすとともに、教育の機会均等にも影響を及ぼしか
ねない」とする懸念を払拭するものではない。したがって、国大協が「新し
い国立大学法人像」を容認する決議を行ったことに遺憾の意を表明する。

2.本学法人化問題調査検討専門委員会が指摘した「新しい国立大学法人像」
における問題点については、これから始まるであろう法制化の動きの中で引
き続き対応策を講じる。

3.国立大学の法人化に関する本学の基本的立場は前項までに示したとおりで
あるが、法律にもとづき設置された国立大学である以上、国立学校設置法が
改定されようとしている事態に対応する体制と準備を整える。

4.国立大学法人化の目的には自主・自律の体制を創ることにより、大学の自
由度を高め、より高度な教育研究能力を創出することにあると謳われている。
宮崎大学は、大学の自治を堅持し、より以上に自立の自覚をもつことの重要
性を再認識するとともに、「地域に根ざしグローバルにはばたく」大学づく
りに邁進する決意を新たにする。
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[89-3]本の紹介
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[89-3-1]◆喜多村 和之「大学は生まれ変われるか―国際化する大学評価のなかで」
中公新書1631 (2002/03/01)  ISBN: 4121016319 抜粋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121016319/
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「・・・・評価が資源配分の目的で行われる場合には、政策意図とは異なり、
研究・教育の改善・向上という目的が、いかにしたら資金を獲得できるかとい
う手段に変質してしまうおそれも強い。同時に大学の威信獲得の手段と化し、
大学の序列化をいっそう進めることにもなり得る。つまり大学間の健全な競争
のみならず、生き残りをかけた戦いをあおる可能性もはらんでいる。こうした
負の副作用をいかに最小限にとどめるかという方策が考えられなければならな
い。
 著者が危倶する最大の問題点は、教育・研究の評価を、「客親的」で「普遍
的」な基準や「目にみえる指標」(たとえば、論文発表数、被引用数、学会で
の受賞数、科学研究費の取得数などといった数値)を導入し、それによって測
定しようという傾向が支配的になってくることである。いうまでもなく学問に
は数値やデータでその質を表現できやすい領域の分野と、芸術、文学などのよ
うにそうした指標では表現しがたい領域のものとがある。成果や実積としては
目立たず、学界の関心の対象にもなりがたいが、その分野の地味な長期的研究
が大きな発見につながったりする場合も少なくない。みえる証拠を強調するあ
まりに、このカテゴリ−に入らない学問の価値をそこなわないようにするには
どうしたらよいかという問題も解決されなければならないだろう。
 いまひとつの問題は、質の評価と資源配分とを直結させ、そのプロセスのな
かに、政府の関与が強まってくるのではないかということである。一方で大学
設置基準の大綱化をはじめとする規制緩和と自己責任の強調によって大学の自
律性と自己改革を奨励しながら、他方で評価というムチと予算誘導というアメ
を与えて大学を制御するというのは、政策的にも整合性がみられないし、従来
の規制緩和と自己責任の強調という政策とは逆行することになる。同時に明治
以来の政府主導による資源集中投資によって効率化を追求するという近代化路
線は、すでに歴史的役割を失っているのではないだろうか。」


「学問の自由とその制度化としての自治を喪失した大学は、もはや大学の名に
値しない。仮に大学の形態は保ち、生き残りは保てたとしても、それはもはや
大学ではないと著者は考える。「大学は時にはあえて時代遅れになることを選
ぶ勇気をもたなければならない」とはアシュビーの言葉だが(アシュビー、1
995)、著者も大学の最後のとりでは自由と自立であり、そのことが社会に
最善の貢献をなし得る条件であることを確信するという意床での「保守主義者」
である。
 こうした大学の危機を救うひとつの手段が、大学自身による自律的評価であ
り、新しい時代に合った自治の観念の確立である。そしてその根底には、現代
における大学とは何かという問いに答えるに足る大学論と、高等教育システム
全体をゆるやかにつつむ新しいグランドデザインが必要となる。その課題に応
えるのは本書の範囲と著者の力量をはるかに超えているが、本書ではそうした
問題の重要性だけは指摘しておきたい。・・・・」

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[89-3-3]佐々木毅他編公共哲学6「経済からみた公私問題」
東京大学出版会 ISBN4-13-003416-2
発題1 猪木武徳「公私の問題と自発的な中間組織」

♯(競争原理に伴う不正・視野短期化等の副作用を回避するシステムの模索が
テーマ。視野短期化の部分は、国立大学に導入されようとしている人事システ
ムへの警告とも読むことができよう。)

p9 「・・・・この「視野の短期化」はすでにいくつかの重要分野で起こって
いる。

(1) 人材評価の短期化

例として,企業内の人事処遇制度のうちで,年俸制を強くすすめる論,あるい
はもっと単純に,「能力給」こそが公正な処遇方法だと主張する論などが挙げ
られよう。こうした主張は,先にふれたような長期的な視野と観察に基づく慎
重な処遇制度とは基本的に相容れない.年ごとの評価が直接的に年々の報酬に
リンクするような年俸制(大企業管理職に広まっている年俸制は,プロスポー
ツ選手のような純粋型ではないが)は,基本的に一年ごとの短期評価だからだ.

 日本の長期雇用や年功的に平均賃金が上昇するシステムは「非競争的だ」と
思い込んでいる論者が多いが,これは大きな誤解である.平均賃金はたしかに
年とともに上昇しているが,個別の賃金の格差(チラバリ)は勤続や年齢とと
もに増えているからだ.したがって賃金が年とともに上昇するということと,
企業内での競争が激しいということには何の矛盾もない.賃金が年功的に上昇
するということは,力を発揮する人もしない人も,同じように年功的処遇を受
けるということを意味するわけではないのである.

 能力の評価に時間をかけ,短期的な決着を避け,長期的な視野での競争で人
材を選抜していくのが,これまでの日本の人事管理の特質であり,長所であっ
た.それは,短期的に人材を育てるということも,人間の力量を判断すること
も難しいという考えに基づいており,長期的な視点のもとではじめて,個人も
組織全体も,リスクをとりながら新しい創意・工夫に挑戦できる,という見方
から出ている.自己責任の原則のもとで,リスクをとってはじめて利潤を得る
ことができるという自由競争の大原則を考えれば,リスクを回避する傾向を生
むような短期評価のシステムが,もはや経済活動に生気を与えることができな
いのは当然であろう.短期決戦は,一見競争を活発化するかに見えるが,実は
リスクをとろうとする人々の心理を萎縮させてしまう傾向を生む場合が多いの
である.すくなくとも,リスク回避的な人間が,大きな賭けに打って出るとい
うことは起こりにくい。

 このような視界の長短に起因する問題は、人事制度だけではなく、R&D(♯
研究開発)活動にも発生している。この点にも触れておこう。

(2) R&D の外部化

・・・・研究者の世界も例外ではない。早い段階で頭角を現すためには、かなり
短期的な競争で、ある程度の成果を出さなければならない。評価のシステム自
体が短期化しているため、短時間で、あるいは早い段階で自分の能力を示さな
ければならない。その結果、時間のかかる大きな問題に取り組む人々は少なく
なる。誰しもリスクは避けたいと思うからだ。・・・・」

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[89-4-4]◆週間現代5月4日号より:麻生議員発言
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kojihas/reform/04147
記者:「この一年間で,小泉改革の具体的な成果といえるようなものが何かあ
りますか.」

麻生:「東京大学がなくなる.国立大学がすべてなくなることを決めたのがやっ
ぱり大きいでしょうね.国立大学は全部なくなりますから.独立大学法人に変
わる,そして数年後には,できるところから民営化ですよ.・・・・」
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[89-5]個人情報保護法案関係
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[89-5-1]北海道新聞 評論シリーズ「メディア規制3法案を考える」
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[89-5-1-1]No5(4.30): No5(4/30):青野 渉(札幌弁護士会)「本来は、
国や行政機関等が持つ大量の個人情報の漏えい、不当な利用を防ぐねらいで始
まった立法化の論議が、気が付けば民間の情報管理や報道に、強い規制を求め
る内容にすり替えられている。肝心の行政機関に対する規制が抜け落ちている
点に、国の欺まん的な意図を感じる。三法案の速やかな廃案が必要だ。・・・・・
本来国民が望む個人情報保護には全く機能せず、一方で行政に巨大な裁量権を
与え、メディアを含めて民間には厳しい規制を及ぼして国が情報をコントロー
ルするという内容で、あらうる観点からみて欠陥法といえる。・・・」
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[89-5-1-2]No4(4/29):佐久間達哉(法務省人権擁護局調査救済課長)
「人権擁護法案は、差別・虐待等の人権侵害の被害者を簡易・迅速・柔軟に救
済するため、独立行政委員会である人権委員会を担い手とする新たな人権救済
手続を整備することなどを目的としています。・・・この法案は、報道や取材
に新しいルールを設けるものではありません。・・・」
♯(法務省人権擁護局は「人権委員会」事務局に改組の予定。)
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[89-5-1-1-1]人権フォーラム21−人権擁護法案への見解(改訂版)−
「国連パリ原則にもとづく政府から独立した実効性のある国内人権機関にむけ
審議を尽くそう!」2002年 4月8日
http://www.mars.sphere.ne.jp/jhrf21/Campaign/20020408.html
♯(メディア規制3法という呼称は、マスメディアの自己中心性を示している。
人権擁護法案の持つ問題の中の一部に過ぎない「メディア規制」だけを問題に
すれば、そこをクリアすれば良い、ということに成りかねない。)
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[89-5-1-3]No3(4/28):高井 潔司(北大大学院国際広報メディア研究科教授)
「官が法でメディアを規制することは、政府の行き過ぎや政治家の腐敗などを
監視、チェックするメディア本来の機能を大いに損なう。・・・・/元新聞記
者の立場からみると、法案について記者個人の危機感が薄いことが気にかかる。
マスコミは国民の「知る権利」を代行すると称するが、法によって守られては
いない。その意味で取材者の立場は弱い。さらに法で規制を受けることは、今
日、明日の取材に影響する事態なのに、実感が乏しいのではないか。/・・・・」
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[89-5-1-4]No2(4/27):岡村 勲(全国犯罪被害者の会代表幹事)「・・・・/マ
スコミがしっかりしないと、社会がおかしくなる。政界疑獄を暴き出すなど、
民主主義に必要なことは言うまでもない。だからといって、被害者を泣かせる
現状は許されない。/人権擁護法案などメディア規制三法案に対して、マスコ
ミは自主対応が先決と口をそろえる。しかし私は自分で自分の手足は縛れない
と思う。/しかも、自主規制はかえって危うい。マスコミ自らが社会を変な方
向に導くのではないか。昭和天皇崩御時の報道を思い起こしてほしい。/マス
コミの力が強いうちに、政府ときちんとやりとりし、自らを戒める防波堤とし
て法の整備をした方が良いと思う。」
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[89-5-1-5]No1(4/26):鳥越俊太郎(キャスター)「・・・・/私たちの世代は、
まだいい。問題は、今後マスコミに入ってくる若い世代である。個人情報保護
法を前提にモノを考える状況ー私は、それを恐れているのだ。」
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[89-5-2]阪上善秀自民党議員が個人情報保護法を批判し内閣委員が辞任
(住民台帳基本法施行凍結も主張)
Mainichi Interactive 2002-04-27-03:01
 http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20020427k0000m010187000c.html
asahi.com
 http://www.asahi.com/politics/update/0426/015.html
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[89-5-4]日本新聞協会の声明全文

「個人情報保護法案と人権擁護法案について、日本新聞協会は繰り返し「報道
の自由」に十分配慮するよう求めてきた。それにもかかわらず、政府提出の両
法案は、われわれの主張をほとんど無視し、憲法で保障された「表現の自由」
に政府が介入する道を開くものとなっている。

 個人情報保護や人権擁護を名目にして、報道の自由を不当に制約したり、報
道機関を監督する主務大臣を置いたり、取材・報道活動を独立行政委員会の裁
量にゆだねるなど、報道機関の死活にかかわり、断固反対する。

 報道による人権やプライバシー侵害の問題は、報道機関の自主的な対応で解
決を図るべきである。民主主義の根幹をなす国民の「知る権利」はあらゆる機
関から独立したメディアが存在してはじめて保障されるとわれわれは固く信じ
る。」

pressNet 解説:「日本新聞協会理事会が決定した声明は、1987(昭和62)年5
月の朝日新聞阪神支局で起きた同社記者殺傷事件以来15年ぶり。」
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[89-6]意見など
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[89-6-1]豊島耕一「政府が実施を急ぐ独立法人化ーー大学の“独立”は逆に失わ
れる恐れ」「週刊金曜日」2002年4月19日号、45〜47ページ
http://www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/daigaku/UniversityIssues/kinyoubi020419.html
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[89-6-2] 渡邊信久「国立大学法人化による権力介入の可能性に不安」
週間金曜日4月26日号
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[89-6-3]週報読者からの便り

「Date: Tue, 23 Apr 2002 10:02:08 +0900
Subject: 社員は悪くないのです!

ヘンテコな用語”非公務員型”が横行している。そもそも”非公務員”とは何
ぞや?。”移行”とはなんぞや?。

企業倒産!、一旦全員解雇、再雇用とどこが違うのか?。

”非公務員型”とはヘンテコなキャッチフレーズを作るのがダイスキな文部省
の久々の大ヒットなのかもしれない。公務員の非公務員への強制的な移行が解
雇でないなどという屁理屈がまかりとおるはずなどない。Aを非A化する。とい
うことが移行であるはずがない。(このような非論理的な思考ができる官僚、
受け入れる大学教授連を生んだ我が国の教育はヒドイものではある。もっとも
こんな屁理屈を平気で言う文部省が上におればやむを得ない。)

B社が社員を全員、”非B社員型への移行”をして、全員保障の無いパートにし
たとしたら、労働基準局はどう指導するでしょう。移行なんて屁理屈が通りま
すか?

いままで政治的,労働的権利の一部を公僕として制限される換りに、与えられ
ていた保障を権利の執行なしに一方的に解雇(でしょ!)することが、現行の
労働法規、憲法と整合性があろうハズも無い。無論、国家倒産の危機ゆえの処
置ならばありえようが、当然、文部省首脳陣は経営責任取って全員辞職で、い
ままでの退職金も辞退、あるいは返納していただかないと、末端の教員、特に
職員は納得できるものではありませんね。

首切る前にすることないですかな?。せめて”大学は悪くないんです。文部省
が悪いんです。”と号泣するパフォーマンスぐらいできないんですかね。」

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ひ読んで頂きたいもの。
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発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp