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独行法反対首都圏ネットワーク

☆中間報告への意見紹介
.[he-forum 3030] 中間報告への意見紹介 .-

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11月30日のNHKニュース(*1)で「・・・有識者会議はその後、この中間報
告を一般に公開して意見を募集していましたが、これまでに寄せられたおよそ百五十
件の意見の整理がほぼ終了したことから、来月十九日に会合を開き、三か月ぶりに論
議を再開することになりました。」とありました。意見138通を到着順に掲載した
257ページの印刷物が関係者に配付されていますが、もしかすると「意見の整理」
とは、これだけのことに過ぎない可能性があります。この推測が正しいとすれば、募
集した意見を真剣に吟味し参考にする意思があるのか疑わしいように思います。

*1 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net011130-6.htm

(国立大学協会も参考にしてほしい)鋭い意見や重要な指摘や意見も多く、一部の関
係者の書棚で埃を被るだけに終わるのは忍びないものを感じます。書かれた方の承諾
を得られたものを紹介していきたいと思います。

辻下 徹
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以下の意見は具体的な指摘が多く、関係者がぜひ注目してほしいと思う具体的な提案
が多く含まれています。

【国立大学・助手】

2000年5月の国立大学長・大学共同利用機関長等会議において文部大臣(当時)
は、「独立行政法人制度は・・・この制度の目的や・・・国立大学の特性や、
役割、機能に照らして、国立大学についても十分適合する」とし、「今後の国
立大学等の在り方に関する懇談会」の下に調査検討会議を設置し、「国立大学
を独立行政法人化する方向で、法令面での措置や運用面での対応など制度の内
容についての具体的な検討に、速やかに着手したい」と述べた。これが、「国
立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」の設置に際しての文部省の
考え方である。

これとは異なり、私は、独立行政法人は国立大学には全くなじまない制度であ
ると考えている。そもそも独立行政法人制度とは、国家機能を集中し、行政の
効率性を図る目的に合致する制度として生み出されたもので、国家の無謬性を
前提とするものである。だが、国家は無謬ではありえない。いつの時代にあっ
ても、国家や社会に対して独立した立場から警鐘を鳴らしつづけ、また国家的
利害に左右されない価値を創造・継承しつづける社会制度は維持されなければ
ならない。大学制度は、このことに自覚的であった先人たちの叡智の賜物であ
る。大学が果たしてきた役割を、現世代の短絡的志向によって改変することは
許されない。

したがって、出発点において全く異なる前提にたつ調査検討会議の中間報告に
対して、私がコメントすべきことはないともいえるが、この文書が今後の国立
大学政策に適用された場合の影響を考慮して、中間報告に関連する意見・要望
事項を述べることにしたい。

1. 文部科学省およびその調査協力者会議に対する要望事項

(1)調査検討会議は長を決めておらず、最終的な文責者が誰なのかもはっき
りしない。「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が「今後の
国立大学等の在り方に関する懇談会」(以下、「懇談会」と略す)の下に位置
づけられているのなら、今回の中間報告についても、「懇談会」がこれを受理
し、「懇談会」の責任において文書を公表、意見を聴取するのが適正な手続き
である。

「懇談会」は、すみやかに調査検討会議の中間報告に対する審議をおこない、
この文書に対して責任ある評価を下されたい。

(2)調査検討会議は、「組織業務」「目標評価」「人事制度」「財務会計制
度」の4つの委員会において、1年弱の期間、審議をおこなってきたが、審議過
程において浮上してきた検討課題についての「調査」を十分におこなっていな
いきらいがある。

少なくとも以下の諸点については、すみやかに調査し、その結果にもとづいて
今後の審議をおこなわれたい。

・全学的コンセンサスと学長のリーダーシップを調和させる方策を明らかにす
る材料として、法人が設置する大学(私立大学)がとっている具体の運営方法、
工夫と問題点・課題。

・「国立大学法人」が事務組織編成の裁量を拡大することができるかどうかを
判断する材料として、国立大学職員の残業時間、そのうちのいわゆる「サービ
ス残業」の割合。定数外職員の人数、職種、給与・勤務時間等待遇の実態、お
よび、法人化後の大学職員の待遇の変化の見通し。

・大学教員人事のいっそうの流動化を図ることが適切かどうかを判断する材料
として、本務校をもたない大学非常勤講師の平均年収、勤務条件、生活時間に
ついての調査。および、これらに関する教員人事の流動化後の見通し。

・国立大学の授業料を各大学の判断で改定することが適切であるかどうかを判
断する材料として、大学進学者の家計状況(年収、授業料・生活費等の負担額
およびその割合など)、および、諸外国の授業料等、高等教育費に関する家計
負担率とわが国のそれとの比較。



2.中間報告に対する意見

(1)中間報告全般について

○ 2000年5月の国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣(当
時)説明では、国立大学を独立行政法人化する場合、その法制面での措置につ
いては、「(独立行政法人)通則法との間で一定の調整を図ることが不可欠」
だと述べている。しかしながら、中間報告には、通則法との関連が記されてお
らず、「国立大学法人」が独立行政法人の一形態であることや、具体の調整点
が明確でない。中間報告全般わたって、独立行政法人通則法との調整点を明示
的に記述されたい。

(2)基本的な考えかた

○中間報告は、「高等教育や科学技術・学術研究に対する公的支援を拡充する
ことが不可欠」とも述べている。正当な主張であり評価できるが、数値目標等
についての具体的な記述がないことから、絵に描いた餅に終わる可能性がある。
中間報告「VI 関連するその他の課題」に数値目標、政府の努力義務等につい
て項目を起こし、関連機関に対してすみやかに検討することをうながされたい。

(3)組織業務

○「学長は、法人化された大学の最終責任者として、法人を代表するとともに、
学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮し、最
終的な意思決定を行う」とあるが、大学の規模、形態、分野等によっては、学
長と法人の長は分離することが適切な場合もあると考える。これについては、
一律に大学が自主的に選択することができる制度とされたい。

○関連して、運営組織の形態についてもすべての国立大学を一律にすることは
適切でない。中間報告に示されているA〜C案程度の幅をもたせたいくつかの制
度を例示するにとどめ、各大学が自主的に運営組織を編成できるような法人制
度とされたい。

○いわゆる「学外者」について、その性格が明瞭でない。「有識者」「専門家」
のそれぞれについて、その性格と期待される資質を具体的に例示されたい。な
お、大学は非政府・非営利組織であり、NGO、NPO等の運営形態に学ぶことが特
に重要であると思われることから、「有識者」「専門家」には、これらの組織
の指導者、職員を積極的に登用する旨、明記されたい。

○現在実施されている国家公務員の定数削減と法人化後の定数管理との関係に
ついて明記された

(4)目標評価

○グランドデザインの用語は耳慣れない。グランドデザインと政策目標の区分、主従関係などを明
記されたい。

○国際化、地方分権化といわれる社会において、グランドデザインの主たる策
定主体が国であるとする発想は時代遅れとなりつつある。「国のグランドデザ
イン」は、国際的な高等教育のグランドデザイン、地方分権的な高等教育のグ
ランドデザイン等と並存するグランドデザインの1つであり、それらの調和が
必要である旨明記されたい。

○中間報告が第3者評価機関と呼ぶ大学評価・学位授与機構は、政府直営の組
織であり、研究・教育に関する評価機関としてはふさわしくない。研究・教育
については、大学基準協会等、ボランタリーな組織による評価を信頼し、活用
するとともに、これらの発展のために適切な公財政負担が措置されるよう明記
されたい。

○中間報告によれば、国立大学評価委員会は、研究・教育に関する評価を自ら
おこなわず、第3者機関にいわば「丸投げ」することになる。このような適正
を欠く機関を設置する必要はない。独立行政法人評価委員会が法人に対する評
価をおこない、研究教育に関する評価は第3者機関がおこなうよう、記述を改
められたい。

(5)人事制度

○法人化後の教職員の身分については、公務員型・非公務員型のいずれであっ
ても、教育公務員特例法の原理によるべきことを明記されたい。

○原案段階で使われていた表現を復活させ、学長は「知の代表者」であること
を明記されたい。「知の代表者」には「経営マインド」が期待できないのだと
すれば、それぞれの機能は別の人格が担うような制度とすればよい。

○本職が別にある者のプロジェクト的任用以外の任期制は、大学教員の身分制
度を著しく不安定にするものであり、導入すべきでない。むしろ、現在、不安
定な身分におかれている本務校をもたない非常勤職員の待遇改善や、ポスドク
の地位にある者の将来不安を解消することに力点を置いた記述とすべきである。

(6)財務会計制度

○中間報告の記述は、中期計画を尊重した予算措置をするという姿勢が弱く、国
の政策次第でいくらでも中期計画が修正可能と読まれかねない。これでは、中
期目標・計画を設定すること自体が意味をなさず、国立大学の独立行政法人化
自体が無意味とさえいえる。中期期間中は運営資金の安定的確保が必要であり、
安易な中期計画の変更はできないことを、独立行政法人通則法もふまえて、明
記されたい。

○国は、国立大学の研究・教育の基幹を支える部分である「標準的運営費交付
金」を安定的に支給し、大学が外部資金の獲得に奔走しなくても運営できるよ
う努力しなければならない旨、明記されたい。その際、「標準的運営費交付金」
の算定基準は、1999年度の教官当積算校費・学生当積算校費を下回ることのな
いよう明示されたい。

○「特定運営費交付金」の名称はあいまいであり、不適切である。これを「政
策的運営費交付金」と適切に改め、その性格を明確にされたい。

○地方財政再建促進特別措置法は、国と地方自治体との間に圧倒的な財政力の
格差があることを背景に制定された法律であり、今なお、この事情は変わって
いない。地方自治体が地域の国立大学に寄付等をおこなう前提として、国から
地方への財源委譲が必要であり、その具体的計画を早急に審議することを、中
間報告「VII. 関連するその他の課題」に項目を起こして明記されたい。

(7)関連するその他の課題

○「国としての長期的な高等教育・学術研究政策やグランドデザインの策定」
について、これが課題とされたのは、国のこれまでの長期的政策等の内容や策
定にかかわる手続きの限界がはっきりしてきたためであると思われる。したがっ
て、国は、これらの策定に際して、従来とは抜本的に異なる人選・手続き等を
とるべきことを明記されたい。具体的には、日本学術会議および国公私の大学
団体推薦委員、非政府組織代表などが過半数を占める審議会を設置し、政府か
らは独立した立場からの高等教育グランドデザインの策定が図られるべきであ
る。
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http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/doc/pcomments/1.html
に掲載予定