独行法反対首都圏ネットワーク


緊急レポート “こんなはずではなかった”:独法化された元国立試験研究機関の状況
2001.4.19 首都圏ネット事務局

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独行法反対首都圏ネット事務局です。

 この4月から独立行政法人に移行した機関の実態については、かなり明らかにされてきています。
 先日、首都圏ネットで紹介した「外務省から,独立行政法人は政府機関ではなくなるため,政府間の約束である科学技術協定に基づく海外研究機関との各種取り決めは終了するよう指導が出されたのである(首都圏ネットワークホームページ
<http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010417gaimusyou.html> 参照)」に関連して、下記の「緊急レポート」を執筆してもらいましたので、紹介いたします。

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緊急レポート
こんなはずではなかった”:独法化された元国立試験研究機関の状況


 この4月1日から独立行政法人化された元国立研究機関では,こんなはずではなかったというようなことが多数生じている.
 元通産省工業技術院傘下の研究機関では,15の独立した研究所が1つの産業技術総合研究所という3000名規模の巨大な研究機関に統合された.その中の一つであった地質調査所では,約240名の研究者が国土の基盤情報である地質の調査や地震火山などの防災に関する研究等を行ってきた.しかし,組織改編の結果,そのような組織はより小規模な複数の研究ユニットに分断され,国のミッションとして行ってきた調査研究を今後どのように組織的に取り組むか,執行部自体が早くも懸念を表明している(朝日新聞3月31日付夕刊).
 また,独立行政法人化した研究機関の名称として,国立○×研究所と名乗ることや,正式名称ではなくてもNational Institute of xxx のような英語名称を名乗る場合は多い.しかし,この”国立”や”National Institute”が対外的には何の実体も保証されていないことが明らかになった.外務省から,独立行政法人は政府機関ではなくなるため,政府間の約束である科学技術協定に基づく海外研究機関との各種取り決めは終了するよう指導が出されたのである(首都圏ネットワークホームページ http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010417gaimusyou.html 参照).これにより,政府間協議をベースとした研究協力を独立行政法人で行うことは困難になり,研究現場からは強い不満があがっている.非常に単純に言えば,現時点で,独立行政法人は,対外的には利潤を追求する私企業と大差ない状況に置かれているのである.これで学問的な国際活動が発展可能とは到底言えないことは明らかである.

 さらに,賃金の問題も深刻である.費目管理がなくなるとは言え,人件費と他の運営費は厳格に区別されている.この点に関して特殊法人ではあるが核燃料サイクル事業団で運営費の人件費への流用が最近問題になったことは記憶に新しい.現時点で人件費のと,平均的な職員の給与水準は下がらざるをえない.さらに,多くの独法では給与の高い理事(年収2000万円以上と言われている)を多数抱えることになるが,内部出身者よりは主務官庁や財務省などからの天下りをはじめ外部から加わった人の方が多い.
実際に元の国立研究所で指定職相当で新たな独法で理事にならない者は,独法化に伴って本俸が大幅に低下するために一旦退職し,新たに雇用されるという事態も生じている.一時的な給与の補填が組合の運動などで一部実現しつつあるが,将来的に平均的な給与水準の低下や格差拡大などに直面する可能性は高い.
 ”国立機関”ではなくなることの身近な影響は環境衛生関係にもっとも端的にあらわれている.つまり,今までは人事院規則で規制されていたものが,民間と同じく労働安全衛生法などに基づくようになる.これは関連する職員の処分や事業所の営業停止などの罰則規定が伴われることもあり,多くの独法では,安全管理システムの構築や責任者担当者の資格獲得,規定に合わせた新たな使節設備の構築などに膨大な予算と労力をさいている.職場の安全管理を徹底させること自体は当然のことであるが,夜間の実験などに許可が必要になるなど研究所の実体にそぐわない点も多く,このままでは研究活動に支障が生じる恐れもある.
 多くの独法では,3年以上かけて独法化への準備を進めてきた.特に先に述べた安全管理や財産管理,経理,給与,厚生などなど,事務方は膨大な作業を行ってきたし,現在も多くの職員が残業を重ねて移行作業にあたっている.そのような膨大な労力の集積と実現した独法とのギャップはうめがたいものがあると言わざるをえない.また,”公務員身分”であるとか,”国立に準ずる”というようなことは,本質を覆い隠すための言い訳に過ぎないことが次第に明らかになりつつあるのである.



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