独行法反対首都圏ネットワーク |
独法化された旧国研、継続中の国際協力実施取決めが失効.
新たに締結しても「私法上の契約」.(外務省が各国に通知)
2001.3.17首都圏ネット事務局
以下の文書は、2001年3月28日外務省国際科学協力室から各省の国際協力関係担当に、各国駐在の日本大使館宛に送る予定の「独法化についての各国政府に通知する電信案」を予め示したものです(最終文書は入手していませんが、本質的な相違はないと思われます)。国研(国立試験研究機関)を強引に独法化させたために、旧国研が諸外国と締結している科学技術協力協定に基づく実施取決めが失効するという事態に直面し、そのことを相手国へ通知する必要が生じたからです。以下の文書にあるとおり、主務省庁が作成主体となっていないものは、実施取決めは「終了」=失効となり、新たに締結しても、それは「私法上の契約」となると明記されています。制度設計と適用対象を間違えた独行法の強行が必然的に生み出した困難と混乱と見るべきでしょう。こんなことをやっていて「国際化時代に対応する」を語るなど、噴飯物です。各国研における担当者は年度末から年度初めにかけて相手国に出向き、大変な苦労をされているようです。具体的なことは追って報告します。
【外務省国際協力室01.3.28文書「独法化についての各国政府に通知する電信案」】
1.我が国では省庁再編の一環として、4月1日をもって一部政府機関の独立行政法人(Independent Administrarive
Institutions(IAI))(以下「独法」という。)への移行が行われる予定である.本件独法化に伴い、我が国が貴任国と締結した科学技術協力協定等の関係で(1)の問題が生じるところ、今般下記(2)のとおりの整理を行なうこととした。ついては、下記2.を貴任国のしかるべき政府機関に伝達の上、結果4月10日までに回電ありたい。
(1)我が国と諸外国との間には、科学技術協力協定及び取極(23ケ国と締結、37ケ国と有効)、日米エネルギー等研究開発協力協定、日露宇宙協力協定並びに環境保護協力協定(米、露、韓、中、独と締結)といった科学技術、宇宙又は環境の分野における協力について定めた国際約束(いずれも行政取極)(以下「科技協定等」という。)が存在する。これらの科技協定等の多くには、「この協定に基づく特定のの協力活動の細目及び手続を定める実施取極は、両国政府又は両政府の機関のいずれか適当なものを当事者として行うことができる」といった規定があり(右規定を置く国際約束一覧:略)、この規定に基づき、これまで国立試験研究機関を含む政府機関が実施取決めを行ってきている。
他方、4月には相当教の国立試験研究機関等が独法となり、政府機関としての地位を持たなくなることになっているところ、これらの機関が・実施取決めの作成主体となっている場合、及び・主務省庁が作成主体となっている実施取決め上の協力活動を実質的に担っている場合、の当該実施取決めの扱いが問題となる(改定に移行する現行国立試験研究機関等及び新規ニ立行政法人:略)。
(2)上記(1)を踏まえ、我が方としては、以下のとおりの整理を行うこととした。
●上記(1)の・のケースについては、当該政府機関は独法化以降は政府機関たる地位を失うので、科技協定等上、政府機関を当事者とすることを前提としていている当該実施取決めはその存在の基盤を失い、終了することとなる。その上で、必要な場合には、当該独法と相手方との間で、両者の間の協力活動に関する文書を改めて作成することとなるが、その文書は科技協定等上の実施取決めには該当しないことになる(私法上の契約と整理される)。
● 上記(1)の・のケースについては、もしその独法により主務省庁が当該実施取決め上の義務を果たすことが出来なくなるのであれば、当該実施取決めを相手国との間で終了させた上で、必要であれば、上記(1)の・のケースと同様、当該独法と相手方との間での文書を作成することが適当である。他方、当該政府機関の独法化以降も、主務省庁自身により実施取決め上の義務を果たすことができる場合や、主務省庁の当該独法に対する監督権限ないし契約関係等により当該独法を通じた実施取決め上の義務の遂行を主務省庁として確保することができるような場合には、当該実施取決めを存続させることは可能であると考えられる。
● 独法はもはや政府機関ではなく、また、その活動が科技協定等に従って行われことを政府として担保することができないことから、独法が行う協力活動は科技協定等に基づく活動(activities
under the Agreement)と言うことはできない。他方、独法がその相手方との間で行う協力活動が両国の政策問題に関連する重要なものである場合には、科技協定等に通常規定されている「科学技術政策問題に関する情報及び意見を交換すること」といった政府間合同委員会等の機能に関する規定等に基づき、合同委員会等における政策的協議の対象としたり、必要に応じ独法からオブザーバー等の形で合同委員会に出席すること等は、引き続き認め、独法が行なう協力活動についても、極力科技協定等の政策的枠組みの中に入れ、政府間協力の継続性を実体面で確保していく。
2.貴任国への伝達事項
下記(1)〜(3)を貴任国政府のしかるべき政府機関に通知ありたい。
(1)国立試験研究機関等の独法化
4月1日をもって園立試験研究機関等の我が国政府機関の一部が、新たに設けられる制度である独法に移行する。
(2)独法の今後の取扱い
(イ) 独法はもはや政府機関ではなく、政府と異なる独立の法人格を有する機関(each IAI has its own independent
judicial personality)であり、また、その活動が科技協定等に従って行われることを政府として担保することができないことから、独法が行う協力活動は科技協定等に基づく活動(activities
under the Agreement)として扱うことはできない。
(ロ)他方、独法が行う協力活動が両国の政策問題に関連する重要なものである場合は、合同委員会等における政策的協議において取り上げることや必要に応じ独法職員がオブザーバー等の形で合同委員会に出席することを認めることにより科学技術協力協定等の政策的枠組みの中に入れることが適当であると考えられる。独法が行う協力活動のいずれを科学技術協力協定等の政策的枠組みの中に入れるのかについてはケース・バイ・ケースで判断する必要があるが、独法が以下のような点で政府と密接な関係を有していることから、独法化する予定の政府機関が現在行っている協力活動は原則として科学技術協力協定等の政策的枠組みの中に入れることが適当であると考える。これによって、これまでの政府間協力の継続性は実体面で確保されることとなる。
(中略)
(3)実施取決め(implementing arrangement)の取扱い
(イ)これまで我が国政府機関が貴国機関と行った実施取決めについては、独法が政府機関ではないことから、下記の整理を行わざるを得ない.
(i)独法化される政府機関が実施取決めの締結主体となっている場合こついては、当該政府機関は独法化以降は政府機関たる地位を失うので、政府機関を当事者とすることを前提としている当該実施取決めはその存在の基盤を失い、終了する。
(ii)独法化される政府機関が実施実施取決めの締結主体になっていなくとも、主務省庁が締結主体となっている実施取決め上の協力活動を実質的に担っている場合については、もしその独法化により主務省庁が当該実施取決め上の義務を果たすことができなくなるのであれば、当該実施取決めは終了させる。
(ロ)我が方にて貴国との間で行った実施取決めを調査の上、上記(イ)(i) (ii)に該当するものについては、実施取決めを終了せしめる、あるいは主務省庁が当該協力活動の継続を必要とする場合には、私契約等しかるべき措置により当該独法が貴国側当事者との聞で継続できるよう、各実施取まめを行った我が方当事者から貴国側当事者に個別に通知の上、必要な調整を行うよう指示している。
(以下、略)