4.20学内シンポジウム『大学評価と予算配分』へ参加を
独行法情報速報 No.3 特集:大学財政問題概説
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独行法情報速報 No.3 特集:大学財政問題概説
2001.4.6 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
4.20学内シンポジウム『大学評価と予算配分』へ参加を
2000年12月、学内評価検討委員会は、「検討結果報告書」を提出した。そこでは、「大学全体の観点」から「部局の状況について共通の基準」で学内評価をおこなうことが、提案され、さらに「評価結果」を公開し「学長裁量経費の配分等に際しても学長の裁量の根拠とすることが可能」となるとしている。こうして本年2月、学内評価委員会が発足したが、この委員会は委員会規程も制定せずに委員のみ選定したものであったとの指摘(本速報第2号参照)を受けて、現在、規程問題も含めて第一歩からの議論が開始されたと伝えられている。しかし、そもそも設置の理念を異にする部局を、どこまで「共通の基準」で評価することが可能なのだろうか。可能とする方法はどんなものか。目を全国に転じてみると、評価に関する基礎的検討を欠落させたまま、評価を大学予算の分配に連動する動きが急である。今年度の教育研究基盤校費「大学分」の何%を競争的資金配分に回すかという議論が少なくない大学で議論され、あるいは先走り的に導入率を決定していると伝えられている。そもそも、評価方法が定まらないうちに資金配分に連動させることは、評価の基礎となる自己評価のありかたに歪みをもたらさないか。さらに、今年度の大学予算配分がどのようなものになるかも不明の時点で、競争的資金配分の導入が可能か判断できるのか。少し考えただけで、このように疑問がつぎつぎに浮かんでくる。こうした動向に流されず東大と京大が、2001年度予算配分においても従来通り競争的配分を導入しない、とする方針を持っていることは(本号3ページ【開示2】参照)、当然である。
大学評価の問題・予算配分方法の問題のあり方については、国大協で行われた検討や全国的な状況もふまえて、原理的なところから確認し、全学的な合意の形成がはかられるべきである。こうしたあるべき検討作業に資するため、当センターは、以下の内容での学内シンポジウムの開催を計画した。部局長、評議員諸氏をはじめ多くの方々が参加くださるようお願いしたい。
日時 4月20日(金) 午後5時〜7時
場所 総合校舎A号館2階大会議室
プログラム
報告1:大学評価問題をめぐる現状と評価方法の課題―国大協第8常置委員会の提言を中心に
報告2:国立大学予算制度の改編と大学財務の実状―競争的資金配分は可能か、また
望ましいのか
自由討論
自由討論
【開示1】千葉大学将来計画検討委員会 財務会計WG中間報告
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概説:大学財政問題
I.独行法の財政制度
(1) 通則法46条:政府は、予算の範囲内において、独立行政法人に対し、その業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することができる。
(2) 独立行政法人会計基準:原則として企業会計原則(通則法37条)。「公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算制を前提としない等の独立行政法人の特殊性を考慮して必要な修正を加える」(中央省庁等改革の推進に関する方針)
(3) 国の財政措置:運営費交付金(「渡し切りの交付金」)と施設費補助金(施設費等に係る経費)
【分析1】岡本義朗「独立行政法人の業務運営及び財務会計制度に関する理論的考察」本来独立行政法人の会計は企業の会計とは異なる原理に支配されねばならず、企業会計原則をベースにするものであってはならないということになろう。....この条文(通則法37条)はある意味で過渡的な性格を有するものであって、今後公企業会計分野における理論や実務が充分に発展したと判断しうる時点においては、本条は「独立行政法人の会計は、主務省令で定めるところにより、原則として公企業会計原則によるものとする。」と修正されることが考えられるのかも知れない。
【分析2】宮脇 淳「独立行政法人化の実態と課題」
独法に移行したあと、第1期の中期計画期間内は、資産を除いて現在の国立大学の姿とほとんど同じだが、問題は第1期、第2期の中期計画が終わるときである。中期計画の終わるときに厳しい評価を受けるので、独法に移行して5年後、10年後には大きくさまがわりする。5年後、10年後に向けて体力をつけておく必要がある。
独法の予算は運営費交付金と施設費である。施設費は事実上の補助金であり、補助金適正化法の適用を受けて、同法の規制対象になる。運営費交付金は本当に自由に使えるかどうかが問題である。自由に使えるためには、財務省との関係をかなりかえなければならない。また独法大学の収入が増えると運営費交付金が少なくなる。さらには、運営費交付金を各大学内でどのように配分するのかも大きな問題だ。
大学への評価は3つに分かれる。@管理費関係の評価、A研究に関する評価、B教育に関する評価であり、この全体が大学に対する評価になる。(
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1696.htm)
【分析3】岡田知弘・二宮渥美「独立行政法人化で大学の自主性は高まるか」さらに、問題なのは、運営費交付金と大学の独自財源との関係である.独立行政法人の会計制度によると、大学側が外部資金や授業料・附属病院収入等を増大して独自財源を拡充した場合、それに応じて運営膏交付金は減額する関係にある。これはあたかも、地方自治体における「地方税=独自財源」と「交付税=依存財源」との関係と酷似している.そこでは、大学間で競争的資金を奪い合う競争が進行すれはするほど、国庫から交付される交付金は少なくてすむことになって、独法化手法による行政改草の目的である行政コストの削減が実現されることになるだろう.(『経済』2000年11月号)
II.現行の大学予算制度:当積算校費から教育研究基盤校費へ
(1)当積算校費制度:1999年度(H11)までは、講座制・修士講座制・学科目制の分類をさらに実験・臨床・非実験に区分して教官当積算単価が、文科・理科・医科・教育に区分して学生当積算単価が設定され、これらにそれぞれの員数をかけて、それぞれの大学の総予算が決定されていた。この総予算を一つの大きなドンブリとして、本部事務経費をはじめとする様々な必要経費が差し引かれる仕組であった。
(2)2000年度(H12)からは、教官当単価が修士講座非実験系、学生当単価が文科系に統一された。これに伴って、当校費としての「員数分」はおよそ1/3に圧縮され、残り2/3が「大学分」として大学での“自由裁量に委ねる”ことになった。両者を加算したものが、教育研究基盤校費と呼ばれる。
(3)国家予算制度のなかで、「校費」は「目(もく)」というカテゴリーの中にあ
る。「目」は国会承認事項ではなく、各省内で決定される。ここに、各大学に対する文部科学省の財政的コントロールを可能とする制度的根拠がある。すなわち、「大学分」の配分権は完全に文部科学省にある。なお、この情報公開法の時代にあっても、驚くべきことに、各大学への校費配分の決算額が公表されているのは1991年までである。
III. 強まる「評価に基づく競争的資金配分」の圧力
「競争と評価を通じて適切な資源配分が行われることが肝要であり、それに必要なシステムや環境を整備する必要がある。他方、財政状況は極めて厳しく、今後とも、資源の重点的・効率的配分がより強く求められるものと考えられる。」(1999年学術審議会)
2000年度においては上記「大学分」と「員数分」が合算されて、前年度までの当校費にほぼ相当する額が支給された。今年度以降はこの「大学分」の配分方法に2つのルートから「競争的資金配分」導入の手がつけられようとしている。一つは学内配分であるが、もう一つ重要なことは各大学への配分方法そのものが従来の員数から、「大学評価・学位授与機構」による評価とリンクすることである。そして、これらは、独法化の財政的準備といって過言ではない。
【提言】
「競争的資金配分」に関する何ら本質的議論もすることなく、各大学が「*%の競争的資金導入」へと先を競って走り始めている。声高に“競争的環境が発展を促す”と御為ごかしに叫ばれてはいるが、「競争的資金配分」の切迫した動因は上記99学審答申にはっきり書かれているように、破滅的な財政状況なのである。つまり、端的に言って、「競争的資金配分」とは、いくつかの研究教育分野・活動、大学を切り捨てる(=破滅させる)ことの準備作業なのではないだろうか。一体、破滅の連鎖によって、日本を覆うこの事態が転換できるのか。この連鎖に抗い、真の対案を提示することが、理性であり、科学なのではないか。そこで、緊急に次の3点を提起したい。
1.独行法会計基準は、【分析1】にもあるように、また【開示1】にある財務会計WG中間報告においても「他の独法機関とは異なる固有の会計原則の作成」が提言されているように、合理性を欠く、欠陥品である。この事実からだけでも、通則法による独法化を明確に拒否することが必要である。
2.何よりも財政分析が必要である。一体、現在の教育研究活動を進めるのはどれだけの予算が必要なのか。ドンブリ勘定的な積算校費制度が事実上解体された以上、この作業を、各学科、各部局、千葉大学全体で行なわなければならない。そして、「競争的資金配分」にもし意義があるとすればいかなる基盤的経費の支給の上に構想されるべきなのか、を厳密に検討することが求められている。それをスキップして、他大学でも**%導入するからだとか、圧力回避のタクティクスだという理由で、対処すべき課題ではない。
3.「学問の自由を制度的に体現したものが大学の自治であるとすれば、それを経済的に保障するのが、大学財政である」(前掲、岡田論文)。この見地から現在の大学財政制度の問題を根本的洗い直し、あるべき財政を提示する必要がある。今日の困難の背景の一つには、こうした作業に真摯に取り組まず、「GDP1%」だとか「欧米並の高等教育予算」というスローガンしか提起できなかった大学側の怠慢さがあることも自覚しなければなるまい。日本の破滅的状況を打開するためにも、事態を科学的に分析する学問的自由が必要であり、その学問の自由の経済的保障=大学財政はどうあるべきか、このことを提言する作業にとりくまねばならない。
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【開示2】東大財務企画委員会=2001.3.19(抜粋)
1. 平成13年度予算配分に関する事項について
(1) 平成11年度予算積算基準に基づく校費配分方式を踏襲する
・ 平成11年度教官当・学生当積算校費の単価で従来通り積算する。
・部局への配分は従来通りとする。
(2)文部省積算額と東京大学積算額のとの差額については、別途財源を確保。
【独法化をめぐる動向】東大5条件について
1.「5条件」の第1項が「東京大学の法人化を定める法律は・・・『独立行政法人通則法』とは異なるものでなければならない」と明確に通則法を退け、それとは異なる法律を追求している点は重要である。
2.第2項で総長を「教授等教育研究に責任を負う構成員の選挙によって選ぶ」と言明し、評議会についても「最高の意思決定機関」として位置づけている点は、大学自治を基本とした従来の慣行を守る姿勢を示したと言える。
3.さらに第3項では、なお曖昧な点を含むものの、「長期的展望に立って本学の目指すべき理念および目標を定めた東京大学憲章を制定し、これに立脚して中期的な活動の目標および計画(5年ないし8年)を策定するものとする。東京大学の活動に関する評価は、この目標および計画の達成度に即して行われなければならない」として、文部科学省との協議なく、自ら活動目標と計画を決めることとしている。
4.第4項では、「設置者である国によって中長期的な安定的財政基盤が保障されなければならない」と積極的に主張している点も評価できる。ただし、「競争的研究資金の充実・拡大が図られるべき」というのは議論の残る点である。競争的資金の充実が、自動的に「教育研究の高度化を促す」ことにはならない。競争的資金の活用は、あくまで、基盤的経費の平等な保障を前提とした上でこそ有効となるであろう。
5.教職員の身分に関わる第5項は、教員については「教育公務員特例法の仕組みを引続き維持する」としている点は評価できる。それは、教員の研究教育の自由を保障するうえで、不可欠の仕組みであるからである。職員については、「東京大学の活力を維持するに相応しい人事システムの構築が必要」と言うに止まり、その内容は示されていない。また、国家公務員身分をどう考えるのかについての記述も無い。
法人化不可避との観測が支配的である現在、東京大学が、大学自治にとって原則的な点を踏まえて「5条件」をまとめ、公表したことについては積極的に評価できよう。
また、この5条件は、国大協の長尾試案や文部科学省の調査検討会議の動向に対する批判的立場を表明したものと見ることができる。現在は、各大学でこうした「最小限綱領」についての議論を行うことが重要な意味を持つと言えよう。
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