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独行法情報速報  No.2    特集:評価委員会問題

独行法情報速報  No.2    特集:評価委員会問題
2001.3.9 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
【開示1】
独行法情報分析センターは2001年2月24日以下のような質問状を学内評価委員全員に送りました。
(冒頭部 略)
これまで学内の委員会は委員会規則を承認したうえで、発足するのが通常でした。しかしながら、2月評議会では、学内評価委員会に関する規則は定められなかったとうかがっています。これは、極めて異常なことのように見受けられます。委員各位はいかなる基準と運営方針に基づいてその活動を実施されるお考えでしょうか。また、既に存在する正規の機関である千葉大学自己点検・評価委員会との関係も私達には全くわかりません。そこで、以下の諸点について、お知らせ下さい。
1. 貴殿が新たに構成される学内評価委員会の、(1)設置者、(2)目的、(3)活動内容(評価内容と評価対象)、(4)組織、(5)権限、(6)任期、(7)被評価者(組織ならびに個人)との関係、を具体的にお示し下さい。また、これらの項目の内容は、どの機関によって承認を受けるのかということも、併せて御提示下さい。
2. 『学内評価検討委員会報告』では学内評価委員会を「学長補佐機関として位置づける」とありますが、ここにいう「学長補佐機関」とはどのような内実を指しておられるのですか、わかりやすく御説明下さい。
3. 千葉大学には、既に『千葉大学自己点検・評価に関する要綱』(1992.2.20制定、1999.4.1最終改正)に基づく千葉大学自己点検・評価委員会があります。この千葉大学自己点検・評価委員会と、貴殿が新たに構成される学内評価委員会とはどのような関係となるのでしょうか。『千葉大学自己点検・評価に関する要綱』で明示されている各項目と対比させながら、具体的にお示し下さい。
もし、上記の事柄について、まだ、お決めになっておられないのであれば、いつまでに、どのようにして決定されるのか、ということをお示し下さい。
なお、冒頭にも述べましたように評価問題は学内で高い関心がございますので、御回答は私達の情報誌「独行法情報速報」No.2に掲載させて頂くつもりです。
(以下略)

【開示2】
上記の質問状に対して、3月2日、同委員会山口委員長より以下の回答がありました。

平成13年3月2日 学内評価委員会委員長 山 口  正 恆評価委員会委員宛への質問状に対する回答

平成13年2月24日付けでいただきました学内評価委員会委員宛へのご質問に関しまして、以下のように回答申し上げます。
なお、本回答は委員長名でお送りしていますが、内容からもご推察いただけますように、前回評議会以降、委員長選出のための委員会が開催されたのみであり、現段階では実質的検討は行われていないことを申し添えます。
学内評価委員会は、学内評価検討委員会を受けて設置が決まったものであるが、その活動などの詳細については、検討委員会の提案を十分に吟味することが必要であるという観点から、あえて形式的な委員会規程を制定することに先立って内容的検討をつめるために、評議会の了承のもとに先ず、委員を選出して検討を加えることとしたものと考えている。
今後、委員会として検討を加えて、その結果を委員会規程とそれにともなう内規あるいは実施要項などとして評議会の審議を経るものと想定している。ご指摘のように重要な事項であり、速やかに、細部まで十分な検討を重ねる必要があることは言うまでもない。  以上


【分析】

学内評価委員会より速やかに回答があったことは、学内における民主的意思形成にとって大変意義あることであり、山口委員長の労を多としたい。しかしながら、回答には以下のような重大な問題が含まれていることを率直に指摘せざるを得ない。
1.「学内評価検討委員会を受けて設置が決まった」学内評価委員会が、「検討委員会の提案を十分に吟味することが必要である」というのは、本来、論理的におかしい。回答は、12月評議会で承認された検討委員会報告そのものがまだ十分吟味しなければならない水準であることを指摘していることになるが、そうだとすれば、その吟味は評議会がなすべきことではないか。学内評価検討委員会の委員長でもあった山口学内評価委員会委員長が、評価検討委員会提案が不十分だと言われるのであれば、評議会で再審議し、提案の 承認を受けた上で学内評価委員会を発足させるべきではないか。
2.委員会規程を「形式的」としてしまい、その制定を「あえて」先送りするというのは、委員会の組織・運営において極めて危険である。規程なしの状態でどうやって「検討委員会の提案を十分に吟味する」ことができるのであろうか。
3.質問の第2、第3項は、学内評価委員会の性格・機能などに関して非常に重要なものであるにもかかわらず、全く回答されていない。
以上、回答を通じて明らかになったことは
1.今回の学内評価委員会は、“設置された組織が、その根拠となった決定内容を吟味する”という論理的混乱の上に出発している。規程未制定、既存機関との関係性不明ということは、学内評価委員会の設置そのものの正当性・妥当性に関する疑念を発生させる。
2.現段階における学内評価委員会は、実質的には、12月評議会で承認された学内評価検討委員会報告を再吟味する評議会下におけるある種のワーキンググループとみなされよう。また、委員会規程のない以上、他機関に対していかなる拘束力も持っていないと解される。という不正常な事態である。


【提言】

 評価は、評価組織と被評価者(組織、個人)との間に深い信頼関係があって初めて意味あるものとなることは論を俟たない。国大協第8常置委員会の文書「大学評価についての基本的留意点」の第3項(本号「開示3」に掲載)が参照されるべきである。不幸なことに、今回の評価委員会設置経過はそうした信頼関係醸成にとってマイナス要因となる恐れがある。事態を正常化するために、本速報No.1の提言(重要なので、この提言の末尾に再掲しておく)に加えて、以下の提言を行なう。
1.評議会は、12月評議会で承認された学内評価検討委員会報告を再吟味し、今後の学内評価のあり方についての提案を全学に提示する。その際、評価委員会は千葉大学自己点検・評価委員会の改組によって行なうのか、それとも別組織なのか、理由も含めて明らかにする。
2.上記の提案に関する全学的な討議(公聴会、公開討論会、部局教授会など)を経て、予定される評価組織と被評価者の信頼関係をつくりあげ、その上で、学内評価問題についての方針を評議会で正式に決定し、取り組みを開始する。


【No.1提言の再掲】

1.評価委員会は学長の補佐機関とせず、学内の諸機関から独立した組織とする。独立性を保持するために、組織の在り方について全面的な再検討を行う。
2.「評価を真に意味あるものとするためは、評価組織と評価対象との関係がどうあるべきか」ということについての原理的検討が必要である。
3.評価問題と予算配分問題を明確に分離する。
4.評価を繰り返してもそれ自体では教育研究の本務が前進する訳ではない。そればかりか、近年の相次ぐ各種評価のために、本務が滞る事態さえ見受けられる。いわゆる「評価疲れ」である。大学評価・学位授与機構の評価が開始された今日、学内評価作業は、この間の各種評価がどのような効果をもたらしたのかということを、そのネガティブな面も含めて分析することがまず必要となろう。
【開示3】国大協第8常置委員会「大学評価についての基本的留意点」
(全文は、http://res-info.nagoya-u.ac.jp/kokudai/ryuuiten.PDF)の第3項は以下のとおり。
3.「権限と責任に基づくメカニズムやプロセスが見えないところに評価はない」
 誰がどのような権限と責任で評価をするのか明らかになっていないところやあるいは評価の仕組みや流れが明確になっていない場合は,公表された評価の結果に信用と信頼が得られない。信用と信頼のない評価結果は意味がないことに留意したい。
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【独法化をめぐる動向】
・国立大学の独立行政法人化をめぐる情勢は緊迫の度を増している。文部科学省の調査検討会議は当初7月に予定されていた中間報告のまとめを、4〜5月の連休前後にも出そうとしている。調査検討会議の4委員会には、それぞれ4名程度の作業グループが作られ、取りまとめ作業を急いでおり、その内容の一部はすでに報道されている。
・ 調査検討会議の組織業務委員会は、2月28日、学長を中心とする執行機関(役員組織)と重要案件を審議する議決機関(評議会)とに大学組織を区別し、トップダウンの意思決定を容認する試案を示した(『日本経済新聞』2001年3月1日付)。また、役員は大学外からも選考されるという。この文部科学省の方針は、大学を国策遂行のミッション機関に変えようとする極めて重大な問題を含むものである。内容の詳細は
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-soshiki.htm#l08を参照されたい。
・ これに対して、長尾真京大総長を委員長とする国大協の設置形態検討特別委員会は、2月7日付で「国立大学法人の枠組についての試案」(いわゆる「長尾試案」)を全国の国立大学に発送した。これは2月22日の国大協第一常置委員会においても報告されている。この内容は次を参照。
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nagaosian.html
・ 一方、東京大学は、2月20日の評議会において、「東京大学が法人格をもつとした場合に満たされるべき基本的な条件」として、5つの条件を承認した。この5条件は東京大学の公式ウェブページに掲載されている。
http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/soumu/soumu/01.2.20.html
・ これらの急速な動きは、国立大学の独立行政法人化を巡る状況が新たな局面を迎えたことを示している。現政権は、あくまで行政改革の枠組の中で、国立大学の独立行政法人化を強行しようとしている。
・ 現在最も重要な問題は、調査検討会議の組織業務委員会が出した試案を批判し、大学の自治を実現し、かつ高等教育にふさわしい組織を構想することである。

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独行法情報分析センターの目指すもの
独立行政法人問題千葉大学情報分析センター(独行法千葉大分析センター)は何をめざし、どのような性格のものと考えられて発足したのかを、提示しておきたい。本センターは、独法化問題に国立大学 が直面する状況下で、「千葉大では何が問題か」、「どのような行動・対応が必要な のか」ということについての情報提示と率直な意見表明・意見交換のなされる学内メディアの形成をめざしている。このために「速報」とホーム・ページの発行を行なうものである。発足にあたった有志グループが本センターを必要と考えたのは、次のような判断からで ある。
(1)現在、学内情報の伝達は、情報過多のなかの情報過少と呼ばねばならぬ状況ではないか。報告書がしばしばだされている。委員会報告はメールで次々に行われている。こうして情報の開示は行われているようにみえるが、大量の情報の氾濫のなかで、ほんとうに重 要な情報は埋もれてしまい、多くの大学構成員にとっては、結論のほぼ決まった段階になって、はじめて問題の所在が現れるという事態が、しばしば見られるのではないか。問題に気付いた誰かが、早期に大胆に、重要な問題の所在点を大学全構成員に提示するメディアが必要ではないか。
(2)大学の改革はいうまでもなく必要である。だが、その検討の進め方は「大勢はこうなっている、何時ま でにそれへの対応が必要だ」といった、大勢順応主義、同調主義であまりに処理されすぎていないか。こうした結果、実際には問題が解決されず、かえって矛盾が深まっていないか。一時凌ぎと彌縫策を排し、研究・教育機関としての大学の原理・原則にたちかえった検討の提示と討論の場が必要ではないか。
こうした考えに立ち、開かれた学内情報・討論メディアの成立をめざして、とにかく本センターをたちあげたわけである。 速報などへの投稿によって多くの方々の情報・意見提供と討論参加を願っている。本センターの主要な活動は、速報とホーム・ページの発行である。この実務を担うために有志数名によって事務局がつくられたが、目指すべきことがらの大きさに比してまだまだ脆弱である。上記の趣旨に賛同していただける方が積極的に参加されることを期待している。
運営のための資金は、こうした活動の意義を認めてくださる方々からのカンパ による。すでに郵便振込口座も設けたので、カンパをお送り頂ければ幸いである。
【情報へのアクセス】
独立行政法人反対首都圏ネットワーク (http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html)
全大教近畿  (http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/)
北大総長室 (文部科学省、国大協の資料)  (http://www.hokudai.ac.jp/bureau/soch
o/agency.htm)
なお、評価問題にかんしては、
大学評価・学位授与機構(NIAD)  (http://www.niad.ac.jp/)
国大協第8常置委員会HP (http://res-info.nagoya-u.ac.jp/kokudai/index.htm


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HPを開設しました
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/


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