独行法反対首都圏ネットワーク

「独立行政法人」の大学への適用は違法か合法か?
2000.11.30 [he-forum 1459] 独立行政法人適用の違法性の明示
「独立行政法人」の大学への適用は違法か合法か?


                 佐賀大学理工学部 豊島耕一


 「独立行政法人」制度を国立大学に適用することは大いに問題があるという指摘はたくさんありますが,違法とまで言いきったものはほとんど見かけません.では合法なのでしょうか.つまり合法的に選びうる政策の選択肢の範囲内のものなのでしょうか.

 しかし違法と言いきっていないにせよ,「学問の自由」や「大学の自治」に言及して,これに反するものと論じているものは見られます.次のような例が挙げられます.


-----------------------

阿部謹也氏,「大学を崩壊させるのは誰か」『群像』99年10月号
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/99a09-abe.html
「次に問題になるのは大学の自治という問題である。・・・・・大学は予算獲得のために右顧左眄して日々を過ごすことになるだろう。そのような大学に自治があるといえるだろうか。」


藤田宙靖氏,「国立大学と独立行政法人制度」1999年9月6日 東北大学加齢医学研究所(同9月7日)における講演

http://seri2.law.tohoku.ac.jp/~fujita/tohoku-koen.html
「また、通則法では、主務大臣が、三年以上五年以下の期間において独立行政法人が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)を定め、・・・・・・・文部大臣によるこのような介入は、現行の国立大学の場合には、存在しないところであって、この制度をそのままに大学に適用したとするならば、大学の自治に対する著しい制約ともなりかねない。」


千葉大学文学部教授会,声明,99年7月

http://www.l.chiba-u.ac.jp/jp/agency.html
「独立行政法人の名に反し、主務大臣や評価委員会、審議会の権限が強く、大学自治の本旨と矛盾する従属的な性格を有する制度である。」


浜林正夫氏の論説  JOIN No.35 (文教大学) 2000年1.2.3月号

http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net/nethefo815.html
「主務大臣(文部大臣)が大学の目標を定め、これを指示するというのですから、大学の自治は根本的に否定されることになります。」
-----------------------

 いずれもこの制度が少なくとも「大学の自治」に反するものであることを認めています.この制度の推進者の一人でもある藤田宙靖氏さえもです.


 ところで,憲法に関する文献や憲法23条をめぐる判例では,この条文の「学問の自由」には「大学の自治」が含まれるものとされています.つまり「大学の自治」に反するということは憲法23条に反するということなのです.次をご覧下さい.


 三省堂,模範六法,21ページ,1995年

 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/23jhanrei.html
 松井茂記「日本国憲法」486ページ.有斐閣,1999年
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/matsui.html


 つまり,上の論者らは国立大学に適用された「独立行政法人」制度は違憲であるということを間接的ながら述べていることになります.私もこれに同意見ですが,重要なのはこのことを明言することではないでしょうか.ことが国の基本法に関わる問題であると認識しながらそのことを明示的に述べられないとすれば,それではもはや法治国とは言えないでしょう.


 23条の「解釈改憲」ないし空洞化が謀議されているときに,これにはっきりと警告を出すことなしには「護憲」もあり得ません.ましてやその謀議,つまり「調査検討会議」に加わるなどもってのほかです.国大協の方々,そして文部省の方々もこの事を真剣に考えていただきたいと思います.


 「特例法」や「調整法」でなんとかなる,という議論がなされるでしょうが,それで「違法性」がクリアできるというのは単なる希望的観測に過ぎません.現実に存在するのは「通則法」であり,文部省はこの法律制度のもとで検討すると明言しているのです.この「第ゼロ近似」から良くも悪くもなりうる,と考えるのが客観的な態度というもので,したがってこの前提が外されない以上,議論の標的は「通則法」以外にはあり得ません.


 憲法23条だけでなく教育基本法10条にも触れると思われます.次の文献をご覧下さい.少し引用します.

「『不当な支配』とは政治的・官僚的教育行政という形式自体の不当性を含む」「『不当な支配』禁止の原理は教育全般に適用され、内的事項の領域のみならず、外的事項にも及び、外的事項による内的事項の『不当な支配』も許されない」  川合章,室井力編,「教育基本法 歴史と研究」,267ページ,
            新日本出版社,1998
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/futoushihai.html


TOYOSHIMA Kouichi

Dept. Phys., Univ. of Saga
豊島耕一,佐賀大学理工学部物理科学科



目次に戻る

東職ホームページに戻る