『中日新聞』長野版2010年4月7日付

専門性高い不妊治療 信大付属病院、生殖医療センター開所へ


松本市の信州大付属病院は、複数の診療科の医師が連携して不妊治療に当たる院内の専門組織「生殖医療センター」を来週中にもスタートさせる。不妊の原因と関連する泌尿器科や遺伝子診療部などの医師も加わり、効果的な治療が期待される。これまで実施していない未婚女性の卵子の凍結保存も積極的に検討する方針だ。産科婦人科外来医長で、副センター長に就任予定の岡賢二助教(44)は「専門性の高い治療を提供できる態勢が整った」と話している。

現在、不妊症に悩む夫婦は10組に1組ともされる。原因は泌尿器に関係する無精子症、遺伝子とかかわる染色体異常など多岐にわたり、診療科を超えた連携が不可欠となっていた。

同センターは病棟4階にある産科婦人科の受精卵培養室を改装。体外受精などに使う6000倍の高倍率顕微鏡や、作業効率の高い顕微鏡内蔵の受精卵培養器など、最新鋭の機器を導入した。患者は、全国でトップレベルの治療を受けられるようになる。事業費は、改修や機器を含めて約1億円。

さらに、がんの放射線治療などで不妊になるケースがあることから、患者らに望む声がある未婚女性の卵子凍結も検討する。凍結保存は精子と既婚女性の受精卵に限定されていたが、日本産科婦人科学会は2007年から、臨床研究に限り未婚女性の卵子凍結を容認している。

同病院の小池健一病院長は「大学病院として不妊治療にしっかり取り組み、患者の要望に応えたい」と話した。

(宿谷紀子)