『朝日新聞』愛媛版2010年4月8日付

育て「植物工場」専門家 井関農機、愛媛大に寄付講座


屋内で光や温度、水分などをハイテク技術で管理してトマトなどを栽培する「植物工場」の専門家を育成する講座が4月から、愛媛大学で開講した。植物工場の研究開発を進める協定を結んでいる農機メーカー大手の井関農機(松山市)の寄付講座として、植物生理学や環境工学などの基礎知識、施設の設計や機械の扱い方など、幅広い視点で授業をする。

講座名は「植物工場設計工学(井関農機)講座」。授業のメニューは育苗生産学や光合成診断論、環境制御機器論、栽培管理論など約30項目。同大学農学部の仁科弘重教授(緑化環境工学)が担当する「農学部施設生産システム学専門教育コース」の中に設ける。同コースの学生約20人がこの講座を受講する予定だが、農家やこの分野に関心を持つ社会人も仕事の都合に合わせて受講することができるという。

同社は1987年にオランダの技術を導入、日本で初めて太陽光を利用する植物工場を設置。その後、独自の技術開発をし、現在、太陽光利用型植物工場の分野では国内で45%のシェアを誇る。植物工場は、太陽光利用型のほかに、蛍光灯やLED照明などの人工光利用型があるが、井関農機によると、太陽光利用型の方が保守管理費用が安く、消費者に安心感を持ってもらいやすいという。

同大学も研究に力を入れており、2008年3月には、床面積500平方メートルという国内最大規模の植物工場を建設、トマトなどを栽培している。今年1月には植物工場として国の研究拠点の一つに選ばれた。両者は2005年にこの研究を連携して進める協定を結んでおり、 協定を更新するのに合わせて連携を強化することにした。

同社からは社員3人が出向し、植物工場の基本構造や設計の基礎知識、制御機器の取り扱い方などを指導する。授業による人材育成のほか、安いコストで栽培能力を向上させる技術開発の共同研究も進める。

蒲生誠一郎・同社社長は「地元企業として、この分野の発展や人材育成にかかわれることをうれしく思う。愛媛大学との連携を進めながら、 地域に貢献していきたい」と話した。(藤橋一也)