『信濃毎日新聞』2010年4月3日付

県中小企業家同友会 信大工学部内に事務局移転


県内の575社でつくる県中小企業家同友会(関野友憲代表理事)は、事務局を長野市稲葉母袋の民間ビルから同市若里の信大工学部キャンパス内に移転した。中小企業の新事業創出で産学連携が果たす役割が大きい−と考えての移転。同学部との情報交換や共同研究を促す。各都道府県にある全国47の同友会で大学内に事務局を設けるのは初めて。23日に信大が開くシンポジウムも共催し、連携を強化していく。

同学部がキャンパス内に新設した「信州科学技術総合振興センター(SASTec)」に入居。約75平方メートルのスペースで4人が業務を始めた。キャンパス内に拠点を設けることで、同学部の教員や連携コーディネーターと接触しやすくなったという。

同友会事務局が会員企業にアンケートを行ったところ、産学連携を望みながらも「どうやって始めればいいか分からない」「研究者と知り合う機会がない」と断念する事例が多いことが判明。新事業で失敗した企業からは「専門家の知恵を借りれば良かった」と悔やむ声もあった。連携促進の機会をうかがっていたところ、同センターの開設が決まり、同学部に入居を申し入れた。

同友会は7支部ごとに月例会を開き、経営指針づくりなど経営全般について学んでいる。活動の中で出た課題について、教員に助言を求めたり、連携の要望を伝えたりする方針。小林敬二事務局長は「経営者が大学を訪ね、教員と会う機会が増える。大学が身近な存在になり、具体的な連携に発展しやすくなる」と期待する。

23日のシンポジウムは同センターで開催。同友会は同じ会場で事前に総会を開き、経営者らは引き続き討論に加わる。同友会は5月以降も小規模なシンポジウムを開く方針だ。

関野代表理事は「地域で雇用を創出するのは地域に根差した中小企業の役割。大学と一緒に具体的な仕事を生み出し、地域を活性化させたい」としている。