『佐賀新聞』2010年4月2日付

死因究明改善へ遺体CT診断 佐賀大病院にAiセンター
犯罪死見逃さない態勢づくりも


佐賀大学医学部付属病院は1日、遺体の画像診断をする「Aiセンター」を新設した。解剖率の低さなどが問題視されている死因究明制度の改善を目指す取り組みで、犯罪死を見逃さない態勢づくりも目指す。死因に疑問を持つ遺族らの診断要望にも応える方針で、地域の医療機関や県警から要請があれば24時間態勢で対応する。国立大学法人でAiセンターを設置するのは千葉大、群馬大に次いで3例目。

Aiは「オートプシー・イメージング」の略称で、遺体を傷つけずコンピューター断層撮影法(CT)で画像診断するシステム。体の表面から死因を調べる検視より質の高い情報が簡単に得られる。

付属病院のAiセンターは、中央診療棟の病理解剖資料室を改築し、患者用とは区別して新規購入したCTを設置した。断層画像を撮影し、所見を提供する。保健診療の適用外で、撮影や画像を読む費用は1ケース約5万円。

院内や地域の医療機関から依頼があった場合、遺族から承諾書をとる。ただ、虐待やDV(配偶者らからの暴力)などが疑われ、司法がかかわることが想定されるケースは、承諾は必要としない。

死因究明の最有力手段は解剖だが、病理や法医学の専門医不足に加え、遺体を傷つけることに抵抗がある遺族感情もあって実施率は低い。警察庁によると、2009年に全国の警察が扱った遺体は16万858体で、うち死因究明のために司法解剖や行政解剖が実施されたのは10・1%。佐賀県は1001体で、解剖率は4・3%だった。

同庁は07年の力士暴行死事件や、埼玉や鳥取で昨年相次ぎ発覚した連続不審死事件を背景に、検視官増員やAi活用など死因究明体制を強化。日本医師会の検討委員会は3月、小児や心肺停止状態で救急搬送された患者らに対するAi実施を提言している。

地域単位のAiセンター設置は喫緊の課題になっており、佐賀大付属病院は、在籍する県内唯一の法医学の専門医をバックアップする狙いもあり、体制を整備する。

宮ア耕治病院長は「異状死に向き合い、真相究明に力を尽くすことが大学病院の使命」と強調。「Aiは患者が療養中に突然死した場合にも客観的なデータとして活用できる」とし、訴訟を含む遺族とのトラブル回避や、医療への不信感を和らげる手だてにもなるとみている。

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『チーム・バチスタの栄光』『死因不明社会』などの著作で知られる医師で作家の海堂尊さんの話 Aiの社会導入は進展しつつあるが、読影システムや料金体系まできちんと設定されたAiセンターは日本初ではないか。崩壊しつつある地方医療の再生のモデルになるだろう。