『読売新聞』山形版2010年3月31日付

山大が取り組み前倒し 企業とアジア留学生支援
技術者育成へ「共同事業体」


山形大は、アジアの優秀な留学生を大学院理工学研究科の修士課程で受け入れ、専門の学問以外に日本企業の仕組みなどを集中的に学ばせる人材育成に取り組んでいる。これまで、国主導の事業として2008〜10年入学の3期生まで留学生一人あたり月額16万〜17万円の奨学金が支給できる構想だったが、行政刷新会議の「事業仕分け」に伴い、今秋来日する3期生の奨学金は大学側が工面しなければならなくなった。このため、同大は、地元企業などに支援を求める「コンソーシアム(共同事業体)」の取り組みを、予定より1年早め4月から本格化させる。

人材育成は、少子化による労働人口減少に備え、地元企業などで即戦力となる技術者を育てることが狙い。留学生が将来、帰国した際、日本での経験を生かし、海外の産業界との懸け橋になってもらうことも期待される。

山形大には、08、09年の秋に入学した中国人8人、ベトナム人1人が留学中。同研究科ものづくり技術経営学専攻で、ロボット開発や太陽光発電などについて学んでいる。同大国際事業化研究センター長の高橋幸司教授によると、留学生はいずれも各国の難関大学をトップクラスの成績で卒業。「非常にまじめで、日本人学生にも良い影響を与えている」という。

中国の吉林大を卒業し、今秋修士課程を修了予定の童煉(どうれん)さん(24)は「日本企業に対する理解が深まり、就職した際に溶け込みやすくなったと思う」と留学の手応えを感じている。

同大が呼びかけるコンソーシアムに、企業は正会員(年会費3万6000円)や賛助会員(同1万円)などで参加。大学側は、留学生による外国語講座、教員による経営講座などを有料で実施する。企業側には、海外進出や国際間競争に関するノウハウを得られるメリットがあるという。

高橋教授は「留学生の奨学金はこれまでの3分の1ほどに減りそうだが、それでも日本で学びたいという人材は多いと思う。現在の会員企業は20社余り。さらに多くの参加を期待したい」と話している。問い合わせは山形大「もっとみらい」コンソーシアム事務局(0238・26・3622)へ。