『朝日新聞』2010年3月29日付

国立大順位付け現場が不満 評価の公平性に募る疑問


国立大運営費交付金の評価反映分

2004年度に法人化された国立大学の研究や教育を6年ごとに評価して順位付けし、交付金に格差をつけた初の予算が明らかになった。だが、評価や金額配分の方法に、大学からは疑問や不満の声が相次いでいる。

国立大には、基礎的な日常資金として運営費交付金が支給されている。今回、全86大学への交付金計約1兆2千億円のうち、事務局の光熱・通信費などの「一般管理費」の1%分、計16億円が評価反映分の原資となった。法人化後の第1期の教育・研究などの評価を反映したうえで、各大学に再分配。本来交付されるべき金額よりも大学によって多寡をつけた。

評価反映は、法人化の制度を設ける際に政府が打ち出した。「予算に差を付けることが大学のやる気を生み、活性化につながる」という小泉構造改革の考え方をもとにしている。

しかし、法人化で自立した大学を目指したものの、毎年、運営費交付金そのものの全体額が削られ続け、大規模と小規模大学の格差が広がった。日常経費の目減りは、特に地方の小規模、単科大学ほど教育研究に重くのしかかる。評価でのさらなる予算格差は、活性化どころか、とりわけマイナス評価が反映された小規模大学にとって影響が大きい。マイナス150万円となった鹿屋体育大は「数百万の差でも、単科大には厳しい」とこぼす。大規模大からも疑問の声は出ている。北海道大は「競争的資金獲得で努力が求められ、基盤経費でさらに競争という考えが持ち込まれるのはたまらない。同時期に法人化した独立行政法人で、ここまで評価という発想が持ち込まれているだろうか」と不満げだ。

そもそも、その評価自体の公正さにも疑問があがる。例えば、目標を高く設定して達成できなければ評価は低くなり、低い目標設定を達成すれば評価が上がるなどの矛盾を抱えるほか、経費を節約して経営を効率化すればするほど評価が上がるという、本来の教育や研究の業績評価とは異なる方法も取り入れている。

拠出し合った原資を再分配する形の方式に、東京農工大は「総合評価は低くなかったのに、原資は限られている事情で金額への反映はなかった。頑張っても、他大学がさらに高評価なら予算増にならない」との声も漏れる。

1兆2千億円分の16億円という評価反映分原資を見ても、今回は政府方針を消化するためのアリバイ作りの感が強い。文科省では、法人化制度のあり方を今後議論するという。不透明な評価反映は見直し、どの大学にとっても必要な日常経費を確保したうえで、大学全体の予算配分の新たな仕組みをつくるべき時期といえる。(編集委員・山上浩二郎、石川智也)