『朝日新聞』2010年3月28日付

新センター試験、開発へ模索 選抜機能強化めざす


大学入試センターが2010年度から、新しい選抜試験の開発研究に着手することが分かった。入試の多様化で、今の大学入試センター試験では、受験生の学力が維持できず、選抜機能が弱まっているなどの指摘があることがきっかけ。センター内に研究機構をつくり、開発を進める。

大学進学率は短大を含め5割を超え、大学全体の定員も増え続けている。一方で18歳人口は、1992年の205万人と比較して、2010年は120万人。また、国公私立大すべてで、推薦やAO入試の入学者数が増え、4割を超えている。

さらに高校の教育内容も選択幅が広がり、学力低下や大学教育の質をどう保つかが問題となっていた。このため、入試データの蓄積があるセンターが試験のあり方や方向性も含め基礎的な研究を始めることになった。

新たな研究機構は、10人以上の研究者、専門家で構成。試験開発、 入試評価、障害者支援の3部門で構成する。

試験開発部門では、高校の教育課程を生徒がどの程度理解しているのか到達度を測る「到達度試験」や、大学院での教育に必要な判断力や思考力が備わっているかをみる「適性試験」など、目的に応じた試験の開発を進める。特に到達度試験は、受験生が大学入学後、授業で戸惑うことがないように一定のレベルを維持する働きが期待されている「高大接続テスト」の事前研究の意味がある。

ほかに、入試評価部門では、今の日本の大学入試の方法や目的などの現状を本格的に調査するほか、海外の大学入試を対象に大学経営陣や政府関係者、テスト実施機関などから資料を集め分析する。障害者支援部門では、障害のある受験生への配慮についての研究も進める。

大学入試センター試験は、共通1次試験の期間を含めて31年間続いている。今年1月の試験では、811大学・短大が利用し、約55万3千人が志願して約52万人が実際に受験した。(編集委員・山上浩二郎)