『朝日新聞』愛媛版2010年3月31日付

地域医療再生を研究


◇県と愛媛大 2圏域に拠点開設
 あす「宇摩」「八幡浜・大洲」

医師不足が深刻化する宇摩(四国中央市) と八幡浜・大洲(八幡浜、大洲、西予3市と内子、伊方両町) の両圏域に、4月1日付で県と愛媛大学(柳澤康信学長)による地域医療再生のための研究拠点(サテライトセンター) が設置される。愛媛大が両圏域の地域医療に関する講座を学内に開設して教員を4人ずつ配置、そのうち3人ずつがサテライトセンターに常駐する。地域の病院で研修医や臨床実習する学生を受け入れて指導に当たるほか、診療の手助けも行う。(中田絢子)

◇教員配置 診療支援も

県が、国の交付金を活用した地域医療再生基金から新たに、2010〜13年度に総額2億520万円を愛媛大に寄付して、研究拠点を持つ2講座を設置する。計8人の教員は同大から3人、県内の民間病院などから5人を集めて派遣する。

宇摩圏域では、小児・周産期や脳神経外科などの専門医が不足しているため、これらの分野に携わる医師の養成や派遣を担う「地域医療再生学講座」(畠山隆雄教授ら4人)を設置する。

八幡浜・大洲圏域では、2次救急制度の崩壊が深刻化していることを受け、「地域救急医療学講座」(本田和男教授以下4人)を設置し、救急医の養成などを目指す。

四国中央市役所内と市立八幡浜総合病院内にサテライトセンターを開設し、講座の研究拠点として、3人の教員を常駐させる。教員らは、地域医療体制構築のための研究や研修医の指導を行うほか、四国中央、石川両病院や市立八幡浜総合病院で診療に当たったり、地元開業医に対する講習なども実施するという。

今回設置される2講座は、08年に開設され、西予市立野村病院や久万高原町立病院で学生が臨床実習を行っている「地域医療学講座」とともに、来春に医学部敷地内に完成する研究棟に入り、医師の派遣などに関して互いに連携を図っていくという。

愛媛大の大西丘倫・研究科長は、10年度はカリキュラムなどの体制を整え、11年度から学生の臨床実習や研修医の受け入れを始めたい、としている。ただし、教員らの研究は、将来、地域医療に従事する医師の養成や地域医療体制の確立が目的。大西研究科長は「受け入れる地元が『医師が4人増えた』という認識で医療行為だけに忙殺されてしまっては、うまくいかない」と話している。