『中国新聞』2010年3月18日付 医学部地域枠、定員割れ 島根除く中国4県 ▽学力不足や周知に課題 奨学金、宙に浮く 中国地方5県が国立大医学部医学科の今春の一般入試で設けた「地域枠」のうち、島根を除く4県の合格者数が定員割れとなった。地域医療に携わる意志のある人材を優先して入学させる仕組みで、各県が予算化していた奨学金が宙に浮く事態となっている。 欠員は、広島県1人▽山口県1人▽岡山県3人▽鳥取県2人。いずれも2月の国立大一般入試前期日程で設けた募集枠に対し、合格者数が下回った。 地域枠は、合格者が卒業後6〜9年間、県が指定する病院に勤務するのを条件にしている。在学中の6年間は、月額10万〜20万円の奨学金が支給される。 広島県は、広島大5人と岡山大2人の地域枠を設けていた。岡山大は志願者3人のうち、1人しか合格しなかった。 医療政策課は「地域医療に対する熱意は全員が十分にあったと聞くが、学力面などが足りなかった」と残念がる。地域枠を中心とする各大学の定員増を国が認めたのは昨年12月。「周知の時間が十分なかった」という。 岡山県は岡山大に設けた地域枠7人のうち4人しか確保できなかった。施設指導課は「志願者26人は想定外の少なさだった」という。鳥取県は、山口大の地域枠1人に志願者がいないなどし、計2人が欠員となった。 行き場を失ったのは、合格者に支給する予定だった奨学金だ。山口県は、新年度予算案に8人分の奨学金計8640万円を盛り込んでいたが、欠員1人分の1080万円が必要なくなった。地域医療推進室は「貸付規則に従い、入学者の中から地域枠の利用者を新たに募るなど弾力的な運用はしない」という。鳥取県も2人分2160万円について同様の考えを示す。 一方、広島県は4月以降、岡山大医学部医学科に入る県出身者に対し、欠員1人分の奨学金の利用を呼び掛ける方針だ。医療政策課は「県東部は岡山大からの派遣医師も多く、なんとか2人を確保したい」と話している。(藤村潤平) |