『岐阜新聞』2010年3月16日付

患者たらい回し解消へIT活用 岐阜大で成果発表


救急患者のたらい回し解消を目指し、経済産業省の委託で岐阜大学がシステム開発に取り組んでいる「車載IT(情報技術)を活用した緊急医療体制の構築」事業で、本年度1年間の成果発表会が15日、岐阜市柳戸の同大医学部であった。

病院情報と現場情報をリアルタイムにマッチングする国内初の救急医療情報流通システムのモデルが披露された。早ければ新年度中にも実用化される見通しで、救急隊の現場滞在時間を現状から5〜10分短縮し患者を最適な病院へ搬送できるという。

現状の救急体制では、救急車と病院が直接電話でやり取りするため搬送先の確定に時間がかかり、患者にとって最適な医師がいる病院へ搬送できない場合も多い。岐阜市の場合、救急隊の現場滞在時間は平均11分。1病院断られると約5分ロスするという。最初の10分間の処置で、その後の患者の生命や回復経過が決まるといわれる救急で、ロスを無くし、患者に最適な医療行為を行えるよう環境を整えるのが課題だ。

成果発表会には、同大医学部に設置した病院、患者、救急現場からの情報が集結する「統合センター」のモデルが披露された。情報の可視化を工夫し、救急車に搭載されたカメラで患者の容体を映し出すとともに、対応可能な医師や空きベッド数などもリアルタイムで把握できる。

患者の氏名や病歴、血液型、投薬歴などを記録したICカードがあれば、救急隊員が専用端末で情報を読み取り、事前に病院に伝えることも可能。発表会には古田肇知事も出席した。

同事業推進委員会委員長の小倉真治同大大学院医学系研究科教授(51)は「来年度はできるところから実用化したい。今は統合センターにいる医師がどこに患者を運ぶのが最適かを判断するが、将来的にはコンピューターで選定できるようにしたい」と話していた。