『毎日新聞』長野版2010年3月14日付

信州メディカルシーズ育成拠点:県と信大、経営者協が連携拠点


◇高度な医療器具など新たな産業の創出へ

信州の得意分野・ものづくりを生かして医療分野の高度な産業を育てようと、県と信州大、県経営者協会が共同で「信州メディカルシーズ(医療産業の種)育成拠点」を開設した。県内企業が持つものづくりの高い技術と、信大などが有する最先端素材や医療現場のデータを連携させることで、高度な医療器具や製品を開発し、海外とも競争できる新たな産業を創出する狙い。政府の「地域産学官共同研究拠点整備事業」に採択され、事業費は総額8億5500万円。

同拠点が設置された松本市旭の信大キャンパスで8日、記念シンポジウムが行われた。信大の山沢清人学長は「長寿で健康な県としても有名な長野で、大学と県、企業が連携してメディカル分野に貢献したい」とあいさつ。企業側の県経営者協会の関安雄・専務理事は「専門家から助言をもらわなければ、産業界だけで医療関連の製品開発などをするのは難しい」と語った。

県内の主力産業の精密機械や電子・情報部品技術などを、国内や世界で市場が拡大している医療産業に生かすため、同拠点で信大医学部などの研究機関との協力態勢を整える。企業は信大内にある約60種の研究機器を実費程度で使用でき、動物実験や臨床実験の設備なども開放されるという。学内に共同研究スペースが設置され、法規制や倫理問題の解決にも信大の研究者が協力するという。

拠点構想を発案した信大の杉原伸宏講師は「信大は医学分野以外にも、世界最先端の素材などを提供することが可能。産学官が協力することで、県内の医療産業は飛躍的な発展が期待できる」と強調した。【渡辺諒】