『河北新報』2010年3月22日付

東北大の100年刻む 大学史全11巻完結


東北大が創立百周年記念事業の一環として、1997年から編さんを進めてきた大学史「東北大学百年史」の最終巻が刊行され、全11巻が完結した。創立以来の沿革や各分野の研究成果のほか、学生生活の歴史までを網羅。執筆者は約980人に上った。東北大百年史編さん室は「全国の大学史の中でも最大規模。近代の教育史を知る資料として広く活用してほしい」と話している。

百年史は、1907年の創立から現在までの沿革をまとめた「通史」(全3巻)、各学部や付属研究所の歴史、研究成果を収めた「部局史」(全4巻)、データや写真などの「資料」(全4巻)で構成する。完成した巻から順次出版され、最後に残っていた通史の3巻目が19日、刊行された。各巻800ページ前後で、全巻計9600ページに及んだ。

明治期の東北帝国大設置の経緯から、近年の国立大法人化やキャンパス移転計画まで、時代背景と合わせて解説。通史の3巻ではテーマ別に大学史を詳述した。東北振興と同大のかかわり、学術研究に多大な助成をしてきた仙台市の財団法人「斎藤報恩会」との結びつきなどのキーワードで振り返っている。「女性教職員と学内保育施設」など、従来あまり取り上げられていないテーマも盛り込んだ。

全巻を通じ、東北大やほかの旧帝大、国立公文書館(東京)などに残る史料を徹底調査。退職した名誉教授や遺族など100人近くから所蔵史料の提供を受けたという。

百年史編さん室長の今泉隆雄文学研究科教授は「学術的な成果を明らかにするとともに、大学という高等教育機関が地域や社会とどうかかわってきたかに注目した。大変な編さん作業だったが、次の100年を考える手掛かりとなればうれしい」と語る。

価格は第11巻のみ7000円で、ほかは6000円。連絡先は東北大出版会022(214)2777。東北大図書館、史料館などで閲覧できる。