『朝日新聞』2010年3月12日付

司法試験成績で補助金に差、法科大学院を底上げ 中教審


中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)特別委員会は12日、司法試験の合格実績で低迷する法科大学院について国からの交付金や補助金を削減し、判事などの教員派遣も減らすべきだとする内容の報告をまとめた。合格率で低迷する大学院は「資金」と「人」の両面で国の支援が減らされるため、教育内容の改善や統廃合などの判断を迫られることになる。

報告は、合格率の低迷で「質の低下」議論が起きている大学院の質を底上げする狙い。提言を受けた文科省は、「兵糧作戦」で低迷校に危機感を促すとともに、大学院の再編を進めたい方針だ。同省は大学院に義務づけた第三者機関による認証評価の基準に司法試験の合格実績を加えることも決めている。

委員会は「試験合格率だけを問うべきではないが、著しく低迷しているところは、教育や入試などで問題があると見ざるを得ない」と認定。司法試験合格率が平均の半分に満たない状況が続く大学院について「公的支援のあり方の見直しを検討すべきだ」と提言した。全74校のうち、過去4回の試験で、この状況が3回続いた大学院は9校、2年連続は18校ある。

文科省は、今秋の司法試験合否発表を受け、2011年度予算から助成を減らす方針だ。具体的な基準や算定方法は、医師・歯科医師国家試験ですでに実施されている助成減額措置などを参考にしながら検討していく。

また、各校には法務省と最高裁から検察官と裁判官が実務家教員として派遣されているが、報告はこれについても「早急に見直しを検討することが期待される」とし、成績不振校から派遣を引き揚げることを事実上提言した。

教育の改善が進まない大学院は国の支援が減らされ経営基盤が揺らぐことは必至。文科省幹部は「法曹養成の役割を果たしていないところは(撤退などの)決断をしてもらうしかない」としている。(石川智也)