『朝日新聞』2010年2月24日付

学生への「職業指導」、大学・短大に義務化へ 文科省


学生が自立して仕事を探し、社会人として通用するように、大学や短大の教育課程に職業指導(キャリアガイダンス)を盛り込むことが2011年度から義務化される。文部科学省が25日、設置基準を改正し、 大学側もカリキュラムや就職活動などの支援体制の見直しに入る。

義務化の背景には、厳しい雇用状況や、職業や仕事の内容が大きく変化するなかで、大学側の教育や学生支援が不十分という指摘がある。さらに新卒就職者の3割が3年以内に離職するなど、定着率の悪さも問題になっていた。このため、大学教育のあり方を議論していた中央教育審議会(文科相の諮問機関)でも、学生支援の充実や、職業指導を明確化する方向性を打ち出していた。

就職支援に関して、各大学や短大は、就職支援センターやキャリアセンターを学内につくって対応している。義務化で、卒業後を意識したカリキュラムやプログラムにし、すでに一部の大学で導入されている職業を考える授業やインターンなどを単位として認定するなどの動きが広がりそうだ。

また就職指導への教育は、7年ごとに受ける第三者の認証評価機関などの評価対象にもなり、結果が公表される。受験生の大学選びの理由の一つになる可能性もある。

日本学生支援機構のまとめでは、就職セミナーやガイダンスなどを実施する大学は全体の91.8%、短大で95.7%。職業意識を育てることを目的にした授業科目を開設している大学は74.3%、短大は72.4%となっている。

具体例として、金沢工業大学では、入学時から4年生まで、必修の科目として将来の進路を考えるカリキュラム「社会で自分を活(い)かして生きていく力」を実施している。また、東京女学館大学では、コミュニケーション能力、IT能力など社会人として必要な10の能力「10の底力」を定めて4年間で基礎、専門科目を通じて伸ばす試みをしている。

ただ、義務化で、大学の正規授業での職業指導が重点化されると、 「就職」が目的化してしまい、本来の学問・研究がおろそかになるという懸念もある。また、もともと就職指導に重心を置いた専門学校との境目がなくなるという指摘もある。(編集委員・山上浩二郎)