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《市場化テスト導入阻止情報》No.42010222

国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 

【紹介】自治労連学習討議資料『市場化テスト法どこが問題か、どうたたかうか』(20062月発行)第1章3の抜粋

 

市場化テストが狙っていること、そしてそれとどう闘うかについては自治労連(日本自治体労働組合総連合)が2006210日に発行した学習討議資料『市場化テスト法どこが問題か、どうたたかうか』http://www.jichiroren.jp/download/Marketizatio.pdf

を読むと大変よくわかります。全文をお読みになることをお薦めしますが、自治労連からご了承をいただきましたので、ここでは1章3『「市場化テスト」の特徴と問題の重要部分を抜粋して掲載します(引用される場合はかならず自治労連の学習討論資料からであることを明記してください)。ただし、発行当時はまだ市場化テスト法案が提示されていただけであたったため、2006年通常国会で成立した市場化テスト法とは一部異なっています。そこで「市場化テスト法案」を「市場化テスト法」と変更した上で、成立した市場化テスト法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO051.html)の条文を掲載し、また本文中で引用されている事項について可能な限りその出典URLを挿入してあります。なお、機種依存記号は、数字等に切り替えています。

 

「市場化テスト」の特徴と問題

 

 

(1)公務・公共サービスを民間企業等に丸投げ

市場化テスト法では、市場化テストの目的と基本的な性格について、次のとおり規定しています。

 

(趣旨)

第1条:この法律は、国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革(以下「競争の導入による公共サービスの改革」という。)を実施するため、……必要な措置、官民競争入札等監理委員会の設置その他必要な事項を定めるものとする。

(国の行政機関等の責務)

第4条:国の行政機関等は、……国の行政機関等の関与その他の規制を必要最小限のものとすることにより民間事業者の創意と工夫がその実施する公共サービスに適切に反映されるよう措置する… 。

 

市場化テスト法のなかには「民間事業者の創意と工夫」「国や自治体の関与を最小限に」という規定があふれかえっています。市場化テスト法では、民間企業等が利益を生みやすいように一括りの業務をまとめ、国や自治体の規制を「必要最小限」に止めて民間企業等ができるだけ自由に「創意と工夫」を発揮すれば、公共サービスの維持向上と経費の削減が達成できるという「論理」が貫かれています。

このことは国と自治体が担ってきた公務・公共サービスを民間企業等が投資し、営利活動をおこなう対象へと置き換えることであり、財界・大企業からみれば、「規制緩和・民間開放」によって新たに参入できる市場が、政府によって創り出されることです。まさに「パブリック・ビジネス」であり、ビッグ・ビジネスチャンスです。財界系シンクタンク(たとえば三菱総研)によれば、指定管理者制度によって潜在市場は10兆円ですが、市場化テストを実施すれば40兆円規模の市場がうまれると試算し月刊『パブリックビジネス・リポート』(日経BP社)では「50兆円産業の到来」と皮算用しています(当該“皮算用”は,http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2006/2003403_1421.html にあります。引用者注)。市場化テストの本格実施を前に、うまみのある公共業務を獲得すべく、大企業とベンチャー企業は入り乱れてしのぎを削っています。

 

(2)財界・民間企業等のイニシアティブが貫かれる

市場化テスト法では、財界や民間企業等の提案を優先的に反映させるための2つの仕組みが設けています。

1)民間企業等の意見を直接反映

第1は、国(内閣総理大臣)が策定する「公共サービス改革基本方針」(以下「基本方針」)に直接、民間企業等の意見を反映される仕組みです。

 

(公共サービス改革基本方針)

第7条3項:内閣総理大臣は、…あらかじめ、民間事業者が公共サービスに関しその実施を自ら担うことができると考える業務の範囲およびこれに関し政府が講ずべき措置について、民間事業者の意見を聴くものとする。

 

どの業務を市場化テストの対象にするのか、どのような規制緩和をおこなうのかを参入したい民間企業等から聴いて決定するというものです。主権者である国民ではなく、参入したい民間企業等に公共サービスのあり方を決定する特別な地位を与えていることが、第1の仕組みです。

2)財界・民間企業の利益代表が可否を判断し、監視まで

第2は、財界や民間企業等の利益を代表する「官民競争入札等監理委員会」(以下「監理委員会」)に、基本方針の策定や実施プロセスのすべてに関与し、勧告する権限を与えていることです。

 

第7条6項:内閣総理大臣は、公共サービス改革基本方針の案を定めようとするときは、官民競争入札等監理委員会…の議を経なければならない。

 

監理委員会にはこれほど強力な権限を付与していますが、この監理委員会の性格については「規制改革・民間開放推進会議」の「『小さくて効率的な政府』の実現に向けて公共サービス効率化法(市場化テスト法)案の骨子等」(以下「法案の骨子等」)でわかりやすく説明しています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/market/2005/0927/item050927_03.pdf

 

「第三者機関」(法では「官民競争入札等監理委員会」)の体制については、…民間人を中心とした専門性の高い優秀なスタッフを一定程度有するものとすべきである。なお「市場化テスト」における「中立性」の概念とは…「市場でできることは市場で行わせる」、「官業に対して民業の効率性との対比で費用対効果を厳格に検証する」という基本的な立場に立ち…実際の法の運用に当てはめることができるという性質を意味する。15頁、「法案の骨子等」における「第三者機関」が市場化テスト法案では「官民競争入札等監理委員会」とされています。)

 

つまり監理委員会の基本的立場は、第1に「官から民へ」の推進、第2に「効率化・経費削減」にあるのであって、公共サービスのそれぞれの役割に着目して、その改善をはかるという国民全体の立場には立っていません。市場化テストの対象事業とするかどうかの判断、実施に対する監視等を、財界・大企業の意向を反映した「監理委員会」がまず先におこなうところにもうひとつの仕組みがあります。

しかも「監理委員会」は「官民競争入札等の公正な実施の監視等を行うものとする」(「法律案の概要」)というように「大目付」の役割まで併せ持っています。

本来、主権者である国民と政府、住民と自治体との関係で決すべき公務・公共サービスのあり方について、提案は民間企業等がおこない、行司も、その後の見張りも財界・大企業の代表が担うのですから、おおよそ国民全体の立場にたった制度とはいえません。

 

(3)すべての公務・公共サービスを対象に、底なしの規制緩和

市場化テスト法の対象は、「国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービス」(第1条)です。「すべての公共サービス」ですから、「聖域」はありません。しかも、対象業務を順次拡大していくことができる仕組みは「構造改革特別区域法」の制度と同じですが、(1)で述べたように国や自治体の判断より財界と民間企業の意向を優先すること、その障害となる規制の緩和を同時進行させる仕組みは、これまでの制度ではみられない特徴です。

1)当初より実施対象とされる業務

 (略)

2)規制緩和の仕組みと内容

市場化テストによって民間企業等が落札した場合には、一般的に適用される規制緩和の特例(「通則特例」)と、個々の公共サービスを規定する個別法の規制を緩和する特例(「特定公共サービス」)の2種類の規制緩和特例が設けられています。とくに特定公共サービスの対象事業と規制緩和特例については、今後、民間企業等や自治体からの要望に基いて拡大されていくことが特徴です。

●通則特例

@債務負担行為の期間に特例を設け、契約期間を「10年以内」に延長すること(第30条)。

「国が債務を負担する行為に因り支出すべき年限は、当該会計年度以降5箇年度以内とする」(財政法第15条3項)とされている年限を特例的に延長するものです。

A国家公務員退職手当の在職期間に特例を設けること(31)。

退職手当の特例は(7)を参照してください。

●「特定公共サービス」に選定することによる規制緩和

(略)

「特定公共サービス」に対する規制緩和の特例は、法律、政令、通達等によって「公務員しかできない」などと規定している制限の緩和ですが、「施設基準、職員配置基準等についても規制緩和の対象になりうる。その規制が必要かどうかを今日時点にたって見直すことも必要である」と内閣府市場化テスト推進室は明言しています。しかも小泉内閣が昨年(2005年)12月に閣議決定した「行政改革の重要方針」では、国が定数基準を設ける教育・消防・警察・福祉関係について「基準を見直す」とし、学校給食や保育所などに設けている職員配置基準を引き下げる意図を明確にしています。このことをみるならば、市場化テストの実施を通しても、国民の安全や安心、一定水準の公共サービスの質を確保のために設けられた基準がどんどん引き下げられる恐れがあります。

3)「先進自治体」を梃子に、全国水準を引き下げる仕組み

自治体業務のなかから「特定行政サービス」を選定し、規制緩和措置を設ける場合、民間企業等の意見を聴くことと同時に、「地方公共団体の意見を聴くものとする」(第7条5項)とされています。この場合の「地方公共団体」とは「競争の導入による公共サービスの改革に関する措置を講じようとする地方公共団体」(「法律案の概要」)であり、その業務を市場化テストの対象として規制緩和することについての是非を広く地方6団体等や自治体から聴くものではありません。

しかも規制緩和の効果は、当該自治体だけでなく、すべての自治体に及びます。構造改革特別区域法の場合だと、規制緩和の適用は当該自治体に限定されていますが、市場化テスト法の場合、たとえば東京都足立区が提案した「戸籍事務及び外国人登録事務の委託範囲の拡大」が、規制改革・民間開放推進会議の第4回主要課題改革推進委員会において、住民票の写し、印鑑登録証明書、納税証明書、戸籍の附票写し等も付け加えられ、「住民票交付等にかかわる窓口業務」を特定公共サービスに選定し、しかも提案者である足立区だけに適用するのでなく、すべての自治体に適用されます。つまり国以上に急進的な自治体の動きを梃子にして、全国的に、行政サービス水準の引き下げを含む規制緩和を推進することも市場化テスト法の特徴です。

 

(4)自治体にも「市場化テスト」を押し付ける仕組み

自治体業務も市場化テスト法の対象であることは(2)で述べたとおりです。しかし国及び独立行政法人への適用と、自治体への適用とは、その手順が異なります。そのうえで、自治体にも「市場化テスト」を押し付ける仕組みを設けています。

1)市場化テストを適用する仕組みは国と自治体とは異なる

 (略)

2)国が自治体に押し付ける仕組み_

しかし自治体がまったく自主的自律的に判断できる保証はありません。

第1に、市場化テストを、それぞれの自治体の都合にあわせて実施する裁量権は狭められています。市場化テスト法案には「自治体の責務」について次のように規定しています。

 

(地方公共団体の責務)

第5条:地方公共団体は、基本理念にのっとり、地方公共団体の特定公共サービスに関し見直しを行い、官民競争入札または民間競争入札を実施する場合には、その対象とする特定行政サービスを適切に選定するほか、地方公共団体の関与その他の規制を必要最小限のものにすることにより、民間事業者の創意と工夫がその実施する特定公共サービスに適切に反映されるよう措置するとともに、当該特定公共サービスの適性かつ確実な実施を確保するために必要かつ適切な監督を行うものとする。

 

ここでは、いったん国が特定公共サービスに選定すれば、自治体は見直しを行うことが求められ、かつ自治体の業務でありながら「自治体の関与その他の規制を必要最小限のもの」「民間事業者の創意と工夫を反映」という基準の適用を求められています。「公の施設」に対する指定管理者制度の適用においては、施設の公共性、専門性、継続性をふまえ、民間企業等の競争的参入を規制し、実績のある非営利の公共的団体などを公募によらずに指名するなど、住民・利用者の声に耳を傾けた対応をおこなった自治体が数多く生まれました。しかし財界・大企業の利益代表者にとっては、このような「制限」が気に入らず、「選定プロセスの透明性が低い事例も見受けられる」(「第2次答申」)などと悪罵を投げつけ、市場化テストによって根こそぎ財界・大企業に都合がよいルールを押し付けようとしています。

第2に、事実上の強要が行われるということです。これまでもPFIや民営化(指定管理者制度等)、新地方行革指針・集中改革プランなどにおいて、国が自治体に対して「技術的助言」や補助金等での「裁量権」を使って押し付けてきました。竹中総務相は、20051226日付けで、すべての市町村長等に宛てて「市場化テストにつきましても、改革のあらたなツールとして積極的な活用をご検討頂きたい」という書簡を送り付け、さらに2006年1月に開催した全国都道府県総務部長会議では「行革努力を交付税算定に反映するため、平成17年度から行革インセンティブ算定を導入したが、今回、行革努力の実績を地域振興係経費に反映する算定を新設し、算入概ね倍増する」を明言しています。

自治体は、地方自治の本(住民自治、団体自治)にり、「住民の福祉増進ることを基本として、地における行政を自主的かつ総合的に実施する役割う」(地方自治法第2条)を責務としているのであり、そのやり方を国が指することは、地方自治の本蹂躙するものです。__

 

(5)地域経済を疲弊させ、談合・癒着の温床に

地方自治法改正(2003年)によって民間企業等が「公の施設」を包括的に管理代行できるようになって3年が経過しました。当初は非営利の公共的団体が指定管理者に指定され例が多かったのですが、徐々に全国展開する大企業の参入が拡大しています。しかし市場化テスト法の場合は、全国展開する大企業にきわめて有利な制度です。内閣総理大臣が、民間企業等の意見を聴いて、自治体業務のなかから「特定公共サービス」を特定し、基本方針を策定し、法令上の特例措置を設けるプロセスは(3)で述べたとおりです。ここで国の方針に直接関与できるのは、中小零細企業ではなく、全国展開する大

企業・ベンチャー企業です。しかも「特定公共サービス」は一定のまとまりを想定していますから、市区町村、都道府県の境界をこえて展開する民間企業等がその対象といえます。

したがって市場化テストは、指定管理者制度と比較にならないほど、全国展開する大企業の参入にとって有利な制度です。その結果、地域の経済循環という観点からすれば、利益は本社機能のある大都市へと吸い上げられ、一方現場業務は不安定雇用によってまかなわれることから地域経済の疲弊をさらに拡大するおそれがあります。

しかも規制緩和によって莫大な利権を手に入れることができるので、政官財の癒着の温床となる恐れがきわめて高いものです。

 

(6)今でも個人情報漏洩が問題なのに、企業まかせで一層深刻に

1)自治体業務では、住民票発行等の窓口業務から

(略)

2)個人情報を保護するための自治体の努力が水泡に

(略)

3)民間企業等が全国民の個人情報を検索し、事実上、住民票写し等を交付する立場に

(略)

4)住民のプライバシーを丸ごと民間企業等にゆだねてよいのか_

行政情報や住民情報が目的外に利用され、あるいは故意又は過失によって遺漏するおそれに対しては、民間企業等の協議による契約の解除(34条5項)、民事上の損害賠償責任が発生するだけでなく、守秘義務規定及びみなし公務員規定を設けるので防止されるとしています。市場化テスト法では、民間企業等の秘密保持義務等について、次のように規定しています。

 

25公共サービス実施民間事業者(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員その他の前条の公共サービスに従事する者又はこれらの者であった者は、当該公共サービスの実施に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。

 前条の公共サービスに従事する者は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

34

9 公共サービス実施民間事業者は、特定業務取扱事業所(公共サービス実施民間事業者が特定業務を取り扱う事業所をいう)に勤務する者が特定業務に関して知り得た情報を当該特定業務の取扱以外の目的のために利用することを防止するために、必要な措置を講じなければならない。

 

しかし、そもそも「市場化テスト」という制度は、行政機関の関与を最小限に止め、民間企業等の「創意と工夫」を最大限に保障することを特徴としています。この市場化テストの特徴をみるならば、このことをもってプライバシー等が確保できるとは到底言えまん。「民間開」とえに、要な個人情報が大に漏し、住民が生財産の被害をける危険性をはらみ、住民のプライバシーがかされるおそれがまります。秘性のい住民情報の理を民間企業等に委ねる市場化テスト法は、自治体と自治体職員が行っている水泡す制度だといわるを得まん。

 

(7)公務員・関連労働者の解雇(分限免職・雇い止め)に歯止めなし

1)これまで公務・公共サービスに従事していた労働者の雇用問題

公共サービスに市場化テストが適用され、民間企業等が実施することになれば、これまでその業務に従事していた国家公務員、地方公務員は、@分限免職(国家公務員法第78条4号,地方公務員法第28条4号)されるか、A配置転換等によって従事する業務を変更するか、Bいったん退職して公共サービスを引き継ぐ民間企業等に雇用されるか、の3通りが考えられます。

2)配置転換による雇用継続は保証されるか_

Aの配置転換による雇用の継続については、次のような規定が盛りこまれました。

 

(競争の導入による公共サービスの改革を円滑に推進するための措置)

48  国は、第二十四条の規定により公共サービス実施民間事業者が実施することとなる官民競争入札対象公共サービスの実施に従事していた職員を、定員の範囲内において、他の官職(他の国の行政機関に属する官職を含む。)に任用することの促進その他の競争の導入による公共サービスの改革を円滑に推進するための措置を講ずるよう努めるものとする。

 

しかし府省(国)、独立行政法人、外郭団体等をこえて配置転換することは可能なのか、「行政改革」のもとで国・地方とも職員削減が進むもとで受け入れ可能な事務所・事業所は存在するのか、専門職等の場合、その専門性にふさわしい業務を他の部局等に確保することは可能なのかという問題があります。しかも第48条は努力規定であり雇用の継続を保証したものではありません。

3)民間企業等への移籍による雇用継続は保証されるか

Bの民間企業等への移籍による雇用の継続について、市場化テスト法では、国の行政機関等の長等が定める「実施要領」、自治体の長が定める「実施要領」に「官民競争入札対象公共サービスに係る業務に従事する者となることを希望する者に関する事項」を盛り込むこと(第9条2項9号,第16条9項)が規定され、国家公務員退職手当法に特例が設けられました(31)。「退職手当法の特例」とは、退職時(移籍時)にいったん勧奨退職による退職手当を受け取り、民間企業等に雇用される間を除き、公務に復帰後の期間を通算した退職手当から受け取り済みの退職手当の金額を差し引いた退職手当を最終的に受け取るというものです。しかしこの制度の目的は、公務員の雇用の保障ではありません。

「落札業者が、事業の円滑な実施・創意工夫の観点から、従前公共サービスの実施に従事していた公務員の受け入れを希望する場合も考えられる」(内閣府・市場化テスト推進室作成資料)ことから、民間企業等のために設けた制度です。したがって希望すれば民間企業等に移籍することが保証されているわけでも、民間企業等へ移籍後の労働条件が従前どおりの水準を守られることを保証されているわけでも、民間企業等から不利益なく公務に復帰できることを保証されているわけでもないのです。ましていったん民営化されると、次回以降、民間企業等の従業員の雇用が守られる保証はまったくありません。

4)解雇(分限免職、雇い止め)が続出するおそれ_

村上誠一郎担当大臣(当時)は、市場化テストの実施にともなって分限免職をおこなう意思について、参議院予算委員会(昨年(2005)年10月4日)において、若林正俊議員(自民党)の質問に答え、次のように答弁しています。

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=19805&SAVED_RID=1&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=1373&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=19994 (このURLは若林議員の質問のトップの部分。これから次々と質疑応答を追っていくと以下のような議論が出てきます:引用者注)

 

若林議員:…配置転換だけじゃなくて、場合によっては…分限免職の活用…仕事がなくなったらそこで働いている人も辞めてもらわなきゃいけないというようなことにも踏み込んで…

村上担当大臣:…リー即ツモでそこまで行ければ一番いいと思うんですが、なかなか現実というのは、やはり激変緩和措置をとりつつ丁寧な説明をしていくことが私は肝要だと思います。その点につきましては、若林委員がいわれるような方向に行くように一生懸命努力したい…。

 

分限免職の適用では、指定管理者制度において、北海道・新十津川町が公立保育所の保育士を地方公務員法第28条4号に基づいて分限免職(整理解雇)する方針を示し、自治体病院(公立病院)でも分限免職問題が各地で発生しています。正規職員であっても自治体職員の解雇問題が現実のものとなっています。ましてや嘱託職員や非常勤職員、臨時職員などの非正規労働者は「雇い止め」によっていとも簡単に解雇され、外郭団体等に雇用される正規職員も公務員法上の保護規定は適用されず、雇用の保障が何らなされていません。