『琉球新報』社説 2010年2月19日付

大学院大学 政府の責任で明確な道筋を


沖縄科学技術大学院大学の施設整備費が当初予算額を40億円超過していることが明らかになった。「世界最高水準」の研究機関を目指す大学院大学だが、整備や運営に投じられる予算は、国民の血税である。

超過分について、同大の別施設の整備費を充当していたが、予算の交付決定の変更手続きをしていなかった。

国民の税金を使う整備事業では、適切な事務手続きは欠かせない。事業を進める沖縄科学技術研究基盤整備機構は、予算管理を含め組織運営を見直し、適正な事務作業に取り組んでもらいたい。

厳しい経済環境の中で、目標に近づけるため、いくらでも予算を膨らませられる状況ではない。徹底した予算執行体制を求めたい。

当初の研究分野に関する研究者招請のめどが立たなくなり、研究科目の変更による施設整備が予算超過の原因である。

昨年末、予算編成の優先度判定で沖縄科学技術大学院大学は「減速」と判断された。3段階の中で減速は最低の判定だ。科学技術の振興発展にどう尽くせるのかが懸念された。

厳しい視線が注がれている中で、予算超過や不適切な事務手続きが明らかになった。限られた予算で整備を進めることは、整備費の節減が重要だ。今後、大学の魅力をアピールできる環境整備ができるかが課題だ。

大学院大学は、先端技術研究の拠点づくりが設置目的だ。だが、拠点が沖縄だとする意義は不明確だ。世界の科学技術発展と沖縄の振興、自立の両立を図るための具体策が見えない。

事業の成功には、大学周辺の衣食住環境や教育環境、医療体制など開学までの整備は不可欠である。

県は、子弟が学ぶインターナショナルスクール校舎の整備事業費3億9千万円を県費で負担することを決めた。当初は、寄付金や補助金制度の活用で県支出を抑える意向だったが、もくろみが外れた。資金確保の甘さは否めない。

整備機構側の心もとない管理運営体制もさることながら、国家的プロジェクトに位置付けて整備推進に躍起となってきた政府の姿勢も問われる。

県民につけが回される事態は避けたい。政府の責任で「世界最高水準」を洗い直し、明確な道筋を示してもらいたい。