『朝日新聞』2010年2月14日付

研究費の無駄、けっこうありました 仕分け受け若手調査


裕福な研究室では高額顕微鏡を1〜2年ごとに買い替え、型落ちになった機器は使われずに放置――。こんな研究室での無駄の実態が若手研究者らのまとめで分かった。行政刷新会議の事業仕分けでの厳しい指摘を受けて実態を反省、科学技術研究の強化をめざした提言をまとめた。

まとめたのは約1500人が参加する神経科学者組織の有志。約170人が回答したアンケートでは、9割が研究費の仕組みや使い方に無駄があると指摘した。

問題点として、年度末には「研究費を使い切るように事務から指導がくる」「不要な物品や高額機器を購入することも多々ある」。「輸入機器は中間マージンで現地価格の2〜3倍、場合によっては4倍近い値段」などがあった。

解決策として、若手も加わった研究者組織を作り、開かれた議論によって無駄の排除と効率化を進め、重要な研究予算は削らないしくみが必要と指摘。複数年度にまたがって使える予算の導入や、中古品をオークションなどで再活用するしくみの検討も挙げた。

あまり使わない高額な機器が同じ研究機関に複数ある場合も多く、研究室間での共同利用の促進も必要だとした。

提言の背景には、事業仕分け直後の、ノーベル賞受賞者らによる「予算を減らすな」といった一方通行の主張に対する危機感もある。世話人の宮川剛・藤田保健衛生大教授は「事業仕分けに共感した部分も多い。 偉い先生だけに任せず、若手も科学技術政策にかかわれるシステム作りが必要だと考えた」と話す。(佐藤久恵)