『SankeiBiz』2010年2月11日付

【21世紀に変わる大学】お茶の水女子大学 羽入佐和子学長


■「質的豊かさ」の視点養う

大学の「個性」が叫ばれる今日、設置形態そのものが個性に結びつくのが「女子大」。男女共学化の波が押し寄せる中、あえて「女子教育機関」という個性と伝統を守り、そこを基盤に新たな挑戦をし続けている大学も少なからずある。これから数回にわたり、そうした女子大学への取材を通じて、今日における女子教育の意義や変革の可能性を探ることにする。

日本最古の女子高等教育機関にして、あまたの女性リーダーを輩出している、お茶の水女子大学の羽入佐和子学長に話を聞いた。

−−女子大としての役割をどのように考えているか

「国連機関が公表している女性活躍指数(GEM)で、日本は2009年、57位でした。一方、教育水準や平均寿命、生活水準を基準にした人間開発指数では、日本は10位。すなわち、社会的な豊かさに比べて、女性が活躍する土壌ができていないのが、日本社会の現状なのです。そのアンバランスを解消するための発信や人材養成をしていくのが、国立大学法人である本学の最大の役割といえるでしょう」

−−女性の活躍は社会にどんなインパクトを与えるのか

「現代は、量的な豊かさや便利さよりも“質的”なものの充実を目指す、成長の第2ステージに入っていると思います。質の充実のためには、多元的なものの見方が必要です。女子大では、効率性中心の社会とは“別の視点”がはぐくまれます。従来と違う価値観や生産性を提供することにより、閉塞(へいそく)した社会に新たな可能性を提供できると考えています」

−−「女性リーダー育成プログラム」を展開しているが

「私たちは、女性リーダーに必要な力として『心遣い』『知性』『しなやかさ』の3要素を掲げています。とくに『しなやかさ』すなわち柔軟性はとても大事な要素になります。そうした考え方のもと、『女性リーダー育成プログラム』では、とくに学外のさまざまな女性リーダーに学生がじかに接し、学生のロールモデルになってもらえるよう、多くの機会を設けています」