『陸奥新報』2010年2月12日付

弘大に不整脈治療の専門講座新設 研究や人材育成期待


弘前大学大学院医学研究科に「不整脈先進治療学講座」が開設された。同大学医学部附属病院は、県内初となる方法でカテーテルを用いた手術を行うなど、不整脈治療では既に先進治療の拠点として機能。講座では不整脈に特化した研究、治療法確立のほか、県内外から医師の研修受け入れも検討、人材育成の面でも期待される。

不整脈の患者は増加傾向にあり、同病院には年間400人超が訪れ、うち約100人が重症者だ。

同病院では20年ほど前からカテーテルを心臓に入れ50〜60度の高周波電流で、不整脈の原因となる異常部分の組織を焼く「カテーテルアブレーション術」で治療を行っている。

8年前からはカテーテルを使い、心臓の立体画像を作り、電気の流れがコンピューター上で見える「3次元マッピングシステム」を併せて利用することで、治療が飛躍的に進歩した。

突然死予防で「植え込み型除細動器(ICD)」を使用する場合もあるが、作動時に相当な痛みを伴うなど負担も多く、結果的に手術に至るケースも少なくない。

10日には、カテーテルを用いた手術方法の中でも全国で例が少なく県内で初めてという方法で、ICD利用の重症不整脈患者への手術が行われた。

弘大循環呼吸腎臓内科学講座の奥村謙教授がメーンとなり、佐々木真吾准教授がサポート。奥村教授がカテーテルを使い3次元マッピングシステムを利用し心臓をマッピング。モニターを見ながら、心臓の異常な組織の部分を焼いて治療した。

1月に新設された不整脈先進治療学講座は、佐々木真吾准教授と佐々木憲一助教らが専任。民間企業の寄付講座で3年間が区切りとなる。臨床講座での寄付講座設置は同大で初めて。

講座管理者でもある奥村教授は「どんどん機械の精度が上がる一方で、新しいテクノロジーを用いた治療はまだまだ国内で普及していない。県内で重症の不整脈を治療できる医師も弘大の4人のみ。全国的にも非常に限られている」と不整脈を取り巻く現状を説明。新講座については「人の命にかかわる不整脈治療のため治療法を確立し、人材を育成することが大事」と、その重要性を指摘した。