『日本農業新聞』論説2010年2月6日付

産学連携で地域貢献へ/農学部の使命


地域経済を活性化するには、産学官・農商工の連携による研究成果の普及、地域ブランドの商品開発などが強く求められている。最近は農業生産、食品製造の現場に最も近いところに位置する大学農学系学部の活発な取り組みが目に付き始めた。産学連携を深めて、地域の活性化に貢献してもらいたい。

国立大学が法人化されて今年で7年目。以前に比べ、学術研究に対する社会評価が一層厳しく問われる時代になったことが、産学官連携の活発化の背景にある。

全国の国公私立大学の71学部長で構成する全国農学部系学部長会議は、2002年の「農学憲章」の中で、「農学は地域の農林水産業の振興を図るとともに、自然環境の保全・修復に関する教育研究を通じて地域社会に貢献する」とうたっている。これを名実共に実現するためにも、産学連携でリーダーシップを発揮し、地域に開かれた大学としての役割を果たすことを期待したい。

同会議は理系から文系まで数多い学部長会議の中でも、唯一、国公私立大学を横断的に結集して構成されているのが特徴だ。農水省農林水産技術会議事務局とは毎年1月、意見交換の場を設け、生産現場への普及や民間企業による事業化を進めるための支援策を協議している。

同会議代表幹事の菊池眞夫千葉大学園芸学部長は「産学連携を主に担っているのは、より現場に近い各大学の付属農場やフィールド科学センターなどだ」と強調する。それが顕著に表れているのが、産学官の関係者が一堂に会する食品と農林水産分野の新技術交流展示会「アグリビジネス創生フェア」(同省主催)だ。昨年11月に開いた同フェア(6回目)には、157の企業、大学、試験研究機関、団体が出展し、大学側の積極的な姿勢が目を引いた。

6回目のフェアでも、プレゼンテーション、ポスター展示などで最新の成果が数多く紹介された。その中には、ヤマブドウ・桑・ヒエの製品開発(岩手大学)、良食味水稲新品種「ゆうだい21」(宇都宮大学)、スイートソルガムを用いたバイオ燃料生産システム(茨城大学)、家畜ふん尿媒介感染症制御法の開発(東京大学付属牧場)、九州大学ブランドビーフ「Q beef」など興味深い成果が多い。

同会議は昨年12月、鳩山由紀夫首相と川端達夫文部科学相に食料増産、食品の安全性確保につながる技術開発、人材育成などの研究予算増額を求める要望書を提出した。

自ら行動する大学として、教官も最新の研究成果を売り込み、技術移転によって広く社会に還元することが求められる。今後は農業者、JAグループ、農業生産法人関係者とも連携を深め、高付加価値商品開発と販路拡大に結び付く成果の普及に努めてもらいたい。