『毎日新聞』長野版2010年2月3日付

人ふでがき:信州大の学長に就任して4カ月、山沢清人さん


◇産学一体で人材育成−−山沢清人さん(65)

「旧帝国大学が国を背負う人材を育て、地方の国立大学は地域に根ざして特色を生かしていくことが大切だ」。10月に信州大の学長に就任して4カ月。県の特色は「盛んな生産活動」にあると指摘する。インターンシップ(学生の研修や就業体験)の受け入れに積極的な企業が多いことから、「学生が仕事を通じて現場の人の考えを知り、自分の考えを伝えられるように成長する場として有効だ」。産学一体で人材育成する構想を持つ。

東京都武蔵野市の出身。東北大に進学し、研究テーマは磁石。温度による磁力の変化の応用・活用に没頭した。79年から信大で磁気の専門家として活躍し、携帯電話の小型化などに携わった。高校から始めた野球では大学の野球部で副主将、外野手・1番バッターとしてチームをけん引した一面も。

就任2カ月の11月末、いきなり大仕事があった。新政権の「事業仕分け」で廃止・縮減とされた23事業について、世界に先駆けた研究が進まなくなる▽研究者らの雇用確保が難しくなる−−などと国をいち早く批判。文部科学省にも直接出向いた。そのかいあって、同省からの予算は「削減はほとんどなく、影響は極めて少ない」(三浦義正理事)結果に落ち着いたという。

北アルプスなどの豊かな自然に囲まれた総合大学・信大。その使命を「8学部の英知を結集し、中山間地域の文化、環境、経済を総合して『どうしたら良い生活が送れるのか』を研究し、全国に発信したい」と熱っぽく語る。一方、学生と約2時間にわたり話し合う「学長オフィスアワー」を充実させ、学生を取り巻く身近な問題にも目を向ける。【渡辺諒】