『読売新聞』2010年1月17日付

事業仕分け影響は限定的 将来の負担懸念…関西学研都市


昨年末の行政刷新会議の「事業仕分け」で、研究に関連する少なくとも16事業が「廃止」や「縮減」「見直し」と判定された関西文化学術研究都市(学研都市)。科学技術予算の削減判定に対してはその後、各方面から批判が上がり、研究機関や大学側が巻き返しを図ったこともあり、政府の2010年度予算案では、ほぼ希望額を獲得したケースもあった。学研都市への影響も当面、事業仕分けの判定より、限定的になる見込みだ。

(上野将平)

今年度限りで「廃止」と判定された後、予算案で実質的に「継続」と変わったのは、文部科学省の「都市エリア産学官連携促進事業」。学研都市推進機構(京都府精華町)は同事業の一部を受託し、2008年度から3年計画で、大学や企業と健康管理装置・システムを研究開発していた。2年目に「廃止」を突き付けられたが、文科省が同事業を別の事業と合わせて「イノベーションシステム整備事業」に衣替えすることで、継続になった。

学研都市推進機構の門川雄作・都市エリア事業部長は「科学技術研究はすぐに結果が出ないので、成果面を評価する事業仕分けはそぐわなかった」と指摘する。

地球温暖化対策を研究する財団法人「地球環境産業技術研究機構(RITE)」(同府木津川市)は二つの研究について、経済産業省の補助金で研究費用の全額をまかなっている。事業仕分けで「補助率3分の2」とされたが、予算案では、事業仕分け前に提出した概算要求額に沿う形になった。二酸化炭素を地中や海洋に貯留、隔離する研究などを続ける。

奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)も文科省からの国立大学法人運営費交付金(年間63億円)が「見直し」対象だったが、ほとんど同額を得られる見通しだ。

だが、無条件で「復活」が認められたわけではなさそうだ。

文科省によると、旧事業を衣替えした「イノベーションシステム整備事業」では、健康管理装置・システムの研究開発費(年間約1億8000万円)は、1割未満の減額が予想されるという。

RITEの本庄孝志専務理事は、今後の補助金の動向が気がかりだ。「来年度は予算を確保できそうでほっとしたが、今後は自己負担を求められるケースも想定できる。不足分をどのように補うかが課題」と懸念する。

事業仕分けの厳しい判定が覆らなかったケースもあった。大学の優れた研究に予算を重点配分する「グローバルCOEプログラム」は3分の1程度の「縮減」とされ、予算額が減額された。このプログラムの採択を受けている同大学院大も影響は避けられない。07年度から11年度まで、海外の研究機関と研究開発事業を展開しているが、12年度以降の更新は難しい状況という。同大学院大は「事業の継続方法を検討する必要がある」としている。

昨年12月、政府に緊急の予算要望をした学研都市推進機構の稲田進常務理事は「急激な研究開発事業の廃止、削減にはつながらず、最悪の事態は免れた。事業仕分けの議論を聞いて、日頃から世間に、研究内容を説明する必要性を実感した」と話している。