『中日新聞』静岡版2010年1月9日付

静岡TLOが3月で休止 補助金が減り財務悪化


大学などの研究成果を特許として権利化し、企業の製品開発に役立てるための静岡県内の組織「静岡TLO」が、2010年3月で業務を休止することが分かった。補助金が減り財務内容が悪化しているほか、各大学が知的財産を取り扱う部署を設置し、TLOに依存しなくなったことなどが背景にある。

TLOはTechnology Licensing Organizationの略称で、「技術移転機関」と呼ばれる。

大学側から研究成果を特許化する権利を譲り受け、成果を利活用する権利を企業側に与えて収益を生み出す。特許申請の知識が豊富でない研究者と、優れた研究成果をビジネスに生かしたい企業を結び付ける手法として、1998年に法制化された。

静岡TLOは2002年、静岡大の同窓会が母体となった「浜松科学技術研究振興会」が組織し、静岡大、浜松医科大、県立大などの9つの研究機関が参加した。

09年10月までの特許出願件数は136件、企業が特許を事業化することで得られる実施料収入(ロイヤルティー)は4800万円に達している。

しかしこの間、静岡TLOを取り巻く環境は大きく変化した。

国公立大が04年度に法人化されてから、特許権を大学が持つことが可能になり、優れた研究を“囲い込む”傾向が強まった。

この結果、03年度に38件に達した静岡TLOの特許出願件数は年々減少。09年度には3件にとどまった。

さらに経済産業省の補助金が設立5年を機に大幅に減額され、収支は赤字に転落するようになった。

特許権などの無形財産は2000万円程度あるが、08年度には累積損失が460万円に。外国特許を申請するための諸費用が重くのしかかっている。

こうしたことから静岡TLOを運営する浜松科学技術研究振興会は、TLO事業を09年度末で終了することを決め09年12月、文部科学省と経産省に意向を伝えたという。

振興会の森田信義常務理事は「国公立大が法人化された今、それぞれが特許を取ろうとするのは当然の流れ。TLOの役割は終わりつつある」と話している。