『読売新聞』2010年1月5日付

司法試験「年3000人合格目標」下方修正へ…政府方針


政府は、司法試験の年間合格者を「2010年ごろに3000人に増やす」という計画を下方修正する方向で見直す方針を固めた。無理に実現を目指せば、法曹界の質が低下しかねないためだ。法務、文部科学両省が今春にも有識者会議を設置し、適正な合格者数の検討を始める予定だ。

「3000人計画」は02年3月に閣議決定され、裁判員制度の導入とともに司法制度改革の柱の一つとなっている。法務省の司法試験委員会は毎年、合格者数の目標を設定し、段階的な増員を図っている。06年に1009人だった旧司法試験を除く合格者は08年には2065人と倍増したが、09年は2043人と頭打ちになっている。これ以上のペースで合格者数を増やすと試験の質や合格最低点を下げることになるため、計画自体を見直すことにした。

また、法科大学院も74校と当初の想定より増えており、教育水準の低下を指摘する声が強い。大学院修了生の7〜8割が合格すると見込まれていたが、09年の合格率は27・6%にとどまり、合格率低迷が優秀な人材を確保する妨げになることへの懸念も出ている。

有識者会議では、適正合格者数のほか、〈1〉法科大学院のカリキュラムの見直し〈2〉成績評価と修了認定の厳格化――などを検討し、11年にも結論を出す。政府は法曹人口の全体数や合格者数の目標を作成し、改めて閣議決定する方針だ。

合格目標下げ 司法の質 低下懸念

政府の司法試験合格者数の計画見直しは、「質の低下」を懸念する法曹界の声を反映したものだ。

日本弁護士連合会は現行計画について、「法曹の質が確保できず、弁護士の就職難が深刻になる」と指摘している。合格者増加を見込んだ法科大学院の乱立についても、「優秀な教員を確保できず、教育内容が不十分な大学院が多い」という声が出ている。

ただ、地方には、弁護士が足りない地域も多い。青山学院大法科大学院の宮沢節生教授は「国民が弁護士を容易に利用できるようにするためにも、法曹の人的基盤の整備は欠かせない」と語る。

合格者数と法曹人口計画の見直しでは、こうした点にも目配りをすることが必要だ。