『佐賀新聞』2010年1月1日付

佐賀大病院 南北2棟新設 高齢医療、救急救命充実へ


佐賀大学医学部付属病院(宮ア耕治病院長、佐賀市鍋島)は、高齢者医療や救命救急態勢の充実に向け、新棟2棟の建設を柱とする再整備構想をまとめた。今夏までには現施設の改修と併せて再整備計画を国に申請、2016年度完成を目指す。高度医療設備は段階的に先行導入する方針で、がん治療を支援する次世代の手術用ロボットを本年度中に、全国の国立大病院で初めて購入する。

付属病院は旧佐賀医科大開学から5年後の1981年に開院。施設の老朽化に加え、最新設備や機器の設置スペースの確保が課題になっていた。施設内の南北に1棟ずつ新棟を建設し、施設面積を拡張。病院機能を再配置する一方、超高齢者社会を見据えた高度医療を目指す。

学内の再開発準備室会議が固めた再整備計画によると、南新棟は鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床面積6360平方メートル。救命救急センターや集中治療部、手術部を配置する。

北新病棟は3階建て4320平方メートル。認知症や高次機能障害を含めた専門的リハビリテーションを実施する「先進総合機能回復センター(仮称)」をはじめ、総合診療科や脳神経センターを置く。

既存の中央診療棟や東西病棟の各階は診療科の枠を超え、臓器別に再編成。効率的に対応し、研修医も体系的に学べるようにする。がん組織のデータを蓄積して研究する「オンコロジー(腫瘍学)センター」や、人工関節の開発や機能検証を充実させた関節外科センターなども整備する。

総病床数は604床のままで、再整備中は仮設病棟2棟を別に建設する方針。

一部設備は、操作の習熟も兼ねて先行導入し、本年度は手術用ロボット「ダ・ビンチ」を購入する。内視鏡でとらえた患部を立体映像で再現し、人間の手よりも自在な多関節機能で手術できる装置で、難しい前立腺がんの全摘手術などに活用する。

全身を一度に検査し、ミリ単位に近いがん細胞を発見できる「PET検査」設備も投入する。認知症の原因とされる物質の早期発見にも応用し、進行抑制につなげる。

大学病院の整備は一般的に、国からの交付金は1割にとどまり、9割は病院収入で賄わなければならない。全国45の国立大病院の中には再整備後、大幅な赤字に陥り、法人本部から支援金を受けているケースもあるという。

佛淵学長は「大学病院は地域医療を守り、医療人を育てる砦。経営基盤をさらに強化し、計画を実現させたい」と話す。