『徳島新聞』2010年1月1日付

医師確保へ「寄付講座」 地域医療再生で県・徳大連携


不足している地域の医師確保を目的に、徳島県は徳島大学と連携し、2010〜13年度の4年間、徳島大に産婦人科、外科など四つの「寄付講座」を開設する。県が講座の運営費を全額負担し、徳島大は海部(牟岐町)三好(三好市)中央(徳島市)の県立3病院へ新たに医師を派遣。各病院で診療支援をするとともに、地域医療に関する研究や人材育成を進める。今後、県と徳島大で本格的な協議を進め、早ければ4月の講座開設を目指す。

開設予定の寄付講座は▽総合診療医学分野▽地域産婦人科診療部▽地域外科診療部▽ER・災害医療診療部−の四つ(いずれも仮称)。県立3病院内に、徳島大の医師が診療や研究に当たる拠点を設ける。既に「地域医療研究センター」がある海部病院には、宿泊・研修機能を備えた施設を新たに整備する。

総合診療医学分野は、07年10月から県の委託講座として運営されている「地域医療学分野」を拡充。現在の内科医2人から4、5人態勢を目指し、海部病院で勤務する医師を増やす。地域医療を担う総合診療医の育成のほか、教育・研究活動も充実させる。

地域産婦人科診療部は、産婦人科の常勤医がゼロとなり、07年9月から分娩(ぶんべん)を休止している海部病院へ医師を派遣する。現在は徳島大、阿南共栄両病院の医師と徳島市内の開業医が週2回、診療や妊婦健診を行っているが、平日すべての診療が可能になる見込み。

診療部の開設について、徳島大病院の苛原(いらはら)稔副院長(産婦人科)は「周辺環境や住民のニーズを踏まえ、県南部の産婦人科医療がどうあるべきかを4年間で研究したい」と話している。

このほか、地域外科診療部は、外科医が院長を含めて3人に減っている三好病院へ医師を派遣。ER・災害医療診療部の医師は、徳島大病院と隣接している中央病院の救命救急センターで勤務する。

寄付講座の開設は、医師不足解消などを目的に県が作成した「地域医療再生計画」事業の一つ。講座の運営費(徳島大への寄付金)は国の臨時特例交付金を充て、県の10年度予算案に計上する方針。県医療政策課は「徳島大と連携して講座の開設準備を進め、短期、中長期的な医師確保や人材育成に取り組みたい」としている。

徳島県の人口10万人当たりの医師数(08年12月現在)は277・6人で全国で京都府に次いで多いが、3分の2が徳島市など県東部に集中。南部、西部は全国平均を下回っているほか、産婦人科や外科の医師不足が深刻化している。

【寄付講座】 教育や研究の充実、活性化を目的に、民間企業や自治体、個人が、大学や研究機関に教員の給与や研究経費など講座の運営費を寄付し、希望するテーマを研究してもらう講座。開設期間は通常2〜5年。自治体から国の機関や国立大学法人への寄付は原則として禁止だが、2002年の政令改正で、総務相の同意を得れば可能になった。