『産経新聞』2009年12月11日付

医師確保のため大学院の学費を助成へ 奈良・吉野町


町営病院の医師不足に悩む奈良県吉野町は、病院に勤める医師の大学院の授業料などを全額負担する条例を制定した。大学院に通う医師の奨学金制度は、長野県上田市でも導入されているが、西日本では初という。同町営病院では特に整形外科の存続が危ぶまれており、事実上、現在1人だけ残る男性医師(37)を引き止めるための懸命の策。北岡篤町長は「病院の存続にかかわるので、なんとしてでも医師を確保したい」としている。

町営病院「吉野町国民健康保険吉野病院」(奈良県吉野町丹治)の整形外科には、奈良県立医科大学(橿原市)から常勤医3人が派遣されていたが、今年8月に1人が異動。今月末にも1人が異動する予定となっているが、補充のめどは立っていない。残る1人が病院を去ると、手術や入院患者の診察ができなくなるといい、整形外科の存続が懸念されている。

町は、赤字経営の病院に毎年約2億円を注入。病院によると、整形外科が閉鎖されると、年間約6億円の入院患者による収益のうち25%前後の1億数千万円が減ることが予想され、さらに町財政を逼迫(ひっぱく)するという。

奨学金の対象は、現在吉野病院に勤務する医師か、将来に病院に勤務する意思がある人で、入学金として上限80万円、授業料として月5万円を支給する。奨学金を受けた年数分、吉野病院に勤務すると返済が全額免除される。整形外科に残る医師は制度を利用して病院に残る意向で、病院は「たとえ4年間でも医師が確保できればありがたい」としている。