『京都新聞』2009年12月12日付

滋賀県「医工連携」ピンチ
事業仕分け 関連予算が廃止


滋賀県内の企業や大学が取り組み、軌道に乗り始めた医工連携が、行政刷新会議の事業仕分けで打撃を受けた。6年かけて高機能の内視鏡や微量の標本からがんの悪性度を診断する技術などを開発したが、事業化に向けた文科省の補助事業が「廃止」になったためだ。今後の展開に向けた予算の裏付けがなくなり、関係者は「地域経済の起爆剤にしようと期待していたのに…」と落胆している。

■高機能内視鏡、がん診断技術開発…

県の医工連携事業は2004年度にスタート。県内を中心とした6社や滋賀医科大学など3大学が参画し、文科省から6年間で計9億円を受け、新技術の開発に成功した。今年6月には文科省と経産省の集中支援が得られる「地域中核産学官連携拠点」に応募し、全国10カ所のひとつに選定された。県内68社がネットワークを作り、開発技術を活用した診療の実用化など、10年期間で新事業を模索し始めた矢先だった。

仕分けで廃止されたのは「産学官民連携による地域イノベーションクラスター創成事業」(15億円)。「国としてはやる必要がない」などが理由だった。2〜4億円がおりる可能性があっただけに、医工連携の事務局を担う県産業支援プラザは「採択される自信はあった。不況で医療分野への参入に期待する中小企業が増えているので、是が非でも予算を取りたかった」と話す。県財政も厳しく、今後の展開は模索中だ。

医工連携で企業側の中心となる山科精器(栗東市)の大日(おおくさ)常男社長は「国の拠点になった直後だけに、はしごを外されたようで残念。事業化に向けあと数年で花開く段階。ほかの補助金活用も考え、医療分野を県の大きな産業に育てたい」と話す。