http://www.soc.nii.ac.jp/rekiken/appeals/appeal_091209.html

緊急声明

内閣府行政刷新会議議長 鳩山由紀夫 殿
文部科学大臣 川端達夫 殿
文部科学副大臣 中川正春 殿
文部科学大臣政務官 後藤斎 殿

行政刷新会議事業仕分け(13:若手研究育成)に関する見解と要望

行政刷新会議「事業仕分け」第3作業部会において、若手研究者の育成および研究支援に関わる競争的資金(日本学術振興会特別研究員事業[事業番号3-21-(3)]、科学研究費補助金費若手研究(S)・(A)・(B)、特別研究員奨励費[事業番号3-21-(2)]、テニュアトラック制支援などに関する科学技術振興調整費[事業番号3-21-(1)])の大幅な縮減が求められました。この判断を、歴史学研究会は、不適切であると憂慮します。

人文科学・社会科学の分野において、とりわけ歴史学研究において、学術研究の成果はすぐに表れるものではありません。それだけに若手研究者の育成および研究支援は、日本の学術研究の発展にとってもきわめて重要な意味をもっています。

日本学術振興会特別研究員事業は、若手研究者のたんなる生活補助を目的とするものではありません。同事業は、博士課程在籍者(特別研究員DC)、あるいは博士課程修了後大学に教員としていまだ籍を置かない若手研究者(PD)を対象とする、登竜門的性格をもつ事業として、これまで高い競争率をもって選考され、若手研究者の育成と学術研究の発展に重要な役割を果たしてきました。

科学研究費補助金費若手研究(S)・(A)・(B)は、同じ科学研究費補助金の基盤研究と内容が重複している面があり、基盤研究との統合や調整は将来の課題として認めることができます。しかし、すでに来年度の募集は締め切られており、若手研究者の応募を若手研究枠に誘導しながら、同事業予算を募集の締め切り後に縮減することは、募集の公平性から見て重大な問題があることに注意を喚起したいと考えます。また、応募資格に重複のない特別研究員奨励費の削減は、上述した若手研究者層のキャリア形成に対する支援そのものの打ち切りに直結することをつけ加えておきます。

私たちは、若手研究者の育成および研究支援に関わる競争的資金の縮減が、日本の学術研究の水準を大幅に低下させ、さらには高等教育そして文化的基盤の荒廃を招くことを深く憂慮します。私たちは、中・長期的視野に立った学術研究推進の財政支援が一層強化され、そのなかで若手研究者に対する体系的な育成・支援策が示されることを強く要望します。

歴史学研究会 委員長 藤田 覚(東京大学教授)

付記
歴史学研究会は、1932年に発足した全国的な学術団体です。
現在会員数は約2,200名で、1933年以来、会誌『歴史学研究』
(月刊および増刊号)を発行しています。