http://www.shinshu-u.ac.jp/news2/2009/11/post-59.html

行政刷新会議ワーキンググループによる「事業仕分け」における評決結果についての信州大学の見解と今後の対応について
09年11月30日

11月30日(月)、信州大学松本キャンパス本部管理棟5階第一会議室において、山沢学長、三浦理事(研究・財務・産学官連携・国際交流担当)・副学長、西尾理事(環境施設・企画調整担当)により、行政刷新会議ワーキンググループによる「事業仕分け」における評決結果についての信州大学の見解と今後の対応について記者会見を行いました。
記者発表の概要は下記のとおりです。


平成21年11月30日
信州大学学長 山沢 清人

信州大学は、長野県に所在する国立大学として、地域における学術研究の進展、高等教育を受ける機会の提供、地域発展に寄与する有為な人材の養成、地元企業との産学連携による地域の活性化への貢献等において中核的な役割を果たしてきたものと考えております。加えて、本学の医学部及び附属病院が地域医療に果たしている役割については、改めて申し上げる必要はないものと思います。

さて、今回の行政刷新会議ワーキンググループによる「事業仕分け」においては、本学に関わる内容も多く対象となりました。その中でも、とりわけ、本学としてその評決結果に強い懸念を抱くものとしては、科学技術振興に関わる多くの事業の見直しがあります。

主要なものを挙げても、知的クラスター創成事業については廃止、科学技術振興調整費を受けての先端融合イノベーション創出拠点の形成等については縮減、グローバルCOE事業については、予算要求の3分の1程度を縮減といったものがあります。また、長野県−信州大学が山形県−山形大学と並び、他地域に先駆けて採択を受けた地域イノベーション創出総合支援事業「地域卓越研究者戦略的結集プログラム」についても、本年度が開始年度であるにも関わらず、廃止との評決がなされています。さらに、大学が担うべき基礎研究推進の大きな支えとなる科学研究費補助金についても、若手研究者や大型プロジェクトを支援する事業において予算要求の縮減が求められています。

今回の事業仕分けの評決結果がそのまま予算編成に反映された場合、その影響額は、事業廃止とされた分だけで平成21年度配分額ベースでおよそ7.4億円となり、これに、更に縮減分が上乗せされることになります。本学が基盤的経費である国立大学運営費交付金によって研究費を賄っている部分は、およそ3.4億円、これに対し、本学が研究目的で獲得している外部資金は、共同研究や受託研究を含めてもおよそ40億円ですから、今回の評決結果が及ぼす影響の深刻さは容易にご理解いただけるものと考えます。

加えて、問題とすべきは、廃止等の対象となっている事業の多くは、先端ファイバー工学、ナノカーボン科学技術等、地域の特色も踏まえた特定先端分野における産学共同による研究開発をその内容としていることです。

こうした研究開発は、地域産業の国際競争力の源泉となるとともに、若く才能あふれる人材を地域に呼び寄せ、疲弊を続ける地域に活力と希望を取り戻す鍵となっています。

さらに、各事業には、現在、多くの研究者やそれを支援する職員が従事しており、事業の廃止や大幅な予算縮減がなされた場合、これらの者の雇用を危うくする事態が生じます。その数は廃止とされた事業分だけで数十人規模となることが見込まれ、当然のことながら、その中には,我が国、及び地域を担う優秀な人材が多く含まれています。

研究支援は未来への投資であり、人材育成の役割もあります。また、対象となった多くの事業は、地域の活性化とも密接に関わっています。こうした点について、十分な考慮がなされたとは思えない状況で「事業仕分け」の結論が出され、これが予算編成に反映されようとする状況を見過ごすわけにはまいりません。

当面の対応として、長野県、あるいは、同様な状況にある他大学とも連携を図りつつ、事業を所掌する文部科学大臣等に対し、今後の予算編成において本学及び地域の実情等を踏まえた適切な判断がなされるよう、強く働きかけてまいりたいと考えます。

また、既に削減が進められている国立大学運営費交付金については、今回の「事業仕分け」では、国立大学のあり方を含めて見直しを行うとの評決であり、現時点では、そのことの及ぼす影響が具体的な形では見えないところですが、本経費が国立大学を支える基盤的かつ基幹的な経費であることを踏まえ、今後の予算編成作業を注視し、必要に応じ、国立大学協会等を通じて、本学としての考えを訴えてゆきたいと考えます。

どうか皆様におかれても、今回の「事業仕分け」がもたらす本学及び地域への深刻かつ重大な影響についてご理解いただき、私どもに対するご支援を切にお願い申し上げます。