平成21年11月28日

高等教育政策の基本方針の確立と大学予算の充実を
― 未来を担う人材の育成のために ―

奈良女子大学学長 野口 誠之
奈良先端科学技術大学院大学学長 磯貝  彰
奈良教育大学学長 長友 恒人

高等教育機関としての大学・大学院は、様々な文化や現代科学技術の再生産と創造の場であると同時に、専門的技能と理論の継承発展を担う専門的職業人の養成、並びに教養教育を通じての国民の教養と市民性の育成に責を負っています。我が国の教育が今日の繁栄・発展に導く上で、全体として大きな成功を収めてきたことは大方の認めるところであります。知的基盤社会といわれる21世紀において、グローバルな視点から文化的・経済的に調和のとれた社会を実現しつつ、我が国の国際競争力を確保するうえで、大学における人材育成はますます重要性を増しています。

11月26日、社団法人国立大学協会は文部科学大臣宛の緊急アピール、「大学会との『対話』と大学予算の『充実』を −平成22年度予算編成に関する緊急アピールー」を発表しました。その内容は以下の通りです。

1 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。

2 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いてください。

3 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

我々、奈良県にある国立大学法人はそれぞれの特色を活かし、先端科学技術の研究と後継者養成、男女共同参画社会の推進と女性の研究教育者の育成、高度専門職業人としての質の高い教育者の育成などの分野で、グローバルな視点で人材育成に力を注いでおり、それぞれ成果を上げてきています。また、国立大学法人化後、運営費交付金の継続的な削減にも関わらず、我々は大学における教育の質を向上させる工夫を行うとともに、奈良県の企業、地方自治体、教育関係機関等、地域との連携協同を強化してきました。

現在、各大学は第1期中期目標・計画(平成16〜21年度)において実行してきた教育研究を発展させるべく、第2期中期目標・計画(平成22〜27年度)を策定中です。しかしながら、国立大学の基盤的経費である運営費交付金が削減されていく事態が続くならば、第2期中期計画の実行にも支障が生じかねず、大学の将来計画等は萎縮の一途を辿る恐れがあります。一方、競争的経費は各大学における研究費及 び教育改革費の中で大きな割合を占めており、活性化の源ともなっています。

我が国の高等教育機関への公財政支出(対GDP比)は、OECD加盟国平均の最下位であり、学生一人当たりの高等教育費の伸び率(1999〜2004年)がOECD加盟国で唯一 のマイナスであるという現状があります。未来の我が国を支える人材育成の観点から、長期的な高等教育の基本政策の確立を政府に期待するとともに、三大学が立地する奈良県及び近隣の皆様方に、地方国立大学としての活動と現状をご理解いただき、一層のご支援をお願いする次第であります。