『中国新聞』2009年12月5日付

産学官で医工連携 広島大「霞」に拠点整備


広島大と広島県、中国経済連合会は来秋、広島市南区の広島大霞キャンパスに「ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点(仮称)」を整備する。医、工学の技術を融合し人に優しい電気自動車を開発するほか、細胞治療研究などに取り組む。文部科学省の本年度補正予算で科学技術振興機構の事業に4日採択された。

県内の他の6大学と地場企業も協力する。ニーズが高まる医工連携技術の開発を、地域を挙げて進める。自動車関連では、居眠り運転を防ぎ、長時間運転しても疲れにくい機能を持つ電気自動車などの開発を目指す。人の血液の流れや脳波などを測定する医学技術と、地場部品メーカーなどが持つ自動車関連技術の融合を図るユニークな試みとなる。

このほか細胞を培養や凍結保存し、歯周病やがん治療の研究などに役立てる。幹細胞バンクの整備も目指す。

施設は、霞キャンパスのボイラー棟など計約700平方メートルを改装して整備する。自動車や医療関連の機器を開発するスペースと、先端細胞治療再生医療の研究室を設ける。車の騒音や振動を再現するシミュレーターや、ドライバーの眼球運動計測システムなど最新設備を導入する。総事業費は8億4千万円。

当初は専用棟の建設を検討していたが、政権交代に伴う事業の見直しにより、既存棟を活用することにした。

広島大の岡本哲治理事(産学官社会連携担当)は「人に視点を当てた新しいものづくりの可能性が生まれる。地域産業の活性化や人材育成につなげたい」と意気込む。(桑島美帆)