『日本海新聞』2009年12月2日付

研究費も暗礁に 鳥大バイオ産業構想


鳥取大学米子キャンパス(鳥取県米子市)に計画しているバイオ産業の研究施設をめぐり、国の本年度補正予算の見直しを受けて整備費に充てる補助金が減額となる問題に絡み、今後の研究費に充てる補助金も暗礁に乗り上げている。政府の行政刷新会議が行った来年度予算概算要求の「事業仕分け」で、都市エリア産学官連携促進事業が「廃止」と判定されたため。研究は同事業の活用を前提にしており、関係者は継続を求める方針だ。

都市エリア事業は、地域の強みを生かした新産業創出を目指す文科省の委託事業。研究の進ちょくに応じて▽一般型▽発展型−の2タイプで実施している。

鳥取大の染色体工学技術を生かしたバイオ産業構想は2006−08年度、一般型に採択され、国から毎年約7千万円が交付された。遺伝子組み換えマウスを活用し、大学や地元企業、行政が連携して高機能食品の開発に取り組んできた。

県は来年、施設整備に併せ、発展型で申請を検討していた。採択されれば、10年度から3年間か5年間、毎年2億円程度が交付される。高機能食品の開発に加え、食品の効能を検証したり、食材から健康に有用な成分を抽出するなどの研究を目指していた。

県産業技術センターによると、発展型には健康食品や薬品関連の県内企業20社程度が参加する見通し。担当者は「廃止されると新たな事業展開ができない。民間のチャンスもつぶすような格好で容認できない。何とか復活を」と戸惑いを隠せない。

都市エリア事業が廃止された場合、県は他の補助金が活用できないか検討する方針だが、商工労働部は「研究のペースが落ちる可能性がある。どう財源を確保するか、事業を縮小するか、状況を見ながら考えていきたい」と話している。

研究をめぐっては、米子キャンパスで鉄筋6階建ての施設を来年度から建設する計画だった。しかし、整備費に充てる文科省の「地域産学官共同研究拠点整備事業」について、国は同事業費695億円のうち432億円を削減する方針を示したため、県内関係者は施設整備の見直しも迫られている。