『朝日新聞』2009年11月30日付

国立大の窮状アピール 学長ら「予算削減、教育に影響」


封筒はリサイクル、学長も自分で運転して移動――。「事業仕分け」で大学予算が議論されたことを受け、国立大学協会が26日、予算の充実と大学界との対話を求める緊急アピールを発表した。8大学の総長・学長が「これ以上の削減は教育や研究に影響が出る」と訴えた。

記者会見では、まず東京大の浜田純一総長が「これ以上、予算を削られると、日本の国力と若者の将来にかかわる」と語った。そして、各大学の学長らが次々、窮状を訴えた。

大阪大の鷲田清一総長は「国立大は2004年の法人化の時に事業仕分けをしたようなものだ」と話し、「かつて、運転手は学部数より多かったが、最後の1人が来年3月に退職する。カラーコピーはモデルだけで、ほかは配るのは白黒、封筒は裏返してリサイクル」と経費削減の努力を紹介した。

また、九州工業大の下村輝夫学長が「職員に事故を心配されるが、自分で運転して三つのキャンパスを行き来している。学長自らが運転する時代なんです」と言うと、東京芸術大の宮田亮平学長は「私の場合、移動はオープンカーの自転車です」と応じた。

国立大学法人の経営基盤である運営費交付金は政府の「骨太の方針2006」に基づいて毎年1%ずつ削減されてきた。仕分けで、交付金は「大学教育・研究の重要性は異論なし」とされたが、「法人化の是非も含めてあり方を見直す」との結論に。アピールは「大学予算の縮減は国の知的基盤、発展の礎を崩壊させる」とし、民主党が政策集に載せた「交付金の削減方針を見直す」という姿勢を貫くよう求めた。