『朝日新聞』2009年11月27日付

松川事件 福大と記念会、平行線


●松川事件の資料室、スタッフ配置案/非常勤か正規教員か

東北線で列車が脱線転覆、3人が死亡した松川事件の資料を収集、展示している福島大学の「松川資料室」をめぐり、同大は来年度、非常勤のスタッフを配置する方針であることが分かった。現在、研究員を務める同大名誉教授とは来年3月で契約が切れる。同大とともに資料室を運営する県松川運動記念会は「正規の身分保障がなければ事件の研究は継承できない」と反発している。(北川慧一)

同大は1988年10月、校舎の一室に資料室を設け、裁判資料や元被告らの手紙などを収集してきた。同記念会とは2007年4月に資料の整理や公開に関する協定を結んだ。資料室の管理は、研究員を務める同大名誉教授の伊部正之氏(67)=労働経済学=が長年、携わってきた。

同記念会の関係者らによると、25日に開かれた資料室の運営委員会で、大学側からスタッフの配置案が示された。それによると、資料室を管理する伊部氏の後継者として、「研究補助員」1人を選任する。今後3年間で資料整理の手法を習得したり、松川事件に関する研究をしたりする、としている。

資料室を管轄する同大地域創造支援センターの伊藤宏之センター長は「正規の研究員を採用することは難しい」としており、人件費予算も決まっていないという。研究補助員を指導する伊部氏の人件費については、同記念会が負担するよう求めている。

一方、同記念会は約10万点に上る資料を収集、多数の論文を発表してきた伊部氏の研究を引き継ぎ、発展できる人材を配置するよう要請した。この日の委員会では、契約形態や待遇面を含め、どんなスタッフを配置するかの結論は出なかったという。

同記念会の大学一・理事長(75)は「何が事件を引き起こしたのかその全体像はまだ明らかではない。二度と同様の事件を起こさないようさらなる究明が必要で、新たな研究員には正規の教員としての身分保障が不可欠だ」と話している。