『東京新聞』2009年11月26日付

日本の英知『科学削るな』


行政刷新会議の事業仕分けで科学技術関連事業に厳しい判定が相次いだことを受け、日本を代表する学者や研究者が二十五日、「国の目指す科学技術創造立国とは逆向き」「想像を絶する事態だ」などと反論した。 

ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈、小林誠、利根川進、野依良治の各氏と、数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した森重文氏が、東大でそろって記者会見して共同声明を発表した。

小林氏は「個々の事業のネガティブな面だけとらえて結論を出すのは非常に短絡的。『科学技術で世界をリードする』との現政権の方針と整合性がなく理解できない」と批判した。

森氏は、二十五日の仕分けで「見直し」となった国立大学法人運営費交付金の重要性を強調。「科学におけるブレークスルー(進歩)の芽と人材を育てる上で大切だ」と拡充を要望した。

利根川氏は、研究拠点の米国でオバマ政権が科学技術を重視している現状を紹介。次世代スーパーコンピューター開発にも触れ「世界一を目指さなければ二位にも、三位にも入れない」と訴えた。

野依氏も「科学技術予算を減らすのは論外。むしろ倍増しなければならない。優れた研究者も優れたインフラがなければ力を発揮できない」と険しい表情で強調した。

一方、新型万能細胞(iPS細胞)を開発した京都大の山中伸弥教授も二十五日、iPS特許に関する記者会見で「iPS細胞は十年間支援していただいて幸運にも花開いた成果の一つ。十年前にどの研究が特許につながるのか言い当てるのは不可能。もともと日本の科学研究費は欧米より少ないのに、さらに下げるのは想像を絶する」と訴えた。