『山形新聞』2009年11月17日付

山形大などの研究者招聘事業を採択 科学技術振興機構


山形大と県は16日、有機エレクトロニクスの世界的な研究拠点整備に向けて、国内外トップクラスの研究者を招聘(しょうへい)する事業が科学技術振興機構(JST)から採択されたと発表した。有機太陽電池などの分野で活躍するオーストリアの大学教授らを招く計画で、同時に進めている研究施設の整備や若手研究者の国際公募と合わせ、次世代技術のプロジェクトがいよいよ動きだす。

山形大と県が申請したJSTの「地域卓越研究者戦略的結集プログラム」には全国の大学と都道府県から12件の応募があり、採択は信州大と長野県の「エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用」と合わせ2件のみ。採択ポイントは、研究の事業化に向けた期待度、大学・自治体の支援体制などに加え、「招聘する研究者レベルが郡を抜いていた」点が特に評価された。

今回のプロジェクトでは、ヨハネス・ケプラー大(オーストリア)のニアジ・セルダー・サリチフチ主任教授をはじめ、ほか2人の海外卓越研究者と国内研究者を招く予定。さらに、照明向け有機EL(エレクトロルミネッセンス)の第一人者の城戸淳二教授が在籍卓越研究者として所属する。これらのトップ研究者を“ドリームチーム”と位置付け、有機薄膜太陽電池、自由に曲げられる有機ELパネル、塗布型の有機デバイスなどを開発。研究成果の技術移転により、製品化と地域産業の振興も図っていく。事業期間は5年で、予算は年2億2000万円。このうち半分は地元負担で大学や県が支出する。

山形大が打ち出した有機エレクトロニクスの世界的な研究拠点整備構想は、既に国際公募で助教クラスを採用する文科省の科学技術振興調整費が採択され、今回のJST事業で研究体制が整った形だ。研究の舞台として、米沢市の同大工学部敷地内に整備する研究棟は年内に着工し、来年秋の完成を見込んでいる。

今回の構想は、有機エレクトロニクスの次世代分野の研究開発が中心。有機EL照明の製品化については、県が有機エレクトロニクス研究所(米沢市)を中核に展開しており、研究所の方向性や製品化に向けた具体策など、新年度からの支援方針はまだ決まっていない。