『岩手日報』2009年11月17日付

県内「志願者減」の懸念 教員養成6年制


教育改革を進める鳩山政権は早ければ2012年から、教員養成を従来の4年制から修士課程2年を含む6年制にする。教育実習は現行2〜4週間から1年(30単位)に延長する。本県では少子化に伴い教員採用は狭き門となっており「6年間勉強しても就職が保証されるわけではない」と志願者の減少を心配する声も。大学院の整備は「人も金も必要」と新制度の実現を危ぶむ大学関係者も少なくない。

民主党はマニフェスト(政権公約)で「教員の質と数の充実」を打ち出していた。その具体策の一つが6年制。受け皿として現在全国に24校ある教職大学院を活用する。しかし、同大学院の定員は計1300人足らず。公立小中高で毎年約2万人の教員採用者数に遠く及ばない。

岩手大教員養成機構長の塚野弘明教育学部教授は「教職大学院を設置するためには教職経験を持つ実務家教員の確保など予算の裏付けや時間が必要になる。これまで大学は運営交付金の減額やそれに伴う教員の削減を余儀なくされてきたので受け皿の整備には難題が多い」と指摘する。

県内の10年度の教員採用試験は受験者1777人に対し、合格者が137人で倍率は13倍。少子化に伴う学校の統廃合などで、高倍率が続いている。

岩手大教育学部3年佐藤清香(さやか)さん=一関一高出身=は「経済的に親に迷惑をかけることになるので、学生にとって6年制は厳しい。今は修士を終えても、県内では簡単に教職に就けない。こうした状況を改善しないと志願者は減るのでは」と懸念する。

岩教組の豊巻浩也委員長は「若くて一人前じゃなくても、先生は子どもと接して育っていく。現場が育てるという考えからしても、2年間学んで先生の完成品をつくるという政策には賛同しかねる」と6年制には慎重な姿勢だ。

文科省は、教育実習の期間延長に加え、教員免許更新制度の廃止などの方針を示している。塚野教授は「これまでの教員養成カリキュラムは『理論と実践の融合』などに課題があった。学校現場は学級崩壊やモンスターペアレント、多忙化など年々大変になっており、大学の養成と現場での育成がうまく連携するような制度を望みたい」としている。

教職大学院とは より高い専門性を教員に求める社会の要望に応えるため、文部科学省の中央教育審議会が設置を提言し、2008年4月に開設された。修業年限は2年で、45単位以上を修得すると教職修士の学位が得られる。実習重視の狙いもあり「専任教員の3割以上はおおむね5年以上の実務の経験を有する者(実務家教員)」などの設置基準がある。東北では宮城教育大と山形大が設置している。