『朝日新聞』2009年11月9日付

医療者に情報、早く広く 富山大、活用仕組み作り


第一線で働く医療関係者の臨床や研究向けに、富山大学医薬学図書館が蔵書などの活用策を積極化させている。図書館の24時間開放のほか、看護師向け文献データベースの利用説明会開催や、学会資料のネット活用支援など。大学を軸にした情報のネットワーク化で富山県内の医療の質の向上を目指す。

今秋のある平日の夜、杉谷キャンパスの教室に仕事帰りの看護師ら約50人が集まり、パソコンに向かった。図書館職員の「肺炎という単語を入力し、検索してください」の指示に続き、カタカタとキーボードをたたく音が響く。

図書館が、県内の病院で働く看護師向けに「データベース利用説明会」を開いて3年目。図書館の利用方法の説明に始まり、蔵書検索機(OPAC)の使い方や、オンライン上での文献の入手の仕方、無料の電子ジャーナルの紹介もある。

年1回のペースで開催、これまでに約200人が参加した。その1人は「よい看護を提供するために、レベルの高い情報を知る重要性を強く感じた。インターネットで調べられれば、時間の節約にもなる」と、さっそく図書館の利用証を作っていた。

■年500人が利用証

同大は5年以上前から医療情報の提供に積極的に取り組んできた。時間や経費が限られる中で文献探しに苦労する医師や看護師の手助けになればと図書館の24時間開放をスタートさせ、全国で一、二を争う早さで自動貸し出し機を取り入れた。今では新規、継続あわせて年間500人ほどが利用証を作っている。

蔵書だけではない。前図書館長で医学部副学部長の白木公康教授は「医学、看護の世界では最新のエビデンス(根拠)や診断基準が次々に出てくるため、インターネットは欠かせない」と話す。

■サイト契約支援

白木教授は県内の病院や医療関係者を回り、国内の学会や雑誌で発表された論文のテキストを見ることができるウェブサイト「メディカルオンライン」への契約を呼びかけた。 07〜08年度は、学長裁量経費を使って、病院への導入を支援し、現在、20近くの病院が採用している。

「大学の呼びかけで病院を巻き込んで、ここまで大きな仕組みづくりをした例は全国でも珍しい」と白木教授。「知識だけ持っていても十分ではないが、知識がないと困る。医療、看護の質を上げることは、何より患者のためになる」と重要性を語る。(中林加南子)